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  • 2023/06/21 掲載

「求められるのは具体的な解決策」、製造企業オムロンがソリューションを強化するワケ

Seizo Trend創刊記念インタビュー

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日本のものづくりの現場は「人手不足」「原材料コストの高騰」「デジタル対応」など、数多くの課題を抱えている。一方で、プロダクトを提供するだけではこうした課題に対応できないとして、顧客視点でソリューションビジネスを強化しているのが、制御機器などを手がけるオムロンだ。インダストリアルオートメーションビジネスカンパニー 社長の山西 基裕 氏にソリューションビジネス強化の狙い、エネルギー消費と生産性のジレンマ、製造業の人材不足問題の解決策、日本の製造業が生き残るために何が必要かを聞いた。
聞き手:松尾慎司、執筆:翁長潤、写真:伊藤孝一

聞き手:松尾慎司、執筆:翁長潤、写真:伊藤孝一

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オムロン 執行役員常務
インダストリアルオートメーション ビジネスカンパニー社長
山西 基裕 氏
1997年4月、オムロン入社。OMRON Scientific Technologiesを経て、2015年3月にインダストリアルオートメーション ビジネスカンパニーの企画室 業界マーケティング部長に就任。その後、ロボット推進プロジェクト本部長、商品事業本部長などを歴任し、2021年4月に同社 執行役員に就任。2023年3月からインダストリアルオートメーション ビジネスカンパニーの社長、同年4月からオムロン 執行役員常務となる。

製造現場の「課題が特定しづらい」を打ち破る

 前編でお話ししたとおり、私たち、オムロン インダストリアルオートメーション ビジネスカンパニーでは、製造業が抱える課題解決に向けて「i-Automation!」を基にしたソリューションビジネスを強化してきました。

 i-Automation!事業を開始した2016年度の導入社数は900社でした。それが2022年にはグローバルで3700社まで増えてきました。売上構成比率のCAGR(年間成長率)は22%に上ります。

 オートメーションセンターは2016年度8拠点から2022年度にはグローバル36拠点に拡大したり、アプリケーション・エンジニアも400名増やして計1740名体制にまで強化しています。

 さらには顧客起点でソリューションを提供するという意味を込めて、今年度より国内の営業部門の名称を「ソリューション営業本部」に変更しました。

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ソリューションビジネスの進展に合わせて、投資も進めている
(出典:オムロン提供資料)

 2016年に提供開始したi-Automation!は、今までは生産性や品質の向上に主眼を置いていましたが、それぞれの顧客が抱える課題はより複雑化し、「ESG(環境・社会・ガバナンス)」の観点が密接に絡んでくることになります。

 また、顧客自身がこれまでの経験だけでは自社の課題を特定しづらく、私たちにとっても新しい課題になることも多いため、これからどう対峙していくのかというところが、結構大きなハードルになると思います。

 さらに2022年1月にはi-Automation!を進化させましたが、それに先駆けて、新しいサービスとして創出してきたのが現場データ活用サービス「i-BELT」です。

エネルギー抑制と生産性を両立「エネルギー生産性」という考え方

 i-BELTとは、私たちがコンサルティングからともに製造現場に入り、現場のデータを収集し、課題の見える化・分析を経て、我々のソリューションを導入し、制御へのフィードバックを実施することで解決していくサービスです。単にコンサルティングだけではなく、課題の特定した後に解決するところまでを一気通貫で提供する点が特徴です。すでに各業界のリーディングカンパニーのお客さまに数多く導入いただき、展開しています。

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i-BELTサービスの全体像
(出典:オムロン提供資料)

 製造業では経営課題として避けて通れないカーボンニュートラルへの取り組みを例に挙げてみましょう。国立環境研究所の調査では、世界で排出されるエネルギー関連のCO2排出量のうち、製造業が占める割合は23%に上るという結果が出ており、製造現場におけるエネルギー消費は、産業全体から見てもかなりの割合を占めています。

 ただ、製造現場の設備レベルまでエネルギー消費を抑制すると、生産性や品質に影響するトレードオフが起きるというジレンマがあったため、なかなか踏み込めなかったのが事実です。いかに生産性を落とさず、むしろ生産性を上げながら、省エネ、もしくは再エネを実現しなければいけないのが大きな課題です。

 そこで重要となるのが「エネルギー生産性」という指標です。この指標は分母に消費エネルギーを、分子に付加価値を用いて計算できます。私たちは、エネルギー生産性の向上こそが、脱炭素と事業成長を両立できる鍵になると考えています。

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ただ消費エネルギーを減らすのではなく、付加価値も向上させる
(出典:オムロン提供資料)

 i-BELTでは「製造」「品質」「設備」「エネルギー」という4つの価値カテゴリで、顧客の課題に合わせた現場診断サービスを提供しています。具体的には、生産性向上を支援する「製造管理サービス」、省エネを支援する「エネルギー効率管理サービス」などを提供しています。

【次ページ】製造業の「人材枯渇」問題を解決する2つの方法
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