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製造業は高度成長期の日本の中心産業であった。しかし、1970年代から伸びが鈍化し、1990年代からは衰退した。日本の基幹産業が大きく変わったにもかかわらず、日本は経済政策も社会体制も変えなかった。そのため新しい産業は成長できず、また今日の貿易赤字や異例の円安につながっている。産業構造の変化を促し、それに対応しなければ、日本経済は「失われた30年」から「失われた40年」に突入することになる。
日本の産業構造は問題だらけ
2020年11月から、貿易収支の赤字が続いている。こうなるのは、資源価格が高騰しているからだが、日本の産業構造が古いままであることも原因だ、との指摘がある。そして、円安が止まらないのは、日米金利差が拡大しているためだけでなく、産業構造改革の立ち遅れが原因になっているとの考えがある。
以下に見るように、現在の日本の産業構造にはさまざまな問題がある。とりわけ、世界経済の大きな変化に追いついていないことが問題だ。産業構造は、経済全体のパフォーマンスに大きな影響を与える。その動向を正しく捉えることはさまざまな局面で重要だ。
日本の産業構造は、1950~1960年代の高度成長を通じて大きく変わった。農業と軽工業を中心としたそれまでの産業構造から、重化学工業を中心とする産業構造に大きく変わったのだ。そして、製造業が高度成長を支えた。
1970年代のオイルショックで日本の回復が早かったのは、製造業が省エネを進めて原油価格高騰に対応し、賃金を抑えることによってインフレの進行を回避したからだ。
製造業が衰退したワケ
法人企業統計調査によって、製造業と非製造業の付加価値の推移を見ると、図1の通りになる。
1960年度から1975年度の間に、製造業の付加価値は3.9兆円から32.6兆円となり、非製造業の付加価値は3.0兆円から45.1兆円となった。1975年ごろ、日本の最も重要な産業は製造業であった。日本のリーディングインダストリーであり、日本の屋台骨を支えていた。
しかし、1970年代後半になると、製造業と非製造業の成長率に差が生じてくる。これは、中国工業化の影響による。
製造業は1980年代に付加価値の伸びが停滞し、1990年代から2000年代の初めまでは、停滞どころか、減少する事態になった。さらに、2008年のリーマンショックによって、製造業の付加価値は大きく落ち込んだ。非製造業も、1990年代には停滞に陥ったが、2000年代以降は成長を続けた。
1975年にはほぼ等しかった両者だが、2021年では製造業の付加価値が81.3兆円に対して、非製造業の付加価値が218.7兆円だ。つまり、非製造業が製造業の2.7倍になっている。
さらに就業者数で見ると、1973年は製造業が1440万人なのに対して、卸売・小売業と飲食店の合計は1077万人だった。このころに比べれば、現在の製造業のウエイトは、大きく低下した。2021年における製造業の就業者数は1045万人であり、これは卸売・小売業の1069万人とほぼ同じだ。
製造業と非製造業のウエイトが大きく変わった。いまや製造業は、日本のリーディングインダストリーとは言えない。
【次ページ】1975年から変わらない…経済政策は誰のためのものか
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