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金融分野では、海外の金融機関を中心に「オルタナティブデータ」の活用が広がっている。日本では、2021年5月24日、金融機関やデータプロバイダなどが中心となり、オルタナティブデータ推進協議会が発足した。また日本銀行も「オルタナティブデータ分析」を扱う特設サイトを開設している。「オルタナティブデータ」は、なぜこれほど注目されるのか。オルタナティブデータ推進協議会の取り組みも交えながら解説する。
そもそもオルタナティブデータとは何か?
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オルタナティブデータ」とは、気象情報や衛星写真、POS売上データ、企業データ、SNSの投稿などのさまざまな業界や分野のデータを指す。一方、企業財務情報や株式注文情報など、従来使ってきたデータが「トラディショナルデータ」となる。
現在、金融の分野では、金融機関や投資家が資産運用する際の投資判断基準として、これらのオルタナティブデータへの期待が高まっている。
オルタナティブデータ市場は大きく成長している。世界の市場規模1700億円を超え、データプロバイダの数は400社を超えている。
急速に成長している背景には、金融機関や投資家によるオルタナティブデータの活用が増加していることがある。また、オルタナティブデータを収集・蓄積・加工し、サービスとして金融機関や投資家に提供するデータプロバイダも増加している。
データプロバイダは、POSデータ、経済ニュース記事、クレジットカードの利用データ SNSの投稿、衛星画像、ウェブサイトのトラフィック 、携帯端末の利用ログなど多岐にわたっており、その情報は
Alternativedata.orgのサイトから参照できる。
クオンツ・ファンドやファンダメンタル分析でも活用
オルタナティブデータが注目されている背景には、近年、機械学習や自然言語処理のテクノロジーが普及し、金融サービス向けのデータモデリングが容易になっていることがある。
また、マーケットの価格推移などを見ながらコンピュータが自動的に最適な注文を出すアルゴリズム取引が進み、新たな情報源としてのオルタナティブデータの活用も始まっている。
オルタナティブデータの活用が期待されている領域の1つに、さまざまな市場分析や金融商品、投資戦略などの定量的な分析をもとに運用するクオンツ・ファンドがある。
また、企業の財務状況などをもとに企業価値を分析するファンダメンタル分析などにもオルタナティブデータは用いられ、投資判断における大きな差を生む要因となっている。
たとえば、POSの売上情報を集計し、毎日、商品の売上を確認する。スーパーのチャネルの重要性が高い銘柄の場合、その情報から該当企業の重点戦略商品の売上が向上しているか把握でき、決算予測の材料として有効と考えられる。
クレジットカード会社のJCBと、オルタナティブデータにもとづいた分析サービスを提供するナウキャストは、JCBが集計するクレジットカード決済額をもとに消費動向を把握する指標「JCB消費NOW」を提供している。統計の元となるのは、JCBグループ会員約1000万人のデータである。サービス消費の動向を細かく把握できるため、景気の現状把握や景気予測などにも活用できる。
政府は、国内総生産(GDP)などの官公庁のさまざまな統計データを公開しているが、四半期や年ごとのデータが多く、速報性に劣る。これに対し、即時性の高い「JCB消費NOW」は、短期的な動向把握するのに有効だ。
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