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  • 2021/03/29

「みずほのシステム障害」をどう見るか、解明できていない事故の本質とは

FINOLAB コラム

2月末から4回にわたってシステム障害が起こったことにより、みずほ銀行は初回の障害後(3月1日)と4回目の障害後(3月12日)に藤原 弘治頭取による記者会見を開催した。2回の記者会見は、金融機関のみならず、金融システムに関与する人間にとって非常に参考になるものであったとともに、考えさせられる点もあった。

FINOLAB Head of FINOLAB 柴田 誠

FINOLAB Head of FINOLAB 柴田 誠

FINOLAB設立とともに所長に就任。東大経済学部卒、東京銀行入行、池袋支店、オックスフォード大学留学(開発経済学修士取得)、経理部、名古屋支店、企画部を経て1998年より一貫して金融IT関連調査に従事。2018年三菱UFJ銀行からMUFGのイノベーション推進を担うJDDに移り、オックスフォード大学の客員研究員として渡英。日本のフィンテックコミュニティ育成に黎明期より関与、FINOVATORS創設にも参加。

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みずほ銀行は複数の「障害」により2回にわたり藤原 弘治頭取が参加する記者会見を開催することとなった
(写真:毎日新聞社/アフロ)

判明した障害の内容と影響

 2回開催された記者会見においてはいずれも、藤原頭取、片野常務執行役員(ITシステムグループ副部長)、清水執行役員(事務企画部長)の3名がみずほ銀行側の説明者として出席、初回は1時間半、2回目は2時間を超えるものとなった。それぞれの説明から判明した、システム障害の内容とその影響は以下のようにまとめることができる。

日付 障害の内容 障害の影響
2021-02-28 定期預金70万件(デジタル口座移行のための不稼働口座ステータス変更45万件+通常月末処理25万件)のデータ更新処理に失敗 ATM全体の約8割(4318台)で障害が発生、5244件のカード・通帳(他行カードを含む)がATMに取り込まれたままとなった。店舗が営業していない日曜日だったこともあり、多くの顧客がATMコーナーで長時間待たされた
2021-03-03 通信ネットワークのハード故障が発生 ATM(29台)が3分ほど使えなくなり、一部顧客のカード・通帳の取り込みが発生
2021-03-07 カードローンのプログラム更新で不具合が発生 顧客9名のネットバンキング取引が不成立となり、定期預金の預け入れが4時間ほどできなくなった
2021-03-11 データセンターでのハード(ディスク)障害に伴う再起動に際し、外為決済システムの切替えに失敗 主に法人の約300件の外貨建国内送金(SWIFT経由)に約5時間の遅延が発生、当日入金が出来ない結果となった
(記者会見より筆者作成)


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立て続けに起こったみずほの障害
(出典:みずほFG報道発表)

 大手行のATMが半日停止したくらいではニュースにもならない海外と比較して、銀行を「公器」ととらえてサービス提供に対する期待水準がきわめて高い日本においても、経営トップが立て続けに会見に臨むことはきわめて異例(持株会社トップの坂井社長も3月18日に会見)と言わざるを得ない。

 みずほ銀行の場合には、合併直後の2002年、東日本大震災後の2011年にそれぞれ大規模なシステム障害が発生、2011年6月に開始されたシステム統合プロジェクトも2度の延期を経てやっと2019年7月に完了したこともあって メディアの注目度が高かったという背景がある。

記者会見についての評価

 システムそのものに関する課題については後述するが、システム障害に伴う当事者である企業の記者会見としては周到に準備され、記者の質問すべてに回答する時間を確保したことは高く評価できる。

 システムトラブルや不正事件で経営トップが会見した事例は多いが、かえってイメージダウンとなったケースも多い。みずほ銀行の場合には、以下の点において、今後システムトラブルによって会見に臨む経営者には非常に参考になるものと考える。

●発生後速やかに会見
 障害に伴う影響の大きかった初回(日曜日の障害発生の翌日)と4回目(当日)に際しては、速やかに記者会見を開催。 対応の遅れがイメージダウンにつながった過去の事例の教訓が生かされていたものと考えられる。

●経営トップが自分の言葉で障害内容について説明
 システム障害のような事案については、得てして経営トップの理解が追いついていないために、用意された原稿を読むだけだったり、システム部門の責任者に説明を任せるだけだったりするケースが多い。一方、本件では頭取が大部分の説明を行って、システムや事務対応の詳細について必要に応じて補足してもらう形で、経営トップが事態を把握しているという印象を与えることができた。

●会見時点で判明している事実を可能な限り開示
 トラブルが発生した際の当事者による説明は、都合の悪い問題を隠そうとすることも多いが、後に事実を隠そうとしたことが判明するとかえってイメージダウンにつながる。本記者会見では、確認されている事実と不明の点を区別して説明がなされた。

●責任転嫁せずにトラブル発生と迷惑を被った顧客に対して陳謝
 システム障害に際して、開発や運用を担うベンダーやパートナー企業の責任をなすりつけるような説明をしてしまい、誰に謝っているのか判然としないような記者会見もみられるが、本件で「みずほ銀行が責任を持って対応する」との一貫とした説明で、顧客に陳謝した。

●顧客対応優先を表明、原因究明と再発防止についてコミット
 記者会見においては、責任問題や当局対応についての質問も相次いだが、発生した障害の影響を受けた顧客への対応を最優先した上で、原因究明を進めて再発防止策を採っていくという基本方針を示した点において、世間体を気にするのではなく、顧客本位の姿勢を示すことができた。

 このように、記者会見の対応は見事なものであったが、みずほ銀行が構築した新しい勘定系システム(MINORI)に対する不安を完全に払拭するには至らなかった点も事実である。

解明できていない課題(ATM障害)

 4回の障害の中で特に影響が大きかったのが、最初(2月28日発生)のATM障害である。

 その経緯については初回の記者会見で説明され、2度目でも追加で説明があったが、多くの金融機関システム担当者が抱いた疑問である「それほど障害の影響が拡大したのはなぜか?」という点については、参加した記者があまり掘り下げなかったこともあり、充分な説明が得られたとは考えにくい。

 障害が発生した際には、(1)45万件のステータス変更処理と25万件の月末処理が重なったためにメモリー不足が発生、(2)定期預金取引のエラー発生、(3)共通基盤においてエラーを検知、3経路設定されているATM処理のうち2経路が遮断、(4)全体の8割程度のATMが機能停止、(5)処理途中の通帳・カードのATM内への取り込みが発生といったプロセスをたどっている。

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障害発生の状況
(出典:筆者作成)

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