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  • 2021/12/06 掲載

なぜ「女性労働力率向上」や「移民受け入れ」が重要か? 日本の成長率を上げる3つの策

連載:野口悠紀雄のデジタルイノベーションの本質

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日本の成長率が低い理由として、出生力の低下という人口要因が強調されることが多い。確かにこれは重要な要因だ。しかし、さまざまな施策によって克服できないものではない。とりわけ重要なのは、「女性の労働力率の向上」「移民の受け入れ」「高等教育の充実」だ。その理由を説明していこう。

執筆:野口 悠紀雄

執筆:野口 悠紀雄

1940年、東京に生まれる。 1963年、東京大学工学部卒業。 1964年、大蔵省入省。 1972年、エール大学Ph.D.(経済学博士号)を取得。 一橋大学教授、東京大学教授(先端経済工学研究センター長)、スタンフォード大学客員教授、早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授などを歴任。一橋大学名誉教授。
noteアカウント:https://note.com/yukionoguchi
Twitterアカウント:@yukionoguchi10
野口ホームページ:https://www.noguchi.co.jp/

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「女性の労働力率」や「移民受け入れ」がなぜ成長率と関係するのか?
(Photo/Getty Images)

日本の成長率が著しく低いため、賃金水準で韓国に抜かれた

 日本の賃金が低いことが問題になっている。

 米国との間では、2倍近い差が生じてしまった。最近では、韓国が賃金の水準で日本を抜きつつある。

 この背景には、経済成長率の格差がある。米国も韓国も高い成長率を続けている。それに対して、日本は長期停滞に陥っている。

 2010年から2020年にかけて1人あたり実質GDPがどの程度増えたかを見ると、米国が10.3%、韓国が23.2%だったのに対して、日本は5.0%でしかなかった(IMFのデータによる)。

 なぜこのような成長率格差が生じるのだろうか?

 経済成長を規定する要因にはさまざまなものがある。それらの中で、労働の量と質は最も重要な要因だ。以下では、この問題について、日米韓の比較を行なうこととしよう。

人口成長率が低いと、1人あたりGDPの成長率も低くなる

 まず人口の量的な側面について考える。

 人口成長率が高い場合に、GDPの成長率が高くなるのは当然のことだ。それだけでなく、1人あたりGDPの成長率も高くなるのが普通だ。

画像
日本の成長率と出生率が高まらない中、日本に成長の余地はあるのか?
(Photo/Getty Images)

 人口の成長率が高いと、総人口の中での生産年齢人口(15~65歳人口)の比率が高くなる。そして、退職後人口である高齢者の比率が低くなる。このために、1人あたりのGDP成長率が高くなるのである。これは、「人口ボーナス」と呼ばれる現象だ。日本でも、高度成長期のときには、そのような人口構成だった。

 しかし、今では、出生率が低下した結果、生産年齢人口の比率が低下し、その半分で高齢者人口の比率が高くなっている。これは、「人口オーナス」と呼ばれる現象だ。

 日本の経済成長率の低下の大きな要因がここにあることは間違いない。

 2020年の状況を見ると、下表のとおりだ。

  総人口の年平均増減率(%) 65歳以上人口(%)
日本 -0.2 28.9
韓国 0.3 15.8
米国 0.7 16.6

 米国の出生率は高いため、人口成長率が高い。また、65歳以上人口の比率も低い。それに対して、日本は人口成長率がマイナスになっており、65歳以上人口の比率が著しく高い。米国の経済成長率が高く、日本の成長率が低い大きな原因がここにあることは間違いない。

 韓国の人口成長率は、日本と米国の中間の状態だ。65歳以上人口の比率は、米国と大差がない。高齢者という重荷は、日本に比べると大分低いということができる。

出生率は高められないが、労働力率は高められる

 以上の状況を改善するため、日本の出生率を高めるべきだという議論がしばらく前に行われたことがある。

 しかし、仮に出生率を高めることができたとしても、それで経済条件がすぐに好転するわけではない。なぜなら、当然のことであるが、生まれた人間が生産年齢口に達するためには、15年程度のタイムラグがあるからだ。

 したがって、出生率を高めても、従属人口が増えることとなってしまい、経済成長には重荷になってしまう。もはや日本にとって、出生率を高めることは、有効な成長戦略にはなり得ない。

 ただし、日本の場合にも、労働力率を高めることは可能だ。

 まず、女性と高齢者の労働力率を高めることが考えられる。特に重要なのは、女性の労働力率を高めることだ。

 日本の女性の労働力率(2019年における15歳以上の女性の労働力人口の比率)は、53.3%である。アジア諸国に比べれば高いとはいうものの、ヨーロッパ諸国に比べると低い。なお、米国は、57.4%、韓国は53.9%だ。

【次ページ】移民を受入れるにはタイムリミットがある

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