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- 2024/06/07 掲載
「渋谷の北朝鮮」マンションは他人事じゃない、知らぬ間に管理組合で「大損」するワケ
連載:どうなる? これからの日本の不動産
「渋谷の北朝鮮」マンション騒動
少し前に、不動産業界でちょっとした裁判が話題となった。業界内で「渋谷の北朝鮮」と呼ばれる東京都渋谷区の某エリアにあるマンションで、約30年にわたって管理組合をほぼ私物化していた管理組合の理事長と理事が、総会で「解任」されたのだ。その後、裁判によってこの「解任」は正式に確定した。すでに複数のメディアでもこのいきさつが紹介されているが、一連の解任劇に特にウルトラC的な手段があったわけではない。「これはおかしい」と感じた区分所有者が有志の会を結成して、地道に仲間を増やしていった結果である。管理組合の総会で、有志の会の中から新しい理事長と理事を選任したのだ。もちろん、総会では過半数の賛成票を獲得した。当然、約30年にわたって専横を極めた旧理事長は解任された。すべて、正式の手続きを経た結果だ。
この正式手続きによる「解任」までは4年かかったという。マンション管理に強い弁護士の助けも借りたそうだ。
しかし実は、この「渋谷の北朝鮮」マンションのケースは奇跡と言っていい事案で、解任はどこのマンションでも実現できるわけではない。
まったく他人事ではない「管理組合」問題
その一例として、筆者も、管理組合に関して読者から相談を受けた経験がある。筆者は不動産ジャーナリストとしての執筆活動に加えて、マンションに関するさまざまな相談を一般の方から承っている。持ちかけられる相談にはマンションの購入や売却ではなく、管理に関する事案も少なくない。その男性・Sさんからの相談も管理組合の運営に関するものだった。
彼が区分所有者として所有・使用しているマンションは約100戸規模で、場所は都心に近い準一等地。資産価値はそれなりに高く評価できる物件だった。
そのマンションを3年ほど前に中古物件として購入した1人の区分所有者が、管理組合の運営に積極的に参加してきて、2年前から理事長を務めている、ということだった。
その理事長が「大規模修繕を行う」と言い出したという。
Sさんから見れば、まだその必要性を感じない。調べてみると、大規模修繕についての標準的な様式などを記している国土交通省のガイドライン「長期修繕計画作成ガイドライン・同コメント」では12年に一度程度の割合で行う、という指針が示されていた。
Sさんはほかにもネットでも色々と調べたところ、新築マンションは築15年くらいで行う場合が多いということも分かった。
Sさんのマンションはまだ築10年。『これはおかしい』と感じたSさんがさらに自らが住むマンションを調べ始めると、次々に不可解なことが判明した。 【次ページ】知らないと「損しかしない」あるカラクリ
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