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  • 2021/01/15 掲載

なぜ「BaaS」は普及するのか? “銀行機能サービス化”の課題と展望

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銀行APIが整備され、活用に向けた未来が見えてきたBaaS(Banking as a Service)領域。従来銀行が担ってきた機能がサービス化されることで、金融市場は今後どうなっていくのか。GMOあおぞらネット銀行の執行役員 小野沢 宏晋 氏、ビザ・ワールドワイド・ジャパンのデジタル・パートナーシップ 部長 福谷 大輔 氏、KPMGコンサルティング KPMGジャパンフィンテックイノベーションパートナー 東海林 正賢 氏、インフキュリオン コンサルティング執行役員 森田 航平 氏、カンム BizDev 宮尾 拓 氏の議論を通じて、BaaS領域の拡大による金融サービスの今後の展望を占う。
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(左上から時計回りに)水野 綾香 氏、小野沢 宏晋 氏、東海林 正賢 氏、森田 航平 氏、宮尾 拓 氏、福谷 大輔 氏
(出典:一般社団法人Fintech協会)
※本記事は、2020年11月19日に行われた、一般社団法人Fintech協会主催のFintech Japan 2020「BaaS in New Normal」での講演内容をもとに再構成したものです。


外部環境の変化がBaaSの進展を後押し

 2020年は「銀行法等の一部を改正する法律(改正銀行法)」によって、銀行が外部事業者との安全なデータ連携のためにAPIを公開する「オープンAPI」の実装が進められ、「為替」「預金」「融資」などの銀行業務に関する機能をサービス化して外部企業でも利用可能にする「Banking as a Service(BaaS)」も注目を浴びた。

 KPMGコンサルティングの東海林 正賢 氏はBaaSについて、「本人確認や口座情報、銀行振込などの機能を提供する銀行APIを使いながら、業務機能を含めた銀行の持つ役割全体をサービスとして提供するプラットフォームと考えている」と説明。「さまざまなカスタマージャーニー全体に包含するものだ」とした。

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BaaSと銀行APIの関係性
(出典:講演セミナーの投影スライドより)

 東海林氏はまた「BaaSでは、直接顧客接点を持たない形でも金融サービスを提供できる。BaaSの展開に際しては、今銀行が持っている顧客接点を他の企業に明け渡していいのか? それを明け渡すことで新たな顧客接点を持つ可能性が広がるのかという点で検討が必要なのでは」と語った。

 2020年3月に認証や決済処理を管理するAPI基盤などBaaS機能を提供するインフキュリオンの森田 航平 氏はこれについて「デジタルトランスフォーメーション推進の過程で、銀行が直接ユーザーに届けることもあれば、他のサービス提供企業がBaaS基盤を通じて金融サービスを提供することもあるのでは」との見解した。

 このように森田氏が語るのは、新型コロナウィルス感染症の影響でBaaSの役割が大きく変わってきたという認識のためだ。

「これまでは若者向けとしてデジタルチャネルの提供が進められてきたが、コロナ禍では日本を含めた世界的な動きとして、50歳以上の方が金融のデジタルチャネルを使う機会が増えてきている」(森田氏)

 その上で、BaaSの可能性については「ニューノーマル時代では、すべての人たちに金融サービスをデジタルで届ける必要が出てくる。そうした多様なユーザーに幅広い金融サービスを届けるための基盤という役割を担うのでは」と言及した。

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インフキュリオンが提供するBaaSソリューションのイメージ図

銀行機能がサービスの中に「溶けていく」

 銀行APIの取り組みを各金融機関が進めている中、「APIで選ばれる銀行」を目指して他行との差別化を図っているのがGMOあおぞらネット銀行だ。

 同社の執行役員 小野沢 宏晋氏はBaaSの位置付けについて「銀行機能がサービスの中に溶けていく」という表現を用いて「さまざまな企業が提供するサービスの中に金融の機能が少しずつ分散して、より良いUI/UX(顧客体験)を提供する基盤である」と説明する。

 一方、その普及に当たってはいくつかの課題があると指摘する。「ATMでお金を引き出したり、インターネットバンキングで振込するなど銀行機能の使い方が限定されているという固まった認識が持たれている」(小野沢氏)。そのため、多くの金融サービスが自然に溶け込むというところがまだ考えづらいという。

 また、「BaaSを提供する際、提供側視点のものになりがちである。銀行側も課題解決力を高めることで、お客さまの希望を実現するためのUXを提供できる、お客さま視点のAPIを出していくべき」(小野沢氏)との認識を示す。

 一方、関連する法制度は良い方向に向かっていると説明。「印鑑レスや電子帳簿保存法、新仲介制度など外部環境の整備については、年々スピードが早くなっている。その動きに合わせて準備していく必要がある」とした。同行では印鑑レスやペーパーレス、eKYCなどにも注力しており、「DX(デジタルトランスフォーメーション)を推進するさまざまな企業との連携を通じて現状の課題を解決したい」と述べた。

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GMOあおぞらネット銀行が目指す方向性
(出典:講演セミナーの投影スライドより)

BaaSで重要な位置を占める「決済機能」のサービス化

 2019年3月に専任部署を立ち上げ、フィンテック企業の支援プログラム「Fintechファストトラックプログラム」を展開しているビザ・ワールドワイド・ジャパン。

 同社の福谷氏は「金融サービスには口座機能と決済機能が必須となる。これらをBaaSとして提供することで、小野沢氏が指摘していたUI/UXの中に溶け込ませることができる。それによってBaaSの良い部分が生かせる」と説明する。

 また、「お金の出入りや財務状況、ファイナンスなどが一元管理でき、ユーザーにとってコントロールしやすくなる利点が生まれる。特に決済機能は非常に重要になる」とし、自社でも協業パートナーと共にAPIの多様化やオープン化への取り組みを進めていると述べた。

 プリペイド事業の開発・運営などを手掛けるカンムの宮尾 拓 氏は「現状、貸金や保険などのサービスを提供するハードルは高い」と指摘する。「銀行代理業を活用する銀行サービスや保険APIを利用した保険サービスが登場している。BaaSの『B』の部分には、銀行以外の保険などの機能も含まれていくと可能性がある」との見解を示した。

 小野沢氏もその発言に同調する。「Bの部分は今後変化すると思う。お金の流れに関わるサービスは既に数多く展開されている。BaaSは今後、金融サービスプラットフォームの、そのもう一段下にあるプラットフォームになると思う」と語った。

【次ページ】BaaSで重要な位置を占める「決済機能」のサービス化
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