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- 2023/12/12 掲載
EYの2023年の新規上場・M&A調査で判明、日本で「M&Aが盛り上がらない」5つの理由
世界および日本のIPO動向
世界のIPO市場では、2023年1Qから3Qにかけて、968件のIPOが行われ、調達額は合計1,012億米ドルとなりましたが、これは前年同期比でそれぞれ、5%と32%の減少でした。こうした状況にもかかわらず、新規株式公開後の株価の推移が、1Qおよび2Qと比べて3Qには目立って改善しているなど、マーケットは勢いを取り戻しつつあります。日本のIPOマーケットでは、IPO件数、資金調達額、さらには公募時時価総額ともに回復傾向にあります。第3四半期までで、IPO件数は66件と2022年の52件を上回る推移。調達資金が100億円超の案件は10件となり、昨年の3社から大幅に増えています。
公募時時価総額が1,000億円を超える案件は4社となり、昨年の2社と比べても倍増しています。このような足元の推移から、IPOマーケットの力強さが増してきており、本年度のIPO件数は100件前後となるでしょう。
2023年セクターごとのIPO動向(金融・テクノロジー)
2023年第3四半期までの金融セクターのIPO件数は、21件、調達額は、32億米ドルとなりました。調達額トップ3は、日本の楽天銀行、住信SBIネット銀行、中国のシンダーセキュリティーズ(Cinda Securities)で、アジア太平洋エリアの企業となりました。昨年の2022年度と比較すると、2022年第3四半期件数32件、調達額78億米ドルから、件数にして34%、調達額にして59%減少しています。これは、金融セクターのIPO案件は規模が大きく、マーケットのボラティティの影響を受けやすく、他のセクターに比べ回復が遅いことによるものです。
一方で件数、調達額ともにトップであったテクノロジーセクターのIPO件数は、200件、調達額は、293億米ドルとなり、昨年の件数220件から9%の減少、調達額は268億米ドルから9%増加しています。
その他のセクターも含めたセクター別のIPO件数および調達金額の2023年と2022年の2期比較は以下です。
全世界のセクター別IPO件数:
セクター | 2023年 | 2022年 | 対前期増減率 |
テクノロジー | 200 | 220 | -9% |
製造業 | 195 | 160 | 22% |
素材 | 131 | 172 | -24% |
消費財 | 110 | 66 | 67% |
ヘルスケア・ライフサイエンス | 100 | 118 | -15% |
エネルギー | 54 | 67 | -19% |
生活必需品 | 55 | 67 | -18% |
不動産 | 30 | 44 | -32% |
小売 | 32 | 37 | -14% |
メディア・エンターテイメント | 29 | 18 | 61% |
金融 | 21 | 32 | -34% |
テレコム | 11 | 17 | -35% |
合計 | 968 | 1018 | -5% |
全世界のセクター別IPO調達額(10億米ドル):
セクター | 2023年 | 2022年 | 対前期増減率 |
テクノロジー | 29.3 | 26.8 | 9% |
製造業 | 20.5 | 26.3 | -22% |
エネルギー | 13.4 | 32.7 | -59% |
消費財 | 9.8 | 2.7 | 260% |
素材 | 9.0 | 14.0 | -36% |
ヘルスケア・ライフサイエンス | 8.2 | 13.6 | -39% |
金融 | 3.2 | 7.8 | -59% |
生活必需品 | 2.7 | 3.7 | -27% |
不動産 | 2.0 | 3.7 | -47% |
小売 | 1.6 | 5.6 | -71% |
メディア・エンターテイメント | 0.9 | 1.1 | -13% |
テレコム | 0.5 | 9.8 | -95% |
合計 | 101.2 | 147.9 | -32% |
全世界のセクター別IPO件数及び全世界のセクター別IPO調達額は、1Qから3Qの合計データです。 【次ページ】日本でM&Aによるイグジットの割合が低い理由
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