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  • 2020/09/30 掲載

令和2年度の金融行政方針が示す「コロナ後の新しい社会像」、重点課題は何か?

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金融庁は2020年8月31日、2020年(令和2年)度の新たな金融行政方針「コロナと戦い、コロナ後の新しい社会を築く」を公表した。同年度の金融行政における重点課題に対して、金融行政方針が掲げられている。今回の金融行政方針は、特にコロナとの戦いとコロナ後の新しい経済社会の在り方が大きく取り上げられている。2020年度の金融行政方針における重点課題、金融庁による金融機関への具体的な支援策などを解説する。
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ニューノーマルの金融に求められるものは?
(Photo/Getty Images)

金融庁が掲げる、金融行政における3つの重点課題

 金融庁では、2020年度の金融行政において以下の3つを重点課題として取り組む方針だ。

  1. コロナと戦い、コロナ後の新しい社会を築く
  2. 高い機能を有し魅力のある金融資本市場を築く
  3. 金融庁の改革を進める


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金融庁が掲げた3つの重点課題
(出典:金融庁「令和2事務年度 金融行政方針」2020年8月31日)

 この記事では、その中から「コロナと戦い、コロナ後の新しい社会を築く」という部分を中心に取り上げる。

「コロナと戦い、経済の力強い回復を支える」具体策とは?

 金融庁では「コロナと戦い、コロナ後の新しい社会を築く」ために、優先課題を洗い出し、その解決に向けた取り組みを進めていく。4つの観点で見ていく。

(1)金融仲介機能の発揮

 金融庁の最優先課題は「新型コロナウイルス感染症への対応」だ。事業者は厳しい資金繰り状況に直面しており、金融仲介機能を発揮し、事業者への迅速かつ適切な資金繰りなどの支援が求められている。

 中でも、資金繰り支援にあたっては、事業者の状況に応じて、既往債務の条件変更や新規融資、金融機関のプロパー融資や保証協会保証を活用した融資などを適切に組み合わせ、事業者ニーズに対応した支援が必要となっている。

 こうした状況を踏まえて、金融庁では、特別ヒアリングや利用者相談室に寄せられた相談や融資全体の動向などを考慮して「全体として適切かつ適正に支援が行われているか」、チェック機能を強めていく。

 また、制度融資を含む融資手続きの円滑化などを促す観点から、金融機関や自治体、信用保証協会との間の手続きの効率化・電子化事例などの把握・共有を進める。さらに、金融機関の資金繰り支援の好事例を公表して、他の金融機関も参考にするよう促すという金融機関の取り組みを支援していく。

(2)経営改善・事業再生支援

 コロナ禍の状況も見極めながら、資金繰り支援や資本性資金なども活用した事業者の経営改善・事業再生支援に軸足を移し、経済回復と生産性向上に取り組むことも今後必要となる。

 そのための金融機関の支援策としては、REVIC(地域経済活性化支援機構)などによるファンドや資本性ローンなどの実効的な支援策や、金融機関、支援協議会、保証協会、税理士などの実効性を確保していく。また、環境整備・側面支援として、融資手続きの電子化促進や、金融機関の現場職員の間で、地域・組織を超えた「事業者支援のノウハウの共有などの取り組み」を支援する。

(3)制度面の対応
(顧客・地域の再生に必要な業務を可能にするための銀行の業務範囲などの見直し)

 コロナ禍などの影響によって社会経済のあり方が変化して中、金融機関そのもののビジネスの見直しが求められている。こういった状況の中、金融審議会では、経済の回復と持続的な成長に資する銀行制度のあり方について、以下の内容に関する見直しを検討していく。

  1. 銀行グループが、地方創生に資する業務など社会的に意義のある業務に積極的に取り組むことができるよう、銀行の子会社や兄弟会社の業務範囲に関する規制を見直す

  2. 地域における事業再生や事業承継、ベンチャービジネスを支援していく観点から、銀行グループによる一般事業会社への出資に関する規制を見直す

  3. 銀行グループと事業会社グループとの間のイコール・フッティングを確保する観点から、一般事業会社による銀行保有のあり方について検討する

  4. 銀行グループが保有する人材やデータ、ITシステムなどのリソースを最大限に活用する観点から、銀行本体や子会社、兄弟会社が営むことができる業務に関する規制を見直す

  5. 日本の銀行グループの国際競争力を強化する観点から、銀行の海外における子会社や兄弟会社の業務範囲に関する規制を見直す

 金融機関のこれらの規制の見直しによって、金融機関が地域経済の再生や持続的な成長に貢献できる環境を整備していく。

(4)的確な実態把握

 現在の環境下では、経済情勢に関する見通しが不透明であり、経営環境や産業構造の大きな変化も想定される。そのため、個別金融機関の経営状況や金融システム全体の強靭性・脆弱性を的確に把握することが重要となっている。

 そこで金融庁では、経済・市場動向を理解し、個別金融機関の経営状況や金融システム全体の状況を的確に把握することを目指す。具体的には、金融機関からの徴求データ、金融経済情勢に関するマクロデータや企業の個社データと組み合わせて分析するなど、データ活用の高度化を推進する。

 また、金融行政の高度化・効率化を進めるため、中長期的視点に立ったデータ戦略として、データの収集、管理、活用の枠組み・ルール(データガバナンス)を整備するとともに分析手法の多様化や人材の育成に努めていく。

 たとえば、金融機関のモニタリングにおいては、オンサイト(立ち入り検査)とオフサイト(ヒヤリングや資料を元に金融機関の健全性や管理態勢などの状況把握)を効果的に組み合わせる。

 金融セクターや各金融機関の経営上の課題の重要性について、機動的かつ先を見通した実態把握を実施していくという。「外貨流動性などに係るリスク管理」「有価証券運用に関するリスク管理」などの具体的な分野について、金融機関の規模・特性やビジネスモデルの違いに則した実践的なモニタリング手法の開発を進める予定だ。

【次ページ】コロナ後の社会へ「金融業の変化が不可欠」なワケ
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