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  • 2022/03/23 掲載

東京きらぼしFG代表に聞く「プラットフォーマー」戦略、地銀が生き残るために必要なことは?

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傘下にきらぼし銀行と2022年1月に開業したUI銀行を擁する東京きらぼしフィナンシャルグループ。地方銀行を取り巻く経営環境が厳しさを増す中で、東京というマーケットで、どのような価値を顧客に提供しようとしているか、同FG 代表取締役 社長の渡邊 壽信氏に経営戦略や次世代店舗戦略などについて聞いた。
聞き手、構成:編集部 山田竜司、執筆:阿部 欽一

聞き手、構成:編集部 山田竜司、執筆:阿部 欽一

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東京きらぼしフィナンシャルグループ
代表取締役 社長
渡邊 壽信氏

デジタル化と経営効率化に取り組む

 東京きらぼしフィナンシャルグループは2018年、東京都民銀行・八千代銀行・新銀行東京の3行を合併したきらぼし銀行の誕生を機に「東京TYフィナンシャルグループ」より商号変更し、新たな金融グループ会社としてスタートしました。きらぼし銀行は東京に本店を構える地方銀行で、東京というマーケットの特性上、他の地方銀行とは異なる経営環境にあります。

 すなわち、メガバンクや地銀などの地域金融機関が混在する大きなマーケットで、いかにして自行の特徴を発揮していくかが求められます。長年続く低金利の中で預金と貸し出しの利ざやが縮小しており、本業の収益が厳しくなる中でビジネスモデルの変革と経営の効率化を徹底的に実行してきたというのが、2018年からの取り組みです。

 経営の効率化というのは具体的に、店舗の統合やシステムの統合などです。これにより、年間100億円を超える経費の削減にメドがつきました。また、グループ傘下にコンサルティングや証券、エクイティ投資が可能なキャピタルといった銀行以外のサービスを提供する会社を新設し、さらに今回、デジタル戦略の一環で「デジタルバンク」を設立するなどグループ会社の体制を整備しました。

 経費の削減に加えて銀行以外のグループ会社を立ち上げることで、まずは金融サービスを整え、デジタルバンクの設立により非金融サービスにもチャレンジする道筋を作ったということです。

 本業の金融サービスは、きらぼし銀行における対面サービスに非対面のデジタルバンクを加え、両者をうまく棲み分けながらお客さまの裾野を広げていくことに挑戦している段階です。非金融サービスの提供においては行政や他業態の事業会社と連携しながら、チャレンジしているというのが現在の状況です。

「東京発プラットフォーム」としてさまざまな顧客をつなげる

 2021年4月に発表した中期経営計画では、「お客さまの新しい価値を創造する東京発プラットフォーマーとなる」ことを掲げています。従来の銀行はお客さまに金融サービスを提供してきました。たとえば、資金需要のあるお客さまには融資のご提案をしたり、資産運用を考えているお客さまには、投資信託などの資産運用のご提案をしてきました。ここではお客さまと銀行は1対1の関係でした。

 一方で、私達は非常に多くの法人のお客さまとお取引をいただいており、「法人のお客さまのお客さま」に対して銀行が価値を提供することで、より大きなネットワークとしてつなげられるのではないか。さまざまなお客さまのニーズをつなげられるような、銀行ならではの信用力を生かした価値提供のプラットフォームを構築したいと考えています。

 そして、価値提供のプラットフォームの起点になるのがデジタルバンクであり、傘下のきらぼしテックが提供する決済サービスの「ララPay」というデジタルマネーであり、こうしたデジタルを中心とした顧客基盤としてのプラットフォームを広げていきたいというのが中期経営計画のビジョンです。

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新中期経営計画のビジネス戦略
(出典:東京きらぼしフィナンシャルグループ)

 非金融の領域では「東京発エコシステムの具体例」として、羽田空港との連携や、東京都や川崎市などの行政や中小企業との連携が示されています。ちょうどコロナ禍で空港の利用者が減っている状況もあり、現在は空港利用者にどういうサービスを提供すべきか、デジタルを使ったサービス提供の具体的な検討を進めている段階です。

 また、羽田空港の第三ターミナルに隣接する天空橋駅に、インキュベーション拠点として「KicSpace HANEDA(キックスペース ハネダ)」を2021年11月に開設しました。さまざまなベンチャー企業に対して、行政や大企業との連携や国内外マッチングなど、リアルとオンラインを融合した機能を提供していきます。

 中期経営計画にも示されているコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)については、投資実行案件も出てきておりますので、実績はこれから着実に積み上がってくると確信しています。

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東京発プラットフォームの事例
(出典:東京きらぼしフィナンシャルグループ)

 中期経営計画では、プラットフォーム機能例の一つとして「デジタルバンクビジネス」を挙げています。2022年1月にスタートしたUI銀行については、これから「預金」「為替」などの銀行機能やサービスをAPIを介して提供するBaaS(Banking as a Service)により展開することで、プラットフォームとしての役割を果たしていく予定です。

 開業時は預金と為替だけでスタートしていますが、今後はローンや法人取引など融資領域にも徐々にサービスを広げていきます。また、UI銀行をきらぼし銀行やデジタルマネー「ララPay」を搭載するスマホ決済アプリ「ララQ」や行政などと連携させることにより、グループ力と外部連携を生かしたプラットフォームを構築します。

 これにより、銀行の認可、免許を持っていない事業者さまも、われわれのBaaSを利用していただくことでこのプラットフォームを利用できるようになります。プラットフォーマーとして「BaaSをいかに使いやすく構築し、連携先を広げていくか」に注力していきます。

【次ページ】店舗戦略とデジタルバンクはセットで考えるべき
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