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  • 2023/10/25 掲載

スーパーアプリは普通のアプリと何が違う? ガートナーが解説する開発手法と運用体制

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1つのスマホアプリ内にさまざまなアプリ・機能を統合できる「スーパーアプリ」。中国の「WeChat」や「AliPay」、日本ではヤフー・LINEによる「Paypay」などが広く知られているが、消費者向けだけではなく従業員向けの企業アプリも登場するなど、新たな影響を与えつつある。そもそもスーパーアプリとは何か、通常のアプリとの違い、開発するためには何が必要か。ガートナーのバイス プレジデントであるジェーソン・ウォン氏が解説した。
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スーパーアプリと他のアプリの相違点
(出典:ガートナー)

世界の5割超が毎日使う「スーパーアプリ」、通常アプリと何が違う?

 ガートナーでは、世界中で15の人気スーパーアプリが46億回以上ダウンロードされ、月間アクティブユーザー数が26億8000万人を超えていると推定している。また、2027年までに、世界人口の50%以上が複数のスーパーアプリのデイリーアクティブユーザー(DAU)になるとの予測を示す。

 ガートナーのバイス プレジデントであるジェーソン・ウォン氏は「企業・組織のITリーダーは、顧客、パートナー、従業員の関与を通じてビジネス価値を高めるために、この世界的な傾向を活用する必要がある」と語り、スーパーアプリがデジタル・エクスペリエンスに欠かせない存在になると主張した。

 そもそもスーパーアプリとは何か。その定義について、ウォン氏は「ミニアプリによる拡張性によって強化された一連のコア機能を、顧客やパートナー、従業員などのエンドユーザーに提供するモバイルアプリ」と説明する。

 また、スーパーアプリと、従来のWeb/モバイルアプリや複数のアプリケーションを組み合わせる複合アプリなどとの違いとして以下の5点を挙げた。

  1. 決済やコミュニケーションなどユーザーを引き付けるための主要な機能を備えている
  2. ミニアプリの設計・開発フレームワークがある
  3. ミニアプリ・エコシステムの公開メカニズムがある
  4. スーパーアプリ間でのミニアプリやデータ共有が可能
  5. ミニアプリのユーザーの発見とアクティブ化が可能

「スーパーアプリを活用することで、フィンテックやヘルスケア、電子取引などのビジネスの拡大のチャンスが得られるだけでなく、顧客、パートナー、従業員に対するより良いユーザー・エクスペリエンスも提供でき、競争上の優位性を獲得できます」(ウォン氏)

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ガートナー
ディスティングイッシュト バイス プレジデント, アナリスト
ジェーソン・ウォン氏

スーパーアプリを開発・提供すべきかの判断基準とは

 まず、自組織でスーパーアプリを開発・提供するべきかどうか。ウォン氏は「ユーザーはより統合された、シームレスなモバイルアプリ体験がしたいか?」という問いを投げかけ、「その回答が『NO』である場合、スーパーアプリは必要なく、モバイルアプリやレスポンシブ/プログレッシブ型Webアプリを検討すべき」と説明する。

 また、「モバイルアプリ開発基盤」「ミニアプリ構築のSDK/開発ツール」「事前に構築されたミニアプリのカタログや分散開発チーム」などがない場合も同様に「スーパーアプリは構築しなくていい」という。

 さらに集約/複合アプリの多くが拡張を繰り返すことで複雑化することを挙げ、これらの時間の経過とともに肥大化しすぎる点を指摘。選択したミニアプリをアクティブ化および非アクティブ化できるか、その答えが「YES」であれば、スーパーアプリを構築すべきだという。

「何千、何万、何百万ものミニアプリを携えていなければ、それはスーパーアプリではない。また、その取捨選択の決定権はユーザーに委ねられるべきだ」(ウォン氏)

「WeChat」「Revolut」などコンシューマー向けスーパーアプリ

 代表的なスーパーアプリの例をいくつか紹介しよう。まず、コンシューマー向けスーパーアプリの代表として挙げたのが、中国のテンセントが開発した「WeChat」だ。

 WeChatは中国を中心に世界的なソーシャルチャットプラットフォームとして機能するだけでなく、日常生活における消費活動から公的サービス、マーケティングやコマースに至るまで、モバイル向けサービスを活用する上での基盤となっている。

 2つ目のユースケースとして挙げたのが、英国のフィンテック企業が提供する「Revolut」だ。Revolutは、2500万人以上の消費者、50万人のビジネスユーザーが利用するスーパーアプリだ。

「デジタルバンキングサービスを融合し、そのエコシステム内でアプリを開発できるなど新規ビジネスに組み込むことも可能です。伝統的な金融サービスをデジタルディスラプションする革新性を備えています」(ウォン氏)

 コンシューマー向けスーパーアプリの事例3つ目が、インドのタタグループが展開する「Tata Neu」だ。食料品やファッションなどを取り扱うインターネットショッピングのほかにも、旅行の予約や食事をしたり、健康診断・個人の財務管理にも活用できる。独自のロイヤルティーとして暗号資産を提供するなど、スーパーアプリとしての存在感を示しているという。

 ただ、一方で「本来は、もっと収益が大きくなると見込んでいた」がその期待は裏切られたと指摘した。その理由として、ウォン氏はプライバシーやデータ共有の問題、使い勝手などを挙げ、「スーパーアプリは必ずしも成功を約束するものではない」と説いた。 【次ページ】エンタープライズ向けスーパーアプリも続々登場
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