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- 2022/03/14 掲載
日本と韓国はどちらが「豊かな」国なのか? 重要な意味を持つパートタイム労働者比率
連載:野口悠紀雄のデジタルイノベーションの本質
指標によって結果が違う 日本と韓国の豊かさが接近している
OECD(経済協力開発機構)のデータによれば、2020年の平均賃金は、日本が3万8,514ドル、韓国が4万1,960ドルで、韓国のほうが高い(2020年購買力平価)。しかし、国民1人あたりGDPでは、日本4万,88ドル、韓国3万1,638ドルで、日本のほうが高い(市場為替レートでの評価。IMFによる)。
これらの指標は同じようなものではあるが、実は違う内容のものである。このため、どの指標を見るかによって結果が違うのだ。
これまでは、経済的な豊かさを表わすどのような指標でも、日本は韓国より高かった。しかし、韓国の成長率が高いので、ほぼ同じような水準になってきた。このため、どの指標を見るかによって結果が違うのだ。
では、一体、日本と韓国のどちらが豊かなのか?
生産性が高く少数精鋭なら、1人あたりGDPは低い場合がある
この問題を検討する手がかりは、「生産性」の数字にある。これは、GDPを就業者数で割ったものだ。OECDの資料で生産性を見ると、韓国が日本より高くなっている。GDPと賃金支払総額とは、異なるものである。まず、GDPの中には、賃金に分配されるもの以外に、営業所得などがある。さらに、誰の所得にもならない「固定資本減耗」という項目がある。
これらがどのくらいの比率になっているかによって、GDPが同じでも、賃金支払総額は異なりうる。
しかし、生産性と1人あたりGDPでは、どちらも分子はGDPで同じだ。違いは分母だけである。1人あたりGDPでは人口数、それに対して「生産性」では、就業者が分母になっている。
国民全体の中でより少ない比率の人がより高い賃金で働けば、人口1人あたりのGDPが少なくなることがある。
数値例を示そう。
2つの国、J国とK国があるとしよう。
人口はいずれも10人。J国では就業者1人あたりの付加価値は20とする。付加価値の半分が賃金に分配されるとすれば、就業者1人あたりの賃金は10になる。
K国では、就業者1人あたりの付加価値は26、賃金は13だとする(これらは、同一の通貨、たとえばドルで表示された額とする)。
J国では、10人全員が働く。GDP(付加価値の総額)は、20×10=200であり、1人あたりGDPは20だ。
これに対して、K国では、7人が働くとする。GDPの総額は、26×7=182、国民1人あたりGDPは18.2だ。
この場合には、賃金が高いK国のほうが、1人あたりGDPで見れば低くなる。
つまり、K国は、「高い生産性の人が少数精鋭で働いている国」だということになる。
就業者1人あたり付加価値が多いという意味で「高生産性」であり、人口のうち就業者の比率が低いという意味で「少数精鋭」なのである。
【次ページ】パートタイムを考慮したモデルが必要
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