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- 2023/11/30 掲載
総務省が整理する「Web3時代に向けたメタバース活用」、その論点とは?
メタバースなどの仮想空間をとりまく状況
1980年代から始まった仮想空間の構築の試みは、オンラインゲームやSNS、オンライン会議サービスなどを取り入れ、現代において「メタバース」というフレームワークで再評価されている。2003年に登場した「Second Life」は、仮想空間内での通貨交換や土地取引など、3次元(3D)の仮想空間の可能性を広く示した。2010年代後半以降、3Dのオンラインゲーム「Fortnite」(2017)や「あつまれどうぶつの森」(2020)などが、単なるゲームを超えたコミュニケーションツールとして認識され、メタバースのサービスとして見なされるようにもなった。
2021年には、SNS大手の「Facebook」がメタバース事業への注力を象徴する形で社名を「Meta Platforms」に変更し、メタバースへの注目度がさらに高まった。さらに、HMD(ヘッドマウントディスプレイ)を通じて、リアルタイムで高精細な3D映像の中に「没入」し、仮想空間での「生活」を楽しむことが可能になった。
新しいインターネットの潮流「Web3」の概念もメタバースの議論に影響を与えている。非中央集権的な仕組みを基盤としたWeb3は、ユーザーがコンテンツや空間を自由に作成やカスタマイズできるメタバースと共に議論されることが多い。
メタバースのさまざまな活用事例も出てきている。仮想空間内でのコミュニケーションやイベントの開催、バーチャルオフィスの利用、デジタルツインの展開、教育分野での利用、産業分野での利用、経済活動や娯楽への活用などが挙げられている。
ソニーや任天堂などの日本の大手企業も市場に参入し、日本発のメタバースベンチャーも複数誕生している。
メタバースの市場規模
総務省の『令和5年版情報通信白書』 によると、世界のメタバース市場は、2022年の655.1億ドルから、2030年には9365.7億ドルに拡大すると予測している。また、同白書では、日本のメタバース市場は、2022年度に1,825億円(前年度の245.3%)となる見込みで、2026年度には1兆42億円まで拡大すると予測している。
さらに、ChatGPTに代表される生成AIの普及が進み、メタバースにおいても、生成AIによるコンテンツ制作や、AIによるアバター操作など、さまざまな形でのAIの利用が見込まれている。
これらの急速なメタバースの市場成長の予測や生成AIとの融合などを踏まえると、今後メタバースは経済や社会に大きなインパクトをもたらす可能性はある。
メタバースにおける課題
一方、メタバースのデジタル空間の進展に伴い、技術的、法律的な多くの課題が顕在化している。本報告書では、「メタバース空間内に係る課題」と「メタバース空間外と関連する課題」として、以下の6つを挙げている。課題 | 概要 | |
メタバース空間内に係る課題 | (1)アバターに係る課題 | アバターを通じた行為とその法的権利性についての議論が進行。メタバース上での個人特定、ストーキング、盗聴・盗撮、なりすましなどの不正行為は、安全性に問題があり、アバターの権利侵害の可能性やアバターを利用した攻撃的行為に対する法的対応が必要。 |
(2)プラットフォーム間の相互運用性 | VR関連データの標準化や3Dアバター規格の検討が進められており、アバター動作の互換性やプラットフォーム間のデータ移動ができる環境整備が必要。 | |
(3)メタバース構築時・利活用時に係る課題 | プライバシー情報の保護や物理空間の建造物データの取扱いに関する法的課題が存在。また、提供事業者のユーザ間トラブルへの責任のあり方などが課題。 | |
(4)データの取得・利用に係る課題 | メタバース空間で生成されるユーザの行動履歴などのデータの取り扱いに関する法的枠組みや規制が必要。 | |
メタバース空間外と関連する課題 | (5)ユーザインタフェース(UI)・ユーザ体験(UX)に係る課題 | VR用ウェアラブルデバイスなどの長時間利用のストレスや高価なデバイス、通信環境や身体への影響、新規ユーザの敷居など、ユーザの理解やユースケース創出に関する考慮が重要。 |
(6)メタバースの動向・社会的な影響 | メタバースにはルールがなく、何をしたらいいのかわからないといった意見もあるなど、メタバースのユーザ文化をつくることが必要不可欠。また、デバイス技術の進展や、描画の遅延や空間内の収容人数、通信環境の向上、デジタル人材育成など、環境整備が重要。 |
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