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  • 2024/07/23 掲載

マイクロソフトに聞く、生成AIによる「金融大変革」のシナリオ、金融はどう変わるのか?

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「Microsoft Copilot」や「Azure OpenAI Service」はじめ、生成AIサービスの開発を加速させているマイクロソフト。そんな同社が注力しているのが、生成AIを使った金融機関の支援だ。生成AIは金融機関にどのようなインパクトをもたらすのか。マイクロソフトが描く金融変革のシナリオとは何か。日本マイクロソフト 業務執行役員 金融サービス事業本部 銀行・証券営業本部長 金子 暁 氏に話を聞いた。
構成:ビジネス+IT編集部 松尾慎司、塩谷晴香、執筆:井上健語、撮影:大参久人

構成:ビジネス+IT編集部 松尾慎司、塩谷晴香、執筆:井上健語、撮影:大参久人

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日本マイクロソフト
業務執行役員 金融サービス事業本部 銀行・証券営業本部長
金子 暁氏

生成AIの驚異的な進化は「産業革命」に匹敵するレベルに

 生成AIは驚くべきスピードで進化しています。産業革命に匹敵する技術革新が短いタームで次々に起きており、生成AIもその1つだと捉えています。OpenAIが5月にリリースしたGPT-4oも、そのインパクトはとても大きかったのではないでしょうか。

 従来、人間とコンピューターのインターフェースは、基本的にキーボードでした。しかし、GPT-4oはマルチモーダル化、リアルタイム化が進み、テキストや音声、画像など複数の情報を同時に処理できるようになりました。つまり、キーボードがなくてもコンピューターとやり取りできる世界が、すでに実現したのです。

 たとえば、ホームパーティーを開くとき、ECサイトにアクセスして、必要な食材や商品を選んで購入の手続きをするでしょう。それが今後は、「今日、ホームパーティーがあるんだけれど、夏らしい料理とワインが飲みたい」と口頭で伝えるだけで、おすすめの商品が画像や音声、テキストで提案される世界になるのです。

 これだけユーザー体験が変われば、マーケティングの手法も変わりますし、売り手側のメッセージアウトの方法も、さらには商品の作り方さえも変わるかもしれません。

 金融の世界も同様です。たとえば、チャットや会話で顧客情報を調べて生成AIに融資稟議書を自動作成させたり、顧客の証券口座を調べてポートフォリオを確認し、最適な株を自動的に発注したりすることも可能になるでしょう。

また、銀行口座の残高やカードの利用履歴を確認するときも、わざわざWebサイトにアクセスしてログインする必要もなくなるかもしれません。

 このように、生成AIが金融の世界を大きく変革するのは確実です。だからこそ我々は、その世界をお客さまとともに作っていきたいと考えているのです。

生成AIが金融機関に与える2大インパクト

 生成AIが金融機関に与える影響は、大きく2つあると考えています。1つは「革新的な顧客体験」です。これは、先ほど説明したように、キーボードなしでコンピューターとやり取りできる世界を意味しています。

 2つ目が「業務効率の向上」です。将来、日本の労働人口は確実に減っていきます。したがって、効率化しないという選択肢はありえません。たとえば、コールセンターの業務を考えたとき、労働人口が減るということは日本語を話す人が減るということです。生成AIは、この問題を解決するために不可欠なテクノロジーです。

 ここで特に注目したいのは、「顧客体験」です。今、政府は「資産運用立国」実現への取り組みを進めており、新NISAもスタートしました。つまり、今まで金融商品にあまり触れてこなかった方々が、自分たちの生活や人生に金融商品を組み入れる動きが始まっています。そこで重要になるのが、金融商品へのハードルを下げることであり、そこで生成AIが活用できるのではないでしょうか。

 たとえば、投資信託の運用報告書を初心者にも分かりやすく説明する。あるいは、金融の専門用語についてアバターに聞いたら、優しく教えてくれる。このように、金融商品に触れて、学んで、理解を深められるサービスを、生成AIを使えば開発できると考えています。

 さらに、生成AIは顧客に相対する営業担当者やファイナンシャルプランナーなどの個人の力も拡張できます。人間の能力には限界があり、1人ですべての金融商品に精通することは容易ではありません。しかし、生成AIなら実現可能です。

画像
Microsoft Copilotで新しいユーザー体験を提供
(出典:日本マイクロソフト)

 したがって、情報の提供を生成AIに任せることで、人間はお客さまとのコミュニケーションを通じて安心感や信頼感を醸成するような、人間にしかできない業務にフォーカスできるようになるのです。

時代はDXからAXへ、求められる人材育成とは

 今後、金融も含めて生成AIを社会に実装していくうえで、重要な取り組みが4つあると考えています。

 1つ目は「テーマ設定」です。これは、生成AIにできること/できないことを正しく理解して、生成AIに適切な役割を与えることです。生成AIは決して万能ではありません。だからこそ、どこで生成AIを活用するのかを見極めることはとても重要です。

 2つ目は「人材」です。生成AIをどこで活用するにしても、適切な人材がいなければ、実装してサービスを拡大していくことは不可能です。

 3つ目が「ガバナンス」です。つまり、どうやってAIのリスクをコントロールして、使っていくのかということです。

 そして4つ目が「データ」です。生成AIを業務の効率化で活用する場合も、サービスとしてお客さまに提供する場合でも、土台となるデータの品質が極めて重要です。

 4つの取り組みについて紹介しましたが、ここでは、あえて「人材」の重要性を強調しておきたいと思います。生成AI周辺のテクノロジーは急速に進化しています。我々でさえ、マルチモーダル化はもう少し先だと思っていたら、GPT-4oによってそれが現実になったことに驚いているのです。

 しかし、優秀な人材がいなければ、その変化に気づくことすらできません。実際に、金融機関のキーパーソンの方々は、こうした変化にとても敏感です。こうしたお客さまから「ぜひこの技術を試したい」とお話をいただくことは、決して少なくありません。

 現在、DXのためにデジタル人材の育成に取り組んでいる企業は多いと思います。しかし、すでにDXの時代は終了し、AX(AIトランスフォーメーション)の時代へと移行しつつあります。これからは、デジタルはもちろん、AIに強い人材も必要になると我々は考えています。 【次ページ】日本企業に約4,400億円の投資、AIで変わる金融の未来
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