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  • 2019/10/24 掲載

「GAFAでも太刀打ちできない」日本の金融の強みとは? みずほFG 石井哲専務に聞く

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あらゆる業種・業界で起きているデジタル・ディスラプション。デジタルを駆使する新規参入企業は既存のプレーヤーにとって脅威と呼べる存在だ。その脅威を認めつつも「長年にわたる蓄積に基づく、一朝一夕では新規参入組が真似できない強みがある」と主張するのはみずほフィナンシャルグループの取締役兼執行役専務であり、みずほ銀行の副頭取執行役員を務める石井哲氏だ。石井氏にこれからの金融の在り方と生き残り戦略について話を聞いた。
聞き手:編集部 松尾慎司、構成:吉田育代

聞き手:編集部 松尾慎司、構成:吉田育代


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みずほフィナンシャルグループ 取締役兼執行役専務
デジタルイノベーション担当役員 兼
IT・システムグループ長 兼 事務グループ長
みずほ銀行 副頭取執行役員
石井 哲 氏

「店番」の概念を取り払う実業務への意義

 みずほフィナンシャルグループの新たなシステム基盤であるMINORIの意義はすでにお話した通りですが、その整備に併せて、実はもう1つ、みずほフィナンシャルグループの将来を見据えた大きな工夫があります。

 それが、従来、割り振られていた「店番」の概念をなくしたことです。インターネットバンキングの普及などを背景に、営業店への来客の減少を踏まえた、営業店業務の効率化が多くの銀行の共通課題となっています。この共通課題をどのように解決し事務の効率化を進めるかが、銀行業界にとって喫緊の課題と言えます。

 一連のMINORI開発を通じ、APIによる社内外のシステムとの円滑なやりとりと、店番に縛られないデータ処理が可能になりました。ペーパーレスや印鑑レスにとどまらず、お取引の受付から勘定帳票に至るまで人手を全く介さない自動化や、各営業店の事務作業を担う「センター」への集約等、徹底的な効率化の下地も整いました。

 これから2020年春にかけ、タブレット端末によるペーパーレス化や印鑑に代わる認証手段の導入、MINORIとタブレット端末とのAPI接続を通じ、まずは口座の新規開設や税金納付など、基礎業務から自動化を進めます。

 近い将来には自動化が難しい手書きの書類や帳票等のAIを用いたOCRでのデジタル化により、センターでの自動化も進めていく方針です。また、みずほフィナンシャルグループでは、国内拠点の統廃合を進めており、グループの国内拠点数を2024年までに500から370拠点にする計画を進めています。それらの店舗すべての業務が今後、自動化やセンター集約の対象となります。ひいては、窓口業務のためのサービスカウンターも不要になり、営業店はお取引の場から、顧客のニーズに応えるコンサルティングの場に姿を変えていき、その在り方も大きく変わることになります。

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みずほフィナンシャルグループの人員・国内拠点・経費の定量イメージ
(出典:みずほフィナンシャルグループ5カ年計画(2019年5月発表))


デジタル対応が求める組織への「前向きな覚悟」

 ただし、変化対応には当たり前ですが、必ず痛みが伴います。我々の場合では、営業店が統合されることで、当然、支店長などのポストも少なくなります。また、営業店が担う役割が変化することで、当然、各社員の仕事の中身や働き方、さらにはキャリアメイクのあり方も変わっていくことになります。

 加えて、デジタル化により、各社員には新たなスキル獲得が求められることになります。たとえば他のITプラットフォーマーは、デジタル技術を活かして、個々の顧客のニーズに応えるかを、我々よりもはるかに掘り下げて検討しているという認識です。

 競合に先んじるには、デジタルに関する専門知識だけでなく、顧客ニーズを聞き取るための洞察力、さらには人間的な魅力、あるいは業務プロセスやビジネスモデル全体を変革させていくデザイン力をより一層磨いていかねばなりません。

 我々が発表した抜本的構造改革の中では人員削減に関する質問をよく受けますが、自然退職や採用減などを踏まえればこれ自体は至難なことではありません。それよりも直視しなければならないのは、デジタル化を推し進める中で、これからもみずほフィナンシャルグループで働いていく社員一人ひとりが自らどう変わっていくか、ということです。

 その「前向きな覚悟」を社員にどう共有するか。これが、みずほフィナンシャルグループにとって一番のチャレンジと言えます。

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GAFAも太刀打ちできないメガバンクの強み

 デジタルを駆使する新規参入組は、既存プレーヤーにとって脅威と呼べる存在です。ただし、既存プレーヤーにも長年にわたる蓄積に基づく、一朝一夕では新規参入組が真似できない強みがあります。

 たとえば、大企業をはじめとした法人や機関投資家向けのホールセールの分野では、メガバンクである我々の方が依然として圧倒的に分があります。

【次ページ】キャッシュレス化の進展の中で担うべき役割
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