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  • 2024/06/29 掲載

暗号資産「税率ゼロ」で大人気のマレーシア、一方で日本は「ワースト」国に名を連ねる

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2024年4月のビットコイン半減期により暗号通貨投資が活発化する中、東南アジアの「マレーシア」に注目が集まっている。個人の株式や暗号通貨利益が非課税となるなど投資に優しい環境だからだ。物価上昇率は日本とほぼ同水準だが、家賃や食費は2~3割安い。英語も通じるため、さまざまな魅力から移住先としての人気が高まっているようだ。
執筆:細谷 元
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マレーシア近代化の象徴、ペトロナスツインタワー
(Photo/Shutterstock)

暗号通貨投資家に優しい国、日本はワースト国入り

 ビットコインが高値を更新する中、各国の暗号通貨税制が改めて注目されている。暗号通貨投資家に優しい国のリストには、ポルトガル、マルタ、UAE、ドイツ、バミューダ、ケイマン諸島、エルサルバドル、ジョージア、香港、プエルトリコ、スイス、英領バージン諸島、ジブラルタルなどが名を連ねる。

 暗号通貨保有者は通常、所得税とキャピタルゲイン税を支払う必要がある。所得税は、暗号通貨で支払いを受ける、マイニングやステーキングで報酬を得る、エアドロップで新しい暗号通貨を受け取る、リファラルボーナスを得るなど、暗号通貨を「獲得」した際に発生する。

 一方、キャピタルゲイン税は、保有する暗号通貨を「処分」して利益を得た場合、つまり暗号通貨を売却して利益を得た場合、ある暗号通貨を別の暗号通貨と交換した場合、暗号通貨で商品やサービスの対価を支払った場合などに課される。

 東南アジア圏で、個人の暗号通貨投資にかかるキャピタルゲイン税がゼロとなる国としては、シンガポールとマレーシアの名が挙がる。ビジネスではなく、個人で投資を行っている限り、利益がどれだけ出ても、税率はゼロ。特にマレーシアは、他国に比べ相対的に物価が安く、移住のハードルが低くなっており、最近になり注目が高まっている。

 一方、暗号通貨投資家に厳しい国も複数存在する。このリストの中では5か国が暗号資産の税制で「ワースト」として取り上げられた。

 オランダでは、暗号通貨を売却したかどうかに関わらず、保有者に課税される。ステーキングやマイニングによる収入も課税対象となる。インドでは、すべての暗号通貨収入とキャピタルゲインに30%の定率税が課され、長期的な利益に対する割引や、暗号通貨の損失に対する税制優遇措置はない。

 フランスでは、個人投資家に30%の定率課税、専門投資家には所得税と社会保障負担金を合わせて最大60%の累進課税が適用される。スペインでは、暗号通貨収入に最大47%の税金がかかり、キャピタルロスの25%しかキャピタルゲインと相殺できない。

 最後の日本は、暗号通貨の売却益は「雑所得」として扱われ、最大45%の累進課税が適用される。さらに住民税として所得の10%を払う必要があるほか、相続税の高さも指摘している。

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マレーシアは「投資家に優しい国」と言える。写真は2023年12月のクアラルンプールの様子
(Photo:Abdul Razak Latif / Shutterstock.com)

注目されるマレーシア、移住のハードル

 マレーシア政府は、外国人投資家に対し、いくつかの魅力的な移住プログラムを提供している。代表的なのが、Malaysia My Second Home(MM2H)プログラムとPremium Visa Program(PVIP)だ。Henley & Partnersによると、これらのプログラムでは、一定の投資を行うことで、申請者とその家族にマレーシアでの長期滞在を認める複数回入国ビザが付与される。

 MM2Hビザは10年間有効の複数回入国ビザで、35歳以上の申請者が対象となる。主申請者とその配偶者は、年間90日以上マレーシアに滞在する必要がある(子供、両親、義理の両親は免除)。一方、PVIPビザは20年間有効の複数回入国ビザで、5年ごとに更新される。申請者の年齢制限はなく、マレーシアで働いたりビジネスを行ったりすることも可能だ。PVIPビザ保有者にマレーシア居住の義務はない。

 いずれのプログラムでも、申請時に以下の条件を満たす必要がある。

  • 最低月4万リンギット(約1万ドル=約156万円)の海外からの収入を証明する。
  • 最低150万リンギット(約35万ドル=約5,500万円)の銀行預金残高証明書を提出する。

 申請が承認されると、MM2Hの場合は100万リンギット(約23万ドル)、PVIPの場合はこれに加えて扶養家族1人につき5万リンギット(約1万2,000ドル)を現地の定期預金口座に預け入れる必要がある。預け入れた資金は、マレーシアでの滞在期間中、同口座に維持しなければならない。ただし、最初の1年が経過した時点で、マレーシアでの住宅購入、子女の教育、医療目的で、最大50万リンギット(約11万5,000ドル)を引き出すことが可能だ。

 このほか、PVIPでは申請時に、申請者1人につき20万リンギット(約4万5,000ドル)、扶養家族1人につき10万リンギット(約2万2,000ドル)の一括申請料を支払う必要がある。

 MM2Hビザ、PVIPビザのいずれも、マレーシアでの永住権の取得にはつながらない。ただ、一定期間マレーシアに滞在し、所定の要件を満たせば、永住権や市民権の申請が可能になる道も開かれている。

 以上のように、マレーシアの移住プログラムは、一定の経済力を持つ外国人投資家にとって魅力的な選択肢となっている。暗号通貨投資家の間でも、マレーシア移住に対する関心は高まりつつあるようだ。 【次ページ】家賃はシンガポールより88%安いマレーシアの物価
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