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労働人口の急激な減少や、金融免許を持ったプラットフォーマーの成長、GAFAの金融事業開始など日本の金融機関を取り巻く環境変化は激しさを増している。今回は、地域における金融サービスの提供のあり方の変化について、金融庁 総合政策局 金融サービス仲介業室 PR担当官の山根 瑠利子氏を司会として、地域金融機関の変革に取り組む、URUU の代表取締役江上 広行氏、Finatext取締役CFO伊藤 祐一郎氏が語った。
執筆:金融庁 金融サービス仲介業室・電子決済等代行業室 監修:栗田 亮
執筆:金融庁 金融サービス仲介業室・電子決済等代行業室 監修:栗田 亮
地域金融機関を巡る環境変化
山根氏:前回は、金融サービス仲介業を巡る潮流として、組込型金融の動向、そして顧客接点を持つプラットフォーマーが金融サービスを提供する動向に言及しました。
こうした動向は、顧客インターフェースを担う横断的なレイヤーが社会の仕組みとして定着しつつあることを意味し、金融機関としては、その仕組みを通じて後ろから金融サービスを提供することが常態化していくのではないでしょうか。
地域金融においても、このような変化が起きる可能性があります。たとえば、2022年9月に金融サービス仲介業者に登録したリクルートペイメントは、顧客インターフェースを担う飲食店向けのPOSレジのプラットフォーム(「Airレジ」)を活用し、金融機関と連携して飲食店を営む地域の中小事業者へ金融サービスを提供することを標榜しています。
リクルートペイメントの例に限らず、クラウド会計などデジタルツールの活用は地域にも広がっています。これを受け、地域の中小事業者に対する金融サービスの提供のあり方も変わっていくと思うのですが、現状の環境変化をどう認識していますか?
伊藤氏:ここ5年くらいで環境が劇的に変わってきています。これまでは、地域の中小企業のデジタル化が進まないことが課題とされてきました。
しかし、スタートアップ企業がさまざまな業界用システムを作り始め、また新型コロナウイルス感染症の拡大に伴って会社に来なくてもできることを増やさなければならない中で、中小企業でもシステム化が進み始めています。
江上氏:金融機関の内部環境の変化として、業界のシステム人材が量的にも質的にも圧倒的にデジタル化・オープン化のスピードに追いついていないことがあります。
エンジニアとして、(他業種として比較して制約の多い)金融機関を志望する人は非常に稀有であり、これまでメインフレームを開発してきた、高齢化した40代以上の担当者が、なんとか今のシステムを動かしています。外部連携を進めようにも対話が成立しにくい状況だと思います。
地域の中小事業者とプラットフォーマーの連携を探る
山根氏:地域の中小事業者とのインターフェースを担うプラットフォーマーが地域金融機関と連携するといった動きはどうでしょうか?
伊藤氏:海外では、地域金融機関が、地域の特定の業界、たとえば建設業や、農林業、病院などの業界に対してシステムを提供する企業と連携して、その業界の中小事業者に金融サービスを提供する例が増えてきています。
日本でも、いくつか芽は出てきています。必ずしも、金融機関との連携まではたどり着いていませんが、たとえば、建設業界にシステムを提供する会社が、下請け企業向けのプラットフォームで、大規模な工事の際に協力会社を簡単に見つけられるようなデジタルサービスを提供する動きがあります。
ここでは、地域金融機関がB2Bでニッチな領域のシステムを提供する会社と連携しながら金融サービスを提供していく土壌が整い始めています。
山根氏:地域金融機関にとって、この連携にどのようなメリットがあるのでしょうか。単に従前の顧客接点がデジタルになる以上の意味があるのでしょうか。
伊藤氏:こうした連携を通じて今まで提供できなかったところにサービスを提供する動きが出てくるといいと思っています。たとえば、レストランは、リスクが大きくて2~3年で閉店に追い込まれてしまうことも少なくないので、銀行は融資をしにくいのです。
一方、プラットフォーマーのデータを解析してリピート率が高いお店は持続可能性ありと判断して融資をするというようなサービスが日本でも必ず出てくると思います。
実際、米国ではレストランPOSシステムを提供するトースト(Toast)が、ユーザーデータを活用したレンディングサービス「Toast Capital」を提供しています。このサービスは2022年には同社の利益の10%超にまで成長しているのです。
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