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- 2020/02/14 掲載
三井住友FGトップの「社長製造業宣言」から、グループ最年少社長が生まれた経緯
hoops link tokyoでの会話がきっかけにスタートした新会社の設立プロジェクト
2019年10月1日、三井住友フィナンシャルグループ(以下、SMFG)と弁護士ドットコムの合弁会社「 SMBCクラウドサイン」が設立された。その代表取締役社長を務めるのが、現在37歳の三嶋 英城 氏である。SMBCクラウドサインは「契約プロセスを中心とした、日本のレガシーな風習・業務プロセスの変革」を事業ビジョンとして掲げ、契約プロセスを「作成」「締結」「保管」「履行」の4つに分け、それぞれをデジタル化、一気通貫で提供するプラットフォームビジネスの展開を目指す。
もともと三嶋氏は、東京理科大学を卒業後、ニフティに入社し、その後、2018年に三井住友銀行(以下、SMBC)に入行した。そして、SMFGが運営するオープンイノベーション拠点「hoops link tokyo」の統括を経て、2019年10月、社内起業により設立されたSMBCクラウドサインの代表取締役社長に就任した。
「hoops link tokyoでは、ベンチャー企業等の下支えをしていましたが、SMBCに入ったときから、自分自身で事業を作りたいと考えていました。2018年2月にhoops link tokyoで経営者道場というイベントを開いたのですが、その際一般聴取者として参加されていた弁護士ドットコムの営業責任者の方との懇親会での会話がきっかけとなって、今の事業が構想されたのです」(三嶋氏)
弁護士ドットコムは現在、クラウド型電子契約サービスのクラウドサインを運営している。この懇親会の時点でも、その知名度は十分に高かった。三嶋氏と弁護士ドットコムの間では、どんな会話が交わされたのだろうか。
「その時点で、クラウドサインがすでにかなりの成功を収めていたのは事実です。プロダクトとして非常に完成度の高いものでした。しかし、日本全体の法人数が約400万、クラウドサインの導入社数がその時点で約5万社でしたので、シェアで見ると1%程度にすぎません。99%の企業は、いまだに紙とハンコを使っているのが実態です。この状況を変え電子契約を広めるには、SMBCのメガバンクとしての信頼感や法人顧客基盤が起爆剤になる。協力すれば、お互いの強みを活かせるに違いないという話になったのです」(三嶋氏)
銀行最大の強みを「社会的信用力」と定義
SMBCに入行したときから新しい事業を作りたかったという三嶋は、「銀行の強みは何か」を徹底的に考えたと、次のように述べる。「競合は他行ではなく、GAFAや国内ITメガベンチャーと設定しました。彼らに銀行が勝る点は何か? 金融コングロマリットとしてのSMBCグループは確かに強力な存在ですが、既に彼らも金融機能は持ちつつある。これだけでは強みとしては弱い。では彼らが早々持ちえないものは何だろう?ここで至った一つの解が『社会的信用力』です」(三嶋氏)
いわゆるIT業界ではそのスピード感と熾烈な競争から、歴史上、グレーな領域にも踏み込み、世の中的に黒と言われたら立ち戻る、“ギリギリの戦い”が繰り返されてきた。一方、銀行はグレーか否かという事実以前に「社会的にグレーと思われることすら許されない、常にホワイトでなければいけないという文化」であるという。
「恐らく銀行というと皆さん『固い』『遅い』『融通が利かない』などマイナスイメージを持たれる方は多いかと思います。それは、裏を返すと『銀行がさすがに変なことはしないよね』という信頼感とも言えるのではないでしょうか。この『社会的信用力』こそがIT業界が早々持ちえない、銀行の最大の強みであり、新しい事業を作るなら、この強みを活かすべきだと考えました」(三嶋氏)
では、その信用力を活かせる領域はどこか。さまざまな領域を考えたという三嶋氏が見つけたのが、リーガルテックだった。
「銀行はお金という極めてクリティカルな情報を預かる事業です。そして、リーガルテックも契約書というお金と同様に極めて重要な情報を扱います。それをどこに預けるかを考えたとき、銀行の『信用力』があるかどうかは非常に大きな差別化ポイントになると考えました」(三嶋氏)
一方の弁護士ドットコムにとっても、SMBCとの連携はメリットが大きかった。三嶋氏は、次のように説明する。
「弁護士ドットコムのクラウドサインは、販路がWebプロモーション中心であったこともあり、IT企業やベンチャーなどの比較的ITリテラシーの高い企業が顧客の中心でした。しかし、日本全体に電子契約を普及させるためには、大企業や昔ながらのレガシーな企業にもアプローチしなければいけません。それには、SMBCの信用力や法人顧客基盤が必要だったのです」(三嶋氏)
こうして新会社設立の話は、急ピッチで進む。ただし、法務リスクやシステムリスクを整理する「デューデリジェンス」を、約半年かけて徹底的に実施した。
「徹底したデューデリジェンスは、今回の事業にはプラスでした。大手企業がサービスを検討する際には、『法的に大丈夫なのか』『システムは問題ないか』を必ず確認します。そのとき、『我々はここまでのデューデリジェンスを実施した』と言えることが重要だったのです」(三嶋氏)
【次ページ】SMBCと弁護士ドットコム出資比率が「51:49」である意味
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