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  • 2021/12/17 掲載

Bank 4.0著者が展望する「テクノ社会主義」とは? 4つの予測シナリオから学ぶべきこと

FINOLABコラム

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コロナ禍で金融サービスを取り巻く環境は一変、多くの金融機関が「気候変動」への取り組みを加速させるなど変化のスピードがますます加速している。ネオバンク ムーブン(Moven)の創設者・会長であり、『Bank 4.0(邦題:BANK4.0 未来の銀行)』の著者でもあるブレット・キング氏の最新作『The Rise of Technosocialism』では、「テクノ社会主義」など、4つの予測シナリオについて解説している。FINOLAB Head of FINOLAB 柴田 誠氏によるインタビューでは、執筆の背景や金融関係者へのメッセージなどが引き出されている。
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ブレット・キング(Brett King)
本インタビューはFINOLAB Expert Interviewとして実施された動画を再構成したものです(参照:収録先であるFINOLAB CHANNEL本人のナレーションによる紹介

Bank 4.0著者ブレット・キング氏の新作とは

Head of FINOLAB 柴田 誠氏(以下、柴田氏):まずは新作の『The Rise of Technosocialism』の概要を教えてください。

ブレット・キング氏(以下、キング氏):2015年に『Augmented (邦題:『拡張の世紀―テクノロジーによる破壊と創造』)』を執筆して以来、デジタル化によるシステム社会の進展、気候変動の深刻化、社会格差の拡大といった課題について考えてきた。そして、AIなどの技術変化、失業増大、気候変動、感染拡大といった深刻な問題が社会や経済全体にどのような影響を及ぼすか、調査と分析に取り組んできた。

 その結果として、人類の未来に起こりそうな4つのシナリオにたどり着いたが、中でも最適と考えられたのが後述する「テクノ社会主義、技術社会主義(Technosocialism)」であったわけである。したがって、人類が生物種として生存するために取り組むべき課題と、どのように対応すべきかという点をとりあげた本に仕上がっている。

柴田氏:非常に幅広い事象をとりあげていることがわかりました。フィンテック(FinTech)分野にいる我々にとって、あなたは『Bank 2.0』から『Bank 4.0』までのシリーズで馴染みがあるわけですが、本作における対象領域はどのように異なっているのでしょうか?

キング氏:私自身、これまで銀行業務の変革に関する預言者などと言われることも多かったが、今回の著作では人類全体の未来を予想しており、かなり幅広い内容を含んでいる。とはいえ、経済全般や仮想通貨、中銀デジタル通貨、金融システムにおけるデジタル化が果たす役割といった、金融領域のビジネスパーソンにとって関心の高いテーマにも言及している。

柴田氏:最近では金融業界でもSDGsや気候変動の重要性について論じるようになっているので、本書がとりあげている内容の意義も理解しやすいのではないでしょうか。

銀行は矢面に立たされる立場

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<オンライン対談の様子>左は筆者
(出典: FINOLAB CHANNEL)
キング氏:気候変動や格差増大といった各種社会問題に対する抗議デモがこの20年間、件数で200%、参加者数で1000%増加しているとされるように、一般大衆の不満は増大している。たとえば、最近ロンドンで国際金融グループのバークレーズ(Barclays)や香港上海銀行(HSBC)といった大手金融機関に対し、「化石燃料利用に加担している」として、オフィスの前で“裸の抗議”デモがあった。

 こうした大衆の不満が大手企業に向けられることは多いが、特に金融業界や銀行は矢面に立たされることも多く、社会の善良な構成員としていかに振舞うか、どのように企業倫理を確立するかが問われる。

 さらに、デジタル化の進行によって銀行の店舗やオペレーションセンターにおいて必要な人員は減少する傾向にあり、人員の再配置や再教育をどのように進めるかという点についても、金融機関は大きな社会的な責任を負うことになる。

柴田氏:フィンテック分野を考えた場合に、金融機関だけではなく、スタートアップの存在も無視できません。新しいビジネスモデルや先端技術で金融業界に参入してくるスタートアップの影響については、どのように考えればいいのでしょうか。

キング氏:2021年に入ってから第1四半期、第2四半期ともに過去最高の投資実績を記録しているようだが、フィンテック革命はまだ始まったばかりだ。貨幣の流通や資金供給といった金融サービスの特性には、多くの社会課題を解決する潜在的な力があると考えており、スタートアップへの期待も大きい。

 あらゆる人が金融サービスの恩恵を受けられる「金融包摂(Financial Inclusion)」は代表的な例であり、世界最大のチャレンジャーバンクと言われるブラジルのヌーバンク(Nubank)や中国の微衆銀行(We Bank)などをみると、従来は金融サービスを利用できなかった低所得層に銀行サービスへのアクセスを提供し、急速な成長を遂げている。

 さらに、デジタル化によるシステム社会が進展し、最低限所得保障の一種であるベーシックインカム(Universal Basic Income)のような概念が出現することによって、労働の意味が変化して、熱意を持てる仕事の重要性は増すだろう。

 これまでのように生活の糧を得ることが目的ではなく、熱意や目的に基づいて仕事を選択することにもなることから、社会課題解決を目指して起業するスタートアップも増えるかも知れない。

【次ページ】ブレット・キング氏が想定する未来の「4つのシナリオ」とは
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