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  • 2020/06/16 掲載

ソニー損保代表に聞く、運転の仕方で「3割引き」する商品を作ったワケ

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フィンテックによって、金融業界全体でテクノロジー活用の動きが広がり、保険業界もデータを活用した新たなビジネスモデル、保険商品を模索している。そんな中で、ダイレクト自動車保険分野をリードするのがソニー損保だ。2019年3月には自動車保険契約数200万件を突破し、中期経営計画において、「AIなどによるデータ解析、画像認識、チャットボット」などのテクノロジー活用を掲げる。今回、AIを活用した「運転特性連動型自動車保険」を発表した同社 ソニー損害保険 代表取締役社長の丹羽 淳雄氏に、デジタル戦略や損保会社としての変革について聞いた。
聞き手、構成:編集部 山田竜司、執筆:阿部 欽一

聞き手、構成:編集部 山田竜司、執筆:阿部 欽一

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ソニー損害保険 代表取締役社長 丹羽 淳雄氏

「何のためにテクノロジーを活用するか」が大事

 フィンテックをはじめ、金融業界全体でビジネスのデジタル化が大きなテーマになっている。丹羽氏は、「これまでもダイレクト自動車保険の領域は、ITやインターネットの活用をベースに成長してきた」と述べる。

 たとえば、紙による契約手続きではなく、インターネットを通じた契約手続きによってオペレーションコストを下げ、低価格化を実現してきた。保険業界のデジタル化は、インシュアテック(InsureTech)といった言葉で注目を集めるが、IT、先進技術の活用は過去からの流れの延長だという。

 走行距離に応じて保険料を変えるなど、ユニークな商品や低価格などが特徴のダイレクト自動車保険だが、丹羽氏によれば「日本におけるダイレクト自動車保険の比率は、全体の10%程度に過ぎない」とのことで、まだまだ市場内の伸びしろはある。

 こうした背景から、ダイレクト型損保各社は、これまで各社が異なる戦略で特色ある保険商品を提供してきたが、「競争が激化し、商品やサービスの均質化が進んでいる」状況だ。

「各社とも、商品・サービスの充実を図ってきており、また、低価格戦略を展開しているところもあり、市場の伸びしろに比例して競争はますます激しさを増しています」(丹羽氏)

 こうした状況下で、ソニー損保は、「先進テクノロジーの活用のための投資」を積極的に行っている。しかし、丹羽氏は「それ自体が目的なのではない」と強く述べる。

「まずは、顧客価値をいかに最大化するかが大事です。利便性やスピード、正確性、低価格など、従来型のビジネスでは到底提供できない価値をさらに高めていくために、テクノロジーをいかに活用するかが重要で、テクノロジーの活用ありきではないのです」(丹羽氏)

AIを活用したビジネス改善に取り組む

 ソニー損保は、ソニーフィナンシャルグループが2019年に発表した中期経営計画の中で、重点施策として次の4点を掲げている。

  1. 自動車保険の成長持続・シェア拡大
  2. 多種目強化による成長の加速
  3. 顧客価値の最大化
  4. テクノロジーの活用


 特に、テクノロジーの活用については、「AIなどによるデータ解析、画像認識、チャットボットなどの先進テクノロジーの活用」「ソニーグループ内連携の推進」がポイントとなる。

 たとえば、商品開発では、テレマティクス保険の一つとして「PHYD型」(Pay How You Drive:運転行動連動型)保険の開発に取り組んでいる。

 また、マーケティング領域では、AIを活用し、ダイレクトマーケティングにおける顧客属性・行動分析の高度化に取り組み「どんな人に、どのタイミングで、どんなアプローチをすればよいか」を最適化しようとしている。

 そして、契約プロセスにおいては、AI-OCRなどの画像認識・解析技術を活用したプロセス改善が挙げられる。証券画像解析による保険料見積の即時提供や、事故を起こした場合の求償手続きにおいて、スマホで撮影した画像を解析することで求償手続きを自動化、最適化することなどだ。

 そのほかにも、顧客対応にAIチャットボットを活用した自動化の推進などに取り組むとしている。

車の運転による事故リスクは下がるが、リスク要因は変わっていく

 今後、同社はどのようなデジタル分野に、どのようなタイミングで投資を行っていくのか。丹羽氏は「保険商品の先進性、独自性、合理性を高める方向に進んでいく」と語る。

「自動車保険に占めるダイレクト保険の比率を高めるという全体戦略の中で、競合他社との競争は激化し、他社の訴求ポイントも強力になってきています。その競争に行き残るためには、先進性、独自性、合理性に加え、サービス品質の高さが重要です」(丹羽氏)

 契約手続きや事故対応などのサービス品質を高め、顧客満足度を高めることを重要視しているということだ。そして、「サービス面でもテクノロジーを活用し、今までにないサービス品質、価値を提供していく」ことで、自動車保険の顧客満足度1位という独自価値をさらに高めていくというのが今後の方向性となる。

 テクノロジーの進展によって、たとえば、自動運転技術が普及することで、「車の運転による事故リスクは下がっていくことが考えられる」が、その一方で、自然災害や感染症など、これまでとは異なるリスクが高まっていくことが考えられる。

 そうした経営環境の変化に柔軟に、スピーディに適応していくことが成長のカギを握る。

【次ページ】AI人材はソニーグループ協働で
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