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- 2019/08/16 掲載
AIを使えば、キャッシュレス決済での「不正利用」を防ぐことができるのか
最近のAIブームの背景と正しい理解の必要性
インターネットが生活やビジネスの中で急速に身近なものとなり、利用できるデータが年々増加するなか、データは企業にとって重要な経営資源となり、データを使った新しいサービス開発や競争が起こっている。第1次AIブーム(1950年代~)、第2次AIブーム(1980~90年代)では、結果としてビジネス的には大きな広がりは見られなかったものの、今回の第3次AIブームではAI技術が社会的にも影響力を持ち始めていることが明らかになった。
このブームの火付け役になったのは、従来からあったニューラルネットワークという機械学習手法を応用した“ディープラーニング手法(深層学習)”を用いることで、“画像(動画を含む)や音声データ”の認識の精度が大きく向上したことだ。
それまでにも(画像や音声データと対比する意味での)従来の数字データを使った機械学習モデルはすでにさまざまな領域で活用されていたが、画像や音声認識の領域では十分な認識精度を得ることができていなかった。そうした中でディープラーニングによって、活用が進んでいなかった画像や音声データを使った業務改善や新しいサービスが注目されている。
逆に言うと、従来の数字データの取り扱いにおいては以前より機械学習手法が活用されてきており、このタイミングで技術に大きな進展があった訳ではないが、最近のAIブームの流れの中で注目を浴びたことで過度な期待が寄せられている傾向もある。
また、最近注目されているディープラーニングも、従来から利用されていた他の機械学習手法も“過去のデータに基づいて将来を予測する”というアプローチであり、過去に起こった事象(学習データ)に大きく依存しているため、本当の意味での将来予測や意思決定をしている訳ではない。
そのような意味で、現在の技術の延長線上にAIが人の知性を上回ると言われるシンギュラリティ(技術的特異点)が来るというのは現実的ではないとも言える。
いずれにしても、単にAI技術を導入するだけでメリットが得られる訳ではないため、AI導入によって業務プロセスを自動化したり、新しい商品やサービスの開発が必要であることは、過去にも経験している他の新しいテクノロジーの活用と同様と言える。
むしろAIの場合は既製品を導入するだけで済むわけではなく、入力データの用意から導入後のメンテナンスまでを想定したROI(投資対効果)の検証がますます求められる。
キャッシュレス決済で不正が増加している要因
昨年よりQRコード決済による大規模な不正利用の発生に注目が集まっているが、その背景にはクレジットカードの不正利用の増加が大きく影響している。2000年代の後半に収束するかに見えたクレジットカードの不正利用が、実は数年前から再び増加に転じており、業界内では問題になっていた。主な要因はインターネット取引の増加で“番号盗用(他人のクレジットカード情報を悪用した)による非対面取引”の増加によるものだ。
また、そういったクレジットカードの不正利用の増加は、“ダークウェブ”を抜きに語ることはできない。ダークウェブとは、一般的なインターネット(=サーフェイスウェブ)ではなく、特定のアカウントしか入れないディープウェブやダークネットなどの総称で、そこではさまざまな経路で窃取されたカード情報が日々売買されている。
特殊なソフトウエアを使うことで、匿名かつ経由履歴がわからない形でアクセスできるため、カード情報だけでなく、麻薬などの売買にも使われていると言われている。
カード情報を専門に売買する闇サイトは200以上存在すると言われ、情報の売買の支払手段には仮想通貨も使われている。
カード番号や有効期限、氏名、セキュリティコード、3Dセキュアのパスワードまで売りに出されているサイトもあり、比較的高額な限度額が設定されていることが多い日本のカード会社の情報は高値で売れているという話もある。
また、カード発行会社側で使われている不正検知ツールやアタックしているデバイスを匿名化する方法などのノウハウや、不正に購入したカード情報が実際に使えるかどうかをチェックするサービスなども提供されている。
そのような理由から2018年に改正割賦販売法が施行され、カード会社や加盟店でのセキュリティ対策の強化が求められていたなかで、最近のQRコード決済での大規模な不正利用が発覚し社会的にも大きな注目を集めることになっている。
コード決済は新たなキャッシュレス決済手段と考えられているが、コード決済での不正利用の多くのケースで“不正流出したクレジットカード情報”が使われていることからも、不正対策については従来のクレジットカードと同様の対策が必要と考えられており、業界団体によるガイドラインなども検討されている。
【次ページ】ビッグデータやAIによる不正対策への期待と現実
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