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- 2020/03/10 掲載
コロナショックと日経平均株価2万円割れには、「鳥の目」で備えよ
マーケット動揺時は「鳥の目」で考える
2020年3月9日、日経平均株価は1年2カ月ぶりに2万円を割れた。VIX指数(恐怖指数)の上昇などからもわかるように、マーケットは動揺している。こんな時にどうすれば心を落ち着かせ、冷静に行動できるのだろうか?長年証券会社でトレーダーとして商品の売買に従事していた筆者は、「鳥の目」で考えることにしている。発生している事象から距離を取り、全体を俯瞰(ふかん)できるスタンスで考えるということだ。
いくつかの「鳥の目」が考えられるが、本記事では、長い期間のマーケットを見ること、そして過去に発生した類似のイベントを見ることについて言及する。加えて、マーケットを「鳥の目」で長年見てきた人は知っている「質への逃避」についても触れたい。
「鳥の目」その1……長い期間のマーケットを見る
まず、長い期間のマーケットを見てみる。金融商品の中で最も基本的なものと言える、債券(金利)と株式について見ることが基本動作となる。下図は、筆者のオンラインサロンで提示した表である。(データは2020年3月6日時点のもの)データを羅列しすぎても混乱するので、1年前と年末の値だけを載せているが、これだけでも客観的な判断の助けになることがお分かりいただけると思う。
図の上部に国債の金利が記されている。日本の金利はほぼ横ばいだが、米国、ドイツの金利はかなり低下している。2020年3月3日に米FRBが緊急利下げを行ったことは記憶に新しい。
金利を低下させることは、不景気を打開するための施策であり、「企業や個人の活動を活発にすべし→資金調達を容易にすべし→金利を下げるべし」という一連の思考のプロセスを経て実行に移される。
日本の場合は、金利を低下させる政策よりも、“非伝統的”な政策として、通貨供給を増やす政策が中心に打ち出されている。つまり、「企業や個人の活動を活発にすべし→資金調達を容易にすべし→通貨供給を増やすべし」という一連の思考のプロセスである。
図の下部には、株価指数が記されている。1年前と現在(2020年3月6日時点)の比較で、日本の株価指数は既に下回っているが、米国、ドイツの株価指数は上回っていることが分かる。日本の「稼ぐ力」が1年前と現在では現在の方が下がっていることなども影響しているが、今回の混乱がマーケットに十分に織り込まれていないと考える一つの材料となる。
1点、「過去の2時点の金利と株価を見るだけで良いのか?」という疑問にお答えしておかなければならない。
新型コロナウイルスが、まず中国で発生し、アジア各国に感染拡大し、イラン、イタリアといったアジア以外の地域に広がり、アメリカ大陸にも広まりつつあるといった「流れ」は「魚の目」の視点である。
短い期間のマーケットの動きを見ることには「魚の目」が適しており、筆者も「魚の目」、またミクロの視点となる「虫の目」も思考のプロセスの中で当然ながら使用している。今回は「鳥の目」で見ることで、マーケットの全体感を理解し、心を落ち着かせようという趣旨となる点をご容赦いただきたい。
「鳥の目」その2……過去に発生した類似のイベントを見る
次に、過去に発生した類似のイベントについて考えてみたい。今回の新型コロナウイルスの感染拡大はグローバルパンデミックの可能性が高まったという世間の認識であり、「地球規模の危機」という視点で類似のイベントを採り上げてみた。下図をご覧いただきたい。こちらも筆者のオンラインサロンで提示したものであるが、ここでの議論においては、過去の「地球規模の危機」と比べてみると、「解決策」の策定が難しいということが浮き彫りになっている。
つまり、セプテンバーイレブン(2001年9月11日の米国同時多発テロ事件)においては、「テロとの戦い」という問題に対して、「国防をしっかりと行い、テロを抑える」という解決策があった。
2009年のリーマンショック(米証券4位 リーマン・ブラザーズの経営破綻による市場混乱)においては、「信用収縮との戦い」という問題に対して、「資金供給をしっかり行い、信用を復活させる」という解決策があった。
一方で、新型コロナウイルスにおいては、「感染症拡大との戦い」という問題に対して、一義的な解決策が見い出せていないことになる。
【次ページ】混乱時の投資家の行動は「シンプル」
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