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- 2021/09/13 掲載
デジタル庁発足への懸念、デジタル化の第一ステップは「失敗の反省」だ
連載:野口悠紀雄のデジタルイノベーションの本質
コロナではっきり分かった日本のデジタル化の遅れ
日本のデジタル化の遅れは、これまでも日常生活の中で何度も経験させられてきたことだ。その最たるものが行政手続きだ。窓口に出向かなければならず、書類には印鑑をいくつも押さなければならない。三文判を買ってくれば誰でも押せるのに、なぜこんなものが必要かと、誰もが疑問に思っていた。しかし、ずっと続いてきた儀式なので、誰も異議を唱えようとしなかった。
デジタル化の遅れは、行政手続きだけではない。民間企業も大同小異の状況だ。
ただ、民間企業がいくらデジタル化を進めても、最終的には公官庁の手続きがデジタル化されていないために、完結できずに終わる場合が多い。書類の送付にPDFは使えず、ファックスを使わなければならない。メールはダメで、電話のみ、等々だ。
ただ、これまでは、不便だけれども何とかやりくりしてきた。新しい仕組みに変えるのは面倒だというので、前世紀の遺物を使い続けてきた企業も多いと思う。
ところが、新型コロナウイルスの感染拡大で、こうした条件が一変した。混雑する窓口に、感染を恐れつつ、出頭しなければならない。在宅勤務になっても、印鑑が会社にあるので、出社しなければならないということも生じた。
こうして、単に不便というだけのことだけではなくなった。コロナのような事態では、デジタル化が極めて重要な課題であることがはっきり分かった。
デジタル化は、平時の経済活動についても、重要な意味を持つ。日本の労働生産性(就業者1人あたりのGDP)は、極めて低い。OECD諸国の中で最下位のグループだ。最近では、韓国にも抜かれている。
なぜこのように低いのか?その大きな原因が、デジタル化の遅れにあることは間違いない。
20年前に同じことを試みて失敗
政府は、こうした状況に対処するため、デジタル庁を発足させた。そして、行政のオンライン化や脱印鑑などを進めるのだという。ところで、政府がこのようなことをいうのは、初めてのことではない。20年前の2001年に、「eジャパン戦略」というものが打ち上げられ、そこでほぼ同じことが言われた。
2003年までに国の全行政手続きのオンライン化を目指し、行政のワンストップサービスを実現するとしたのである。
では、その成果はどうだったか?
2005年に私は米国に1年間滞在したが、滞在中に運転免許証の更新時期が来てしまった。「eジャパン戦略」のいうとおりなら、その時すでにオンライン申請ができるはずだ。ところが、実際には、更新だけのために、日本に戻らなければならなかった。
他方で、カリフォルニアの免許証は、日本に帰国してからオンラインで簡単に更新することができた。この他、米国での税務申告がオンラインで実に簡単にできたことなど、日米の差を思い知らされた。
【次ページ】技術の問題というより、組織のあり方の問題
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