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  • 2024/01/05 掲載

Cowbell Cyber(カウベル・サイバー)とは? サイバー保険市場で年50%で成長の理由

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ランサムウェアによる身代金支払い、データ漏えいやシステムダウンの復旧コスト、法的費用など、サイバー攻撃による損失の種類は多岐にわたる。そこで注目されているのが、サイバー攻撃で発生した損失を補償する「サイバー保険」だ。保険大手からさまざまな保険商品が登場する中、AIを活用したスタートアップCowbell Cyber(カウベル・サイバー)が保険市場での存在感を高めている。Cowbell Cyberとはどのような企業なのか。成長率50%で大躍進する理由を探ってみたい。
執筆:細谷 元
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世界のサイバー保険市場は133億ドルにのぼる。金融やヘルスケアでの導入が進む
(出典:Fortune Business Insightをもとに編集部作図)

年率26%超で成長するサイバー保険市場

 国内外でサイバー攻撃が頻発し、実害が増える中、サイバーセキュリティに対する認識も進み、対策の高度化も進展しつつある。しかし、それでも防ぎきれない場合があり、企業は最悪のシナリオに備える必要がある。

 そこで登場するのが「サイバー保険(サイバーセキュリティ保険/サイバーリスク保険などとも言われる)」だ。サイバー攻撃によって引き起こされる可能性のある損害・損失をカバーする保険で、日本でもSOMPOなど保険大手企業から多数の保険商品が提供されている。

 サイバー攻撃を受けた際、企業がこうむる被害は非常に大きい。たとえば、マルウェアによるシステムダウンや顧客情報や企業の機密情報が漏えいした場合、システム復旧だけでなく、顧客への通知、法的対応費用などが発生。また、ビジネスが中断されることで、多大な機会損失が発生する場合もある。これらの損失をカバーするのがサイバー保険だ。

 Fortune Business Insightの調査によれば、サイバー保険の世界市場は、2022年に133億ドル(約1.9兆円)に達したと推計されている。需要は右肩上がりとなり、年間成長率は26%以上を維持、2023年には846億ドル(約12兆円)に拡大する見込みだ。

 大手企業における需要が堅調に推移する一方で、サイバー攻撃に対して脆弱といわれる中小企業が新たな攻撃対象となっており、中小企業における大幅な需要拡大が見込まれる。

インド出身の連続起業家が率いるCowbell Cyber

 サイバー保険市場では、信頼性やカバレッジの広さで大手保険企業が優位なポジションにいるが、独自の強みを持つスタートアップがいくつか登場しており、市場シェアを着実に広げている。

 その中で注目株の1つは、2019年に設立された米カリフォルニア発のCowbell Cyberだ。Cowbell CyberはAIを用いたサイバー保険を提供する。

 2023年11月に、サウジアラビアの石油大手アラムコ傘下のベンチャーキャピタル(VC)であるProsperity7 Venturesから2,500万ドルを調達。アラムコのVCが資金を投じたことが注目される理由の1つになっている。アラムコはこれまで幾度となく大規模なサイバー攻撃を受け、甚大な被害を被ってきた歴史があるからだ。日本からも新日本アセットマネジメントらが出資している。

 Cowbell Cyberの共同創業者でCEOを務めるのはジャック・クデール氏。1993年にインドのプネ大学エンジニアリング学部を卒業し、地元の自動車企業やCitiのムンバイ拠点などでエンジニアやアセットマネジャーとして務めた後、1998年に米国に渡り、金融大手のバンク・オブ・アメリカやバックアップツール大手のCA Technologiesなどの大手企業でコンサルタントやセールスとしてキャリアを重ねた。

 2014年にはシリコンバレーで1社目となるスタートアップ、旅行向けの低価格ローミングサービスを展開するNulatoを創業。転機は2017年、クラウドサイバーセキュリティ企業LaceworkにCEOとして就任したときだろう。

 これを機に、インシデント管理ツールを展開するTranspositの投資家・アドバイザー、またエンタープライズ向けのセキュリティプラットフォームを提供するCavirin Systemsの最高執行責任者など、サイバーセキュリティに特化したキャリアに転身、そして2019年1月にCowbell Cyberの設立に至る。

 Cowbell Cyberのリンクトインの企業ページによると、同社の社員規模は201~500人、リンクトインに登録している社員数は301人となっており、300人ほどの規模であることが分かる。本拠地はカリフォルニアだが、米国内に複数オフィスを展開、また英ロンドン、カナダ・トロント、インド・プネなどにも拠点を構えている。このほど調達した2,500万ドルを含め、同社の累計調達額は1億4,800万ドルとなる。 【次ページ】中小企業の顧客ベース49%増、業界平均を上回る損失比率を達成
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