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2017年09月07日

連載:クルマの未来

EV化へ一気に舵を切って大丈夫? 各国で「禁止」されるエンジン車に未来はあるか

中国に次いでフランス、イギリス、ドイツがエンジン車の販売を将来的に「禁止」しようという動きが出ている。環境問題を考えれば当然とも言えるが、果たしてそう簡単にことは進むのか疑問視する向きもある(筆者もその一人である)。EVは本当にクリーンなモビリティなのか、エンジンに未来はないのだろうか。また燃料電池車は、これからどのように発展していく可能性があるのか。このところ自動車メーカー間の提携話なども再び世間を賑わすようになってきた。この動乱の自動車戦国期をパワートレーンに焦点を当てて見てみた。

執筆:自動車ジャーナリスト 根 英幸

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規制が進むエンジン車、本当に未来はないのか? EVや燃料電池車は本当に環境に良いのか?

(©pogonici - Fotolia)



中国と欧州でエンジン車への販売規制が大幅に強化される動き

 中国は、上海などの都市部で「二輪は電動スクーターのみ走行可」とするなど、パーソナルモビリティのEV化に関してはむしろ進んでいる部分もある。しかし、肝心の電力供給においては未だに石炭火力に頼っており、その効率も我が国の火力発電所に比べるとかなり低いというデータもある。つまり、本当に大気汚染対策となっているのか、その効果は計りかねると言うのが現状なのである。

 そのうえで乗用車の全面EV化である。ハイブリッドは排気ガスを出すことから、エコカーとしては認められなくなるという。これは、これまでハイブリッドカーの高い技術力で市場をリードしてきたトヨタにとって、厳しい状況になると言えそうだ。

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(クリックで拡大)

日産リーフなどに搭載されているリチウムイオンバッテリー。目的に応じて高エネルギータイプと高出力タイプを選択できる。生産しているのは日産とNECの合弁で出資されたオートモティブエナジーサプライ。しかし今年になってNECから全株を買い上げた日産は、中国系のファンドに同社を売却する方針だ

 先頃開催されたG20サミットで、フランスのマクロン大統領は「2040年までにエンジン車の販売を禁止する」と発表した。これはG20という会合で環境先進国であることをアピールすることが狙いなのだろうが、肝心のフランス国内の自動車メーカーは、どちらかといえばEVの開発において進んでいるという印象は薄い。ルノーこそ日産自動車との連合でEVを開発導入しているが、その技術レベルや生産規模から言って、自動車メーカーが手がけるEVとしては相当に実績があるものだが、最先端の技術と性能を保持しているというイメージは薄い。むしろ重荷となっていたバッテリー生産子会社を売り払ってしまったほどで、しばらくは革新的なバッテリー技術の進歩は望めないという判断を下したような形だ。

 EVは構造自体はエンジン車よりもずっとシンプルで、バッテリーのマネージメントなど制御ソフトやドライバーの操作感を走りと一体化させるチューニングにこそ、EV開発のノウハウがあり、自動車メーカーはむしろ車体部分の量産技術しかアドバンテージと言える部分はないと言われている。

 ドイツや日本の自動車メーカーに遅れを取ったフランスの自動車メーカーが、EVという新たな市場において、再び存在感を見せるようになるためには、相当な努力が必要なのかもしれない。三菱自動車を傘下に収めることで、ルノー日産は最大規模の自動車メーカーとなり、やはりEVやPHV(プラグインハイブリッド自動車)に力を入れる三菱自動車とのシナジー効果を期待する声もあるが、相互補完となり得るような関係ではなさそうだ。

 イギリスにおいては、自国資本の自動車メーカーは存在しないが、ジャガー&ランドローバーは中国資本になっても、独自の研究開発を続けており、先日EVのSUVを発表したばかりである。ベントレーブランドを擁するフォルクスワーゲングループはEVへの転換を進めているし、ロールス・ロイスを傘下にもつBMWもMINIやBMWブランドでEVやPHVを積極的に展開しようという動きを見せているから、いずれロールス・ロイスにも同様の展開を見せるのだろうか(しかしEVのロールスなど味気なく、高級感を感じないような気もしないのであるが)。

 それでも今から政策として「エンジン車禁止」を掲げておけば、現在使用しているエンジン車は23年後にはほとんど代替えが終わっているから、ガソリンスタンドがほとんど無くなっても困らないかもしれない。しかし問題は、そんなに単純なことではなさそうなのである。

電池の持つ問題点と液体燃料の優れた点

 エンジン推進派から見れば、バッテリーEVが従来のエンジン車のように幅広く使われるようになるまでには、さまざまな課題があると考えている。少なくとも現時点でのバッテリーEVは、シティコミューターとしての能力は十分でも、1日のほとんどを移動に費やすような長距離移動には向いていない。電池には、エネルギー密度が高くなれば短絡による発熱や発火事故といったリスクが高まるという面もある。ガソリンや軽油にも火災などのリスクはあるが、それらはほとんどが衝突事故が原因の二次的な災害であり、イメージよりもずっと安全なのである。

 液体燃料の持つ利便性やエネルギー密度の高さは、バッテリーではなかなか得難いものがある。現在、さまざまな研究機関がいくつもの革新的なバッテリー技術を開発し、実用化に向けて研究を重ねているが、現在のリチウムイオンバッテリーは軽油やガソリンと比べエネルギー密度は40分の1程度でしかない。バッテリーの技術が飛躍的に高まったとしても、それを何度も繰り返すような奇跡的な進化を遂げない限り、都市内でのコミューターに利用が限られるのは、それが大きな理由だ。それに大容量のバッテリーが短時間で充電できる技術が整ったとしても、それらのクルマが大挙して高速道路のサービスエリアにやってくるとすれば、その電源供給はどうするのかという問題も生じる。

【次ページ】 エンジンに残されている大きな可能性 バイオ燃料によるカーボンニュートラル

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