- 2009/04/30 掲載
ニコニコ動画の人気ゲーム実況者たちに聞く-大ブームの「ゲーム実況動画」ってなんですか?
「実況野郎文芸部(B-TEAM)」
(出席者)
ゲーム実況プレイヤー、実況野郎B-TEAMメンバー/Revin、たろちん、加藤(レイズナ)、ルーツ(あぺるご)
倍々ゲームで増えていった
――ずいぶん盛り上がってるそうなんですが、そもそも「ゲーム実況」ってなんですか?たろちん■一言でいうと、しゃべりながらゲームをプレイしてる動画ですね。
――それを動画共有サイトの「ニコニコ動画」で発表しているひとが、いま5000人以上いると。とすると、このジャンルを視聴しているファンはもっとたくさんいるわけですよね。
ルーツ■なんだか急激に増えましたね。
Revin■データを調べてきました。実況動画って、ひとつでは完結せず、シリーズとしてpartを重ねていくケースが多いんです。なので、ユーザーが検索しやすいようにシリーズ第一回に「実況プレイpart1リンク」という固定タグをつける習わしがある。
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――自治ルールができていると。
Revin■そうです。この数を追っていくと実況動画のだいたいの動向が把握できそうなんで、1ヶ月ごとに遡って調べてきました(ケータイのメモを見ながら)。2007年4月に投稿された「実況プレイpart1リンク」はひと月で7件。少しずつ増えていって、2008年4月で100件を超える。
たろちん■僕らが始めたのもこのへん。僕は、2008年の3月、Revinさんもそのころ。
ルーツ■僕は2月だった。加藤はもっと早いね。
加藤■うん、2007年の10月。友人のしんすけが企画した「ゆとりの友人に無理やりFF4(大ヒットしたゲーム『ファイナルファンタジーIV』の略称)実況させてみた」の最初のほうに出ています。
Revin■2007年の10月は……23件。
たろちん■この頃は、全部の実況動画を見ようと思えば見ることができた。
Revin■2008年の年8月で500件、12月に1000件、どんどん加速して、2009年の1月からはひと月の投稿数が1500件を越している。で、3月現在の「実況プレイpart1リンク」の累計が10665件。
――倍々ゲームで増えていって、もはや、全部の実況動画を見るのは不可能と。ここにいる4人は早くから投稿していた、いわばパイオニアなんですね。
Revin■たかだか1年しかたってないのに、もう古参扱いされてますよ(笑)。
コメント機能の不思議
――ブームが深まっていくスピードにはびっくりしました。はじめたきっかけはなんだったんですか?ルーツ■僕は、さっき加藤の言った「ゆとりFF4」です。これは面白い、僕もやってみたいなあと思って。
たろちん■僕もそんな感じ。「ゆとりFF4」を見て始めた実況者はすごく多いと思う。
Revin■僕も「ゆとりFF4」を企画したしんすけの別のシリーズに触発された。
加藤■僕はしんすけに誘われて始めたんだけど、ニコニコ動画の前に、2ちゃんねるを使って、内輪向けにゲームの配信をしてた。そういう流れはありました。
――そのころから「ゲーム実況」って言ってたんですか?
加藤■どうだろう。「配信」って呼んでましたね。基本的に生でやるもので、録画したものをアップするとかはなかった。録画するようになってから、実況って言うようになったのかも。
たろちん■よく考えるとヘンだよね、ふつう逆。
Revin■濱野智史さんが『アーキテクチャの生態系』という本で言っている「疑似同期」ってことばがあって、ニコニコ動画の特性をうまく説明してる。時系列はランダムなんだけど、任意のタイミングでそれぞれがコメントを差し込むことができるという機能によって、視聴者はその動画をリアルタイムのように享受することができると。その感覚はゲーム実況とすごく相性がよかったのかもしれない。他のユーザーの反応をコメントとして見ることができる、その一体感も楽しい。
――コメント機能ってのは、不思議な文化ですよね。「動画にコメントが付けられる」というただそれだけのものなのに、人間の感覚に揺さぶりをかけてくる。
加藤■ニコニコ動画に慣れてしまうと、たとえばテレビ観てても、右からコメント流れてこないと、なんか物足りないなあって思ったりする(笑)。
Revin■日常生活でもたまにそんな感覚になることがあるね。何か発言をした時に、流れてくる文字の中に立っていてもおかしくないなあっていうような。
ルーツ■『マトリックス』か『ジョジョの奇妙な冒険』か。
Revin■どんどんメタ化もしていってて。実況者にコメントする、そのコメントの流れが面白いと、そのコメントにコメントが重なってく――そういうふうにどんどん次元があがって、不思議な空間が形成されていく。
『水曜どうでしょう』の影響
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たろちん■実況をやる側としては、敷居の低さはあると思う。実況動画が登場する前から「ゲームプレイ動画」ってのはあって、それは声は入れず、スーパープレイを見せる動画。ゲームのうまいひとじゃないと成立たない。だけど、実況動画は、ヘタクソでもなんかしゃべってれば成立するから、すごくラクなんじゃないですかね。
Revin■簡単に人気者になれるように見える。視聴する側にはいろんな動機があるよね、好みの声の実況者を探すひともおるし。
たろちん■単純に、バカなリアクションがみたいとか、あるいは解説がききたいとか。話し相手がいなくてさびしいからってひともいる。
ルーツ■僕は、マンガ描いてる時とかに、作業用BGMとして流してます。集中して見る必要はないですよ。
たろちん■おおもとを探っていくと、『ゲームセンターCX』(往年の人気ゲームにお笑い芸人・有野晋哉が挑戦する人気番組)の功績は大きいと思う。他人が必死にゲームをしてるのを見るって面白いんだなあってあれで気づいた。あと『水曜どうでしょう』。北海道のローカル局が予算のなさを逆手にとったゆるーいドキュメンタリー番組をつくって、これがヒットした。
テレビって基本的に、見せ物としてプロが仕切ってつくってるものですけど、そういう「つくり込んだ」方向に辟易してる感じってあったと思うんです。そこを「水曜どうでしょう」は、敢えて素人くささというか、僕らが友だち同士でもふだんやってて笑ってるような自然な面白さを、さっと切り出して見せてくれた。そういう空気が好きだなあと思うひとがけっこういたから、実況動画も盛り上がってきたんじゃないかと、考察しております。
ルーツ■たろちんさん、語りますねえ、僕なんか、聞き惚れてましたよおー(笑)。
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