0
会員になると、いいね!でマイページに保存できます。
南都銀行が打ち出した「営業店端末全廃」という店舗改革は、2019年以降一部の営業店で部分的に導入されながら、着実に成果をあげてきている。2023年度中には全店舗でシステムの置き換えが完了する予定とのことだ。前編では「営業店端末全廃」を決定した経緯や新システム導入の流れについて解説した。後編では新システムに転換した周囲の反応、見えてきた課題、展望などについて南都銀行事務サポート部長の田原久義執行役員に話を聞いた。
「営業店端末廃止」、顧客の反応とは?
南都銀行では、営業店の窓口や後方で使用されている専用端末(SBT:Super Banking Terminal)を廃止する代わりにセミセルフATMとタブレット端末を導入しているが、これにより業務の在り方は大きく変わることになる。新しいシステムに移行することで顧客側の混乱はなかったのだろうか。
南都銀行 執行役員 事務サポート部長の田原久義氏は、「正直なところ、システムを変えることで、お客さまからどんな反応が返ってくるのか、不安がないわけではありませんでした。しかし、営業店からは『お客さまにはスムーズにご利用いただけています』という意見がほとんどでした。ATMもセミセルフということで、手続き頂く際は、行員がサポートに入っており、分からないことがあった場合には、フォローする体制も整えています。お客さまには概ね好意的に受け入れていただけた」と語る。
顧客からの反応は問題なかったが、行員の反応はさまざまだったようだ。
「システムの過渡期には否定的な反応も起こってしまいます。SBT導入時にも『難しすぎる』『もっと簡単にならないのか』との声が数多くありました。今回はどちらかというと、逆の現象です。スキルのある行員への理解を得ること、受け入れてもらうことの難しさを知りました。新しいシステムはスキルが不要で、誰でも動かせることがポイントです。そうすると差が出ないため、スキルのある行員としては、慣れ親しんだSBTの方がとの声もあります。行員に対して、切り替えのメリットを繰り返し伝えていくしかないと考えています」(田原氏)
新しいシステムが浸透するまでが大変ということだろう。正しい運用をするために、グループ会社によるサポートチームを結成して対策を実施していると、田原氏は語っている。
「システムの切り替えに拒否反応を持っていた行員もいますので、新しい運用が定着するまでていねいに行員をサポートしています。具体的には、パートタイマー行員の研修指導を行う当行のグループ会社と協力しながらサポートチームを結成し、新しいシステムのフォローをしてもらう体制を作り、正しい運用方法を浸透させるため試行錯誤しています」(田原氏)
1窓口の処理件数は3倍増、「営業端末廃止」の凄すぎる効果
新しいシステムに切り替えた場合に、結果が出る営業店とそうではない営業店の差が明確に出ていたという。「運用の仕方について、勘違いや誤解があった場合は、結果が出ていません」と田原氏は説明している。
下の図の左側はこれまでのSBTを使った接客の例、右側は新たに窓口ATMを導入した後の接客の例である。どちらも6人の顧客が同時に来店したという設定で、対応にかかる時間を比較している。窓口は1人で対応するという設定で、①の顧客は10分、②の顧客も10分、③から⑥までの顧客は2分処理時間がかかる設定になっている。
従来のSBTの場合は、最初の顧客の待ち時間は0分だが、次は10分、その次は20分、以下22分、24分、26分と増えていくことになる。6番目の顧客は本来処理時間が2分しかかからない内容であるにも関わらず、待ち時間は26分となり、1窓口の処理件数は少なくなってしまう。
一方、窓口ATMの場合は、処理時間が5分以上かかる手続きに対しては、後方に回付するルールが定められている。1番目の顧客と2番目の顧客の手続きは後方に回付されるため、待ち時間は0になる。3番目の顧客も待ち時間0、4番目の顧客は2分、5番目の顧客は4分、6番目の顧客6分となっている。6番目の顧客を従来の対応方法と比較すると、20分も早く対応できることになり、1窓口の処理件数に差が出ることになるのだ。
つまりSBTの全廃は行員の業務を効率化するだけでなく、顧客の待ち時間や手続き時間を短縮し、利便性を高める効果も期待できる。ちなみにSBTの場合は、1つの窓口の1日平均トータルで約28人の処理を行っていたのが、窓口ATMになり1つの窓口で1日平均85人、最大で168人の処理を行えるようになった店もある。数値が出ていない営業店は、上の図で挙げたようなルールが機能していないことから起こると田原氏は説明している。
「数値が出ていない営業店は、ルールが徹底されていないか、ルールを勘違いして運用しているケースが多いと言えるでしょう。5分以上の処理は後方に回付するというルールが守られていない、ハイカウンターに誘導すべきお客さまとローカウンターに誘導すべきお客さまを混ぜてしまっているなど、原因はさまざまです。時間をかけてルールを浸透していくしかないと考えています。」(田原氏)
じっくりと時間をかけてルールを徹底していくことが、課題を解消するための最善策ということになるだろう。
【次ページ】改革の課題「システム連携」「業務フロー変更」、どう乗り越えた?
関連タグ