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建設業界では慢性的に労働災害が頻発しており、特に墜落事故や重機による巻き込み事故、夏場の熱中症対策などは深刻な課題となってきました。これらは主に、安全手順の形骸化、コミュニケーション不足、現場での慣れによる安全意識の低下が原因で発生しています。労働安全衛生法などの法的規制は整備されつつある一方で、現場での実際の運用には改善の余地があります。そこで今回は、建設業における安全対策について解説します。
建設業の死亡災害は全体の「約3割」に
建設業は、ほかの産業に比べて労働災害の発生率が特に高い業種として知られています。
厚生労働省の統計によると、建設業における労働災害による死亡者数は、全業種の約3割を占めています。
この現状は、建設現場の特性や作業内容に起因するものであり、特に高所作業や重機の使用、複雑な工程管理などが大きなリスクとなっています。
そのため、建設業における安全対策は、業界全体で取り組むことが必要です。労働者の命を守ることはもちろん、現場の円滑な業務遂行や企業の信頼性向上のためにも、安全対策の徹底は欠かせません。
具体的な対策としては、適切な教育・訓練の実施や日常的なリスクアセスメントの強化、安全装備の使用徹底などが考えられます。これらの取り組みを通じて、事故ゼロを目指す安全文化が現場に根付くことが求められます。
建設現場で最も多い死亡災害の事例とは?
建設現場では、作業の多様性に伴い多くの労働災害が発生しやすく、そのリスクは多岐にわたります。その中でも、最も多いのは「墜落・転落」事故です。
2024年7月30日には、大手ゼネコンの建設現場で、作業員が作業用床が外れたことにより屋上から落下し、死亡するという痛ましい事故が発生しました。
「墜落・転落」事故は、高所作業や足場の設置中に頻発しており、足場の不備や安全ベルトの未使用が原因の大半を占めています。このような事故は、重大なけがや死亡事故につながりやすいため、徹底した安全管理が求められます。
次に、「挟まれ・巻き込まれ」事故も建設現場では頻発しています。資材の運搬中などに発生することが多く、特にクレーン作業中の操作ミスや指示の不徹底が原因となっています。重機が稼働する範囲を明確にし、作業員にその情報をしっかりと伝えることが非常に重要です。
また、バックホウの使用が多い建設現場では、作業員が死角に入り込むことで事故が発生するケースが多く、特に視界が悪い現場や複数の作業が同時進行する場合には、より一層注意が必要です。
さらに、近年では夏場の熱中症リスクも大きな問題となっています。気温や湿度が高い状況下では、作業員が熱中症にかかるリスクが急増します。現場では、適切な水分補給や作業中断を含む対策を講じる必要があり、企業側の計画的な対応が求められます。
業務に起因する熱中症は労働災害として認定されるため、建設業における安全対策では、こうした日常的なリスクにも十分な注意を払わなければなりません。
ここまで、建設業界で発生しやすい労働災害の事例について紹介しましたが、過去に発生した重大事故から、多くの教訓が得られています。1972年に労働安全衛生法が施行されたことで、死亡者数は激減し、その後も長期的に減少傾向が続いています。
労働者を労働災害や健康被害から守るための義務が事業者に課されたことで、大きな成果が上がったといえます。
【次ページ】建設現場で問題視すべき安全対策の「形骸化」
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