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  • 2023/11/16 掲載

製造テックスタートアップで注目のユニコーン、拡大する3Dプリンター市場のゆくえ

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ベンチャー投資分野では、フィンテックWeb3、AIなどが注目されることが多かったが、このところ製造テック分野への関心も高まりを見せている。AIや3Dプリンターなど各テクノロジー要素の進化、またそれらの技術を製造分野に応用する手段の発達により、製造業に特化したテクノロジーソリューションの精度が高まっていることが背景にある。製造分野では、どのようなスタートアップが注目されているのか、ベンチャーキャピタルの投資動向を探ってみたい。
執筆:細谷 元
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注目の製造業テック分野のスタートアップとは?
(Photo:Piotr Swat / Shutterstock.com)

製造業分野のベンチャー投資動向

 アナリティクス企業Tracxnによると、世界の製造分野のテックスタートアップ数は5300社を超えるという。

 この製造テックスタートアップへの投資が近年、急速に拡大しており、ベンチャー投資分野の中でも最も活発な領域の1つになっている。

 実際Tracxnが2023年1月に発表した「Emerging Startups 2023: Top Manufacturing Tech Startups」では、製造テックスタートアップ1500社に対し、これまで264億ドルの資金が投じられたが、その3分の1は2020~22年の3年間で調達されたことが判明している。特にこの分野での投資活動が活発なベンチャーキャピタルには、Insight Partners、BDC、Plug and Play Tech Center、Y Combinator、Accelなどが含まれる。

 ベンチャーキャピタルの関心が高いのは、ロボティクス、分散型製造(distributed manufacturing)、デジタルツイン、品質管理、視覚検査などの分野というが、最近では3DプリンターやAI分野の注目度も高まっている。

 また、ウォール・ストリート・ジャーナルは2023年2月に「Venture Investors Are Pumping Capital Into 3-D Printing Startups. Here’s Why」と題した記事で、3Dプリンター分野におけるベンチャー投資が過去最高に達したと伝えている。

 スタートアップアナリティクス企業PitchBookは2022年の記事ながら、3Dプリンター技術の活用領域がはかつてホビーにとどまっていたが、技術進化により最近では、航空宇宙、ヘルスケア、住宅、植物ベースの肉の製造まで、さまざまな領域で実用化できる水準に到達しており、これがベンチャー投資の活況につながっていると指摘している

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3Dプリンター最大手のStratasys(ストラタシス)も買収騒動が起きている
(Photo:T. Schneider / Shutterstock.com)

製造テックユニコーン企業

 Tracxnのデータセットに含まれる製造テックスタートアップの中で、評価額10億ドル以上となるユニコーン企業は、インド・ベンガルールのZetwerk、米オースティンのSparkCognition、米シカゴのUptakeの3社。公開済みの調達資金額は、Zetwerkが5.4億ドル、SparkCognitionが3億ドル、Uptakeが2.8億ドル、Bright Machinesが3.3億ドル、Fictivが1.9億ドル。

製造テックユニコーン企業
社名 調達推計額 事業概要
Zetwerk(インド) 5.4億ドル 製造業向けのマーケットプレイス
SparkCognition(米国) 3億ドル AIベースのアナリティクスツール
Uptake(米国) 2.8億ドル AIベースのプレディクティブ・アナリティクスツール
Bright Machines(米国) 3.3億ドル AIベースのロボティクス・ソリューション
Fictiv(米国) 1.9億ドル オンデマンドなインダストリアル3D製造サービス
(出典:tracxn「Emerging Startups 2023: Top Manufacturing Tech Startups」2023年1月)

生成AIで1分にまとめた動画
 Zetwerkは、製造業向けのマーケットプレイスを提供する2018年に設立されたスタートアップ。同社のマーケットプレイスは、大規模な製造企業とベンダー/サプライヤーを結びつけ、産業用機械・設備向けの部品などカスタマイズ製品の製造を支援するプラットフォーム。クレーンの部品、ドア、シャーシなどのプロダクトのほか、製造、加工、鋳造、鍛造などのサービスも取り扱っている。

 また同社は、バイヤーとサプライヤーの両方に、コラボレーションを効率化するツール、注文を簡単に遂行するためのツールなど、さまざまなツールを提供、さらには製造施設ネットワークへのアクセスも提供しており、予算やタイムラインに合わせてフレキシブルな製造プロセスを可能にしている。

 同社の評価額は、2020年7月に2億4,500万ドル、2021年8月に13億ドルとなった。さらに2021年12月に2億4,000万ドルを調達し、評価額は27億ドルに達した。

 Tracxnのユニコーンリスト2番目に位置するのは、米オースティンのSparkCognitionだ。2022年1月に1億2,300万ドルを調達、評価額は14億ドルとなった。

 SparkCognitionが提供するのは、AIベースのアナリティクスツールで、製造業以外にも石油・ガス、交通、金融などさまざまな産業で活用されている。

 製造業向けでは、主にAIを活用したプレディクティブ・メンテナンスツールを展開。同社によると、大規模な製造企業におけるダウンタイムコストの平均は、1時間あたり53万2,000ドルに上り、ダウンタイムの要因の23%がヒューマンエラーによるものであるという。

 AIを活用したプレディクティブ・メンテナンスツールを活用し、機械・設備のメンテナンス時期を予測することで、ダウンタイムの発生を防ぎ、予期せぬコストを削減できると説明している。

 3番目のユニコーン企業UptakeもSparkCognitionと同様に、AIベースのプレディクティブ・アナリティクスツールを提供。2014年に設立、2017年末時点で評価額は23億ドルに達した。

 5番目に挙げられていたFictivは、2013年に設立されたサンフランシスコにある企業だ。製造業のオンデマンドプラットフォームをうたい、自社で製造機械を保有せず、3Dでデザインを見ながら、試作製品のデザインや設計のマッチングを行う。2800万以上のパートナーネットワークにより、カスタム製造部品が極めて迅速に製造できるのが強みという。2019年に三井物産から資金調達を受けたことでも話題になった。 【次ページ】3Dプリンター分野の注目スタートアップ
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