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- 2021/09/22 掲載
「サーバから離れろ」クラウドの進化が「資産運用フィンテック」にもたらした変革
「資産運用の領域のチャレンジ」におけるクラウドの役割
資産運用(Asset Management)ビジネスが大きく変革しつつある。きっかけの1つとなったのはクラウドの進化だろう。その旗手としてのアマゾン ウェブ サービス(AWS)はセキュリティの確保、マネージドサービスによる運用負荷の軽減などが挙げられる。「資産運用をバリアフリーに」というミッションを掲げている会社・FOLIOでは2021年1月に金融機関向けに、ロボアドバイザーとラップ運用サービスを提供するプラットフォーム・4RAPをローンチしている。この4RAPでもAWSが採用されているという。FOLIOのプラットフォーム事業本部本部長である高山智史氏はこう語る。
「4RAPをtoB向けに提供しているのですが、マルチテナントを取り扱うことを踏まえて、AWSが提供しているAmazon EKS(Elastic Kubernetes Service)を採用しました。横展開していく時の運用コストを考えると、どうしてもKubernetes(K8s)とEKSが必須だろうとの結論に至って、採用した経緯があります。EKSを使えば、セキュリティや権限の管理もでき、フルマネージドでAWSさんにお任せできるので、助かっています」(高山氏)
「金融がもっと暮らしに寄り添う世の中にする」というビジョンを掲げているFinatextでも基幹システムをSaaS型で提供する上で、AWSを採用しているとのことだ。Finatextのリードエンジニアの田島悟史氏はこう説明する。
「私たちが目指しているのはニッチな需要を満たす金融サービスがいくつもある状態を作ることです。エンドユーザーそれぞれにとっての最適な金融サービスがいくつも立ち上げられる状態を目指しています。しかしFinatextが独力で実現するのは難しいので、他の金融機関や非金融機関をパートナーとして、金融サービスを立ち上げていきたいのです。基幹システムをSaaS型で提供する場合には、それぞれのサービスの独立が必須となります。しかしオンプレミスで実現しようとすると、環境を整備するコストと労力が莫大になります。AWSを使えば、簡単に独立した環境を作ることができるのです」(田島氏)
AWSを採用することで、セキュリティ面やコンプライアンス面での企業側の責任範囲が小さくなっていく。運用工数を削減することができ、本来やるべき作業に集中することができるのだ。AWSが果たしている役割は大きいといえるだろう。
サーバレス化が広がる中で見えてきた新たな課題
マネーツリーは、パーソナルデータプラットフォームを提供している企業だ。AWS LambdaとHerokuのホスティングサーバを利用することで、サーバレス化が実現したことが大きかったと語るのはマネーツリーの最高プラットフォーム責任者・創業者であるマーク・マクダッド氏である。「共同創業者のロス・シャロットの言葉に『サーバから離れろ』というものがあります。自社でサーバを管理しなくていいという考えが基本としてあるのです。サーバを管理する時間があるならば、その時間をサービス系のアプリケーション開発に作っていこうということです。マネーツリーが展開しているのは銀行と接続する分野のサービスなのですが、コードを入れると、あとはすべてAWS Lambdaが実行してくれます。これにより、コンプライアンス対応もやりやすくなりました」(マーク氏)
2021年8月8日時点でマネーツリーが提供するMoneytreeおよびMoneytree LINKは、2489種類の金融機関およびサービスに対応している。各社の仕様変更に迅速に対応できるのも、AWS Lambda ファンクションのサービスを使っているからなのだという。
金融機関のクラウド活用は増えたが、まだまだ課題もあると、Finatextの田島氏は指摘する。
「パートナーから提供されるセキュリティチェックシートで、クラウドを使うことを前提としていないものは減ってきています。ファイル名にもクラウドサービス利用チェックリストのようなものがあるのです。ただし不足していると感じるのはクラウド上に第三者がプラットフォームを立てて、サービスを利用するという前提がないこと。私たちはAWSを利用してプラットフォーム基幹システムを構築して、SaaS型で提供しているのですが、そういう環境を加味したチェックシートは見たことがありません」(田島氏)
つまりSaaSサービスの提供を受ける側の金融機関やフィンテック企業も認識を変えていく必要があるということなのだ。さらに田島氏はこう続ける。
「金融機関と連携する場合に、システムに関するデューデリジェンスが不可欠となります。現在はエクセルで書かれたチェックシートが送られてきて、こちらでチェックするのが一般的なやり方ですが、これは決して素晴らしいやり方とはいえません。必要十分な情報を提供できない可能性があるからです。我々はクラウドを使っているのだから、参照型のAPIを開放して、すべてのリソースが暗号化されているといった情報を検証可能な状態にすることはできるので、そうしたシステム面でデューデリジェンスの自動化や可視化ができるとうれしいと感じています」(田島氏)
【次ページ】物理的なデータ保護から論理的なデータ保護へ
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