EC事業者必見、「昨日までの売上を仕入れや広告に」キャッシュフロー劇的改善の方法
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コロナ禍でEC化に踏み切る事業者が増加
GMOペイメントゲートウェイの連結会社であるGMOイプシロンはEC事業者に多様な決済サービスの提供を行っている決済代行会社である。加盟しているECショップは3万社以上にのぼる(2020年12月末現在)。GMOペイメントゲートウェイは大手企業と中堅企業、GMOイプシロンはロングテール企業と個人事業主中心に決済サービスを提供する「棲み分け」がされている。GMOイプシロンの決済サービス全体の現状について田口氏はこう解説する。「2020年4月以降、コロナ禍の影響により対面の店舗やレストランを展開していた事業者がEC化に踏み切るケースが増え、加盟店さまの数も増加しました。特に2020年4~6月は通常の約2倍の申し込みがありました。申し込みのしやすさ、料金のわかりやすさ、Webでの完結といった弊社サービスの強みを、EC事業は初めてというお客さまにも実感していただけたのではないでしょうか」(田口氏)
コロナ禍にあって、「少しでも売上を増やしたい」「なるべく早くEC化を実現したい」と考えるロングテール企業や個人事業主のニーズとGMOイプシロンの提供するサービスが合致したのではないかと田口氏は分析している。
GMOイプシロンのサービスのラインナップに2020年10月から新たに加わったのが売上連動型Visaビジネスカード「Cycle byGMO」である。「昨日までの売上を今日使える」というキャッチフレーズにこのサービスの先進性が象徴される。
通常では決済の売上がEC事業者の銀行口座に入金されるまでにはタイムラグがある。締め日から短くて15日、長い場合は50日というのが一般的だ。しかし「Cycle byGMO」は売上を翌日に使うことができる、日本初の画期的なフィンテックサービスである。この早さのメリットは事業主の利益に直結する可能性が大きいと田口氏は説明する。
「ヤフー、Facebookなどの広告は小規模なものに関しては、カードでの支払いが基本です。『Cycle byGMO』をご利用いただくことで、これら広告出稿や急な仕入れなどの資金需要への柔軟な対応が可能になります。その結果、売上向上機会の損失を防ぐことが期待でき、お客さまのキャッシュフローサイクルの最適化を実現できると考えています」(田口氏)
もう1つの大きなメリットとなっているのは売上金額に応じて、ビジネスカードでの使用できる金額が増えていく仕組みだ。
「個人事業主がクレジットカードを作って、ビジネスに利用する場合には個人の与信審査があり、限度額が設定されます。弊社のサービスは前日までの売上金をチャージして使うので、ECでの売上が伸びれば伸びるほど、利用可能額も増えていく仕組みになっています。積極的な投資が可能になり、売上向上の施策の可能性が広がるのです」(田口氏)
この他にも通常のクレジットカードのような与信審査がないこと(同社独自の審査システムはある)、年会費が無料であり、むしろキャッシュバックサービスがあることなど、さまざまなメリットのあるサービスが付加されている。
画期的なフィンテックサービスが登場したワケ
売上連動型Visaビジネスカード「Cycle byGMO」のサービスはどのようにして誕生したのか、Visaの「Fintechファストトラックプログラム」との連携がどのようなプロセスで進行したのか、田口氏はこう説明する。「既存のお客さまにヒヤリングしたことが売上連動型ビジネスカード誕生の1つのきっかけになりました。“EC事業に直結したビジネスカードがあったらいいよね”という要望をいただき、弊社だからこそのサービスとして提供できることがあるのではないかと考えたのです。お客さまの満足度を高めることと弊社の流通金額を増やしていくこと、この2つの目標が起点になりました」(田口氏)
日本では行われていないサービスを提供する上で参考にしたのは、海外ですでに活用されている決済サービスだったと田口氏は語る。
「売上連動型ビジネスカードのヒントは米国での同様のサービスでした。ただし、私の認識する限りでは、日本国内において、このような売上連動型ビジネスカードのサービスを実施しているところはありません。未開拓の分野という点に大きな可能性があると考えました」(田口氏)
米国のフィンテック企業が日本国内で売上連動型ビジネスカードのサービスを行っていないのは、それだけこのサービスを展開するハードルが高いからだろう。日本独自の法規制への対応、高度なセキュリティ・システムの運用など、考慮しなければならない項目が数多く存在している。
「ビジネスカードのサービス展開を弊社単独で行うのは難しいこと、タッグを組む相手が必要であることは計画を立ち上げた当初から認識していました。パートナーの選定では数社を検討しました。選定基準で重要視したのはシステム面でAPI(アプリケーションプログラミングインタフェース)に対応していることです。弊社が開発するにあたって重視したのはスピード、柔軟性、開発のしやすさであり、開発スピードという点でAPIが必須の条件だったのです」(田口氏)
さらに、売上連動型Visaビジネスカード「Cycle byGMO」の開発で大きな役割を果たしたのがVisaの「Fintechファストトラックプログラム」である。
複雑なシステムと高度なセキュリティ・システムへの対応、運用フローなど、Visaの保有する膨大な知見を効果的に活用することで、迅速かつ簡潔な機能の構築が可能になり、開発が円滑に進んだのだ。田口氏は一連の流れをこう説明する。
「『Fintechファストトラックプログラム』の活用に関しては、今回GMOイプシロンがビジネスカード発行事業を開始することに加え、連結会社であるGMOペイメントゲートウェイおよび、グループ内の幅広いフィンテック事業での協業を検討している中で、プログラムパートナーとして迎えていただくことになりました」(田口氏)
「Cycle byGMO」のサービス展開する上でVisaの有するブランド力が重要な要素になったと田口氏は強調する。
「売上連動型ビジネスカードを発行する上でVisaの持っている国際的なブランド力を活用させていただくのはとても重要なことでした。加盟店さまがビジネスカードを使う幅が広がり、利便性の大幅な向上が期待できるからです。弊社としてもB2Bサービスの認知がさほど広まっていない状況があり、Visaと組みさまざまな体験を積むことで、決済代行会社としての幅を広げていきたいとの希望がありました」(田口氏)
サービスの申し込みは想定の倍、今後はどんな進化を遂げるのか
「Fintechファストトラックプログラム」との連携によって、売上連動型ビジネスカードのサービスがスタートしたのは2020年10月だった。数か月を経過した段階で、「Cycle byGMO」を田口氏はどのように評価しているのだろうか。「サービスの申し込みは想定の倍くらい来ている状況です。反響も上々で“自社でやっているサービスにすぐに直結できるところが良い”といった声をいただいています。想定と異なる部分もありました。交通費、出張費、備品購入などの使用用途もあるのではと考えていたのですが、実際には広告費用と仕入れ費用としてご活用いただくことが中心で、まさに“攻めの経営”にいかされていることがわかってきました」(田口氏)
「Cycle byGMO」のサービスはまだファースト・フェーズであると田口氏は語る。
「『Cycle byGMO』のサービス展開はこれからが本番だと考えています。まずはさらに認知を広めていく作業が必要になります。なぜならば、このサービスの良さは実際に使ってもらうことでより明確に理解してもらえるものだからです。利用促進のプロモーションを積極的に行っていく予定です」(田口氏)
先進的なサービスであるからこそ、スタートして見えてきた課題もあるとのことだ。「Cycle byGMO」は完成されたサービスではなく、進化し続けているサービスという位置づけにあると田口氏は強調する。
「新しいサービスなので、実際に動かしてみないと何が正解か判断しきれない面もあります。サービスをスタートして数か月経過して、お客さまのおおよその傾向も見えてきましたし、課題も出てきています。スピード感を持った機能改善、利便性の向上といった観点でのさらなる機能追加を早いタイミングで行っていこうと考えています。将来的には“ビジネスカード『Cycle byGMO』があるからGMOイプシロンの決済サービスに申し込んだ”といっていただけるように、さらなる認知拡大を目指していきます」(田口氏)
田口氏がさらに「Fintechファストトラックプログラム」の活用が「Cycle byGMO」のサービスだけで完結するものではないことを付け加えた。海外の企業が「Fintechファストトラックプログラム」と連携して行っているサービスで、日本国内で展開されていないものが数多くあり、新たなビジネスチャンスはまだまだたくさん転がっているのではないかと指摘しているのだ。連携がさらなる連携へとつながることで、今後、新たなサービスが生まれる可能性はさらに大きくなっていくだろう。