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世の中は「IoT」がまさに花盛り、業界の予測は今後の著しい発展を告げている。しかし、IoTは実際に根付くのか。ある業界関係者は、現在の自動車メーカー、大手家電メーカーがタッグを組む「家庭用IoTシステムの8割は失敗に終わる」と大胆に予測する。その理由はどこにあるのか。
消費者はIoTを使って何ができるのか
IoTがブームである。オートショーでもCESのような家電ショーでも、話題の中心はIoTであり、どの自動車メーカーとどの家電メーカーが提携して車と家庭をつなぐシステムを構築するのかの競争が始まっている。
リサーチ会社ガートナー社によると、2016年の全世界での何らかのIoT機器の使用は64億件に上り、2015年から30%増となった。2020年にはこの数は208億件にまで増加すると予測されている。またこの内訳で最も多いのは家庭内IoTで、ビジネス向けの2倍近くに達する。
しかし、一般消費者にとって、IoTの導入にはよく理解できない部分も多いのではないだろうか。
まず、IoTを使って何ができるのか。家中の家電、照明、ドア、エアコンなどを結び、センターハブによりタッチパネルあるいはボイスコマンドでそれらを自由に操作できる。車と連動し、車の中からも同様の操作が行える。
その結果、「家に帰り着く前に室内温度を快適に保つ」「家に帰ると照明がつき、ガレージドア、玄関ドアロックなどが自動的に開錠される」「車の中から冷蔵庫の中身をチェック、自動的に作られた買い物リストにより足りないものを確実に買うことができる」「人の動きに合わせて照明が点灯し、無駄な電力が省ける」「外からの室内モニターによりいつでも安全チェックができる」「その日の予定を車に送り、自動的にナビを設定できる」など、便利な機能がいっぱいだ。
IoT家電にまつわる、予測可能な大いなる課題
ただし、これらを実現するには、たとえばサムスンのスマートホーム家電を揃え、アマゾンエコーをハブに設定し、車は提携しているBMWを購入する必要があるのか。別の家電メーカーの冷蔵庫と洗濯機を組み合わせて同じハブからのコマンド設定は可能なのか。トヨタの車でもIoT連携は簡単にできるのか。
専門家によると「決して不可能ではないが、非常に難しい」という。元々のスマートホーム設定を他社間で繋げようと思うと、それなりの困難が伴う。かといってすべての家電、車などを新規に購入してスムーズなIoTを実現しようと思うと、その費用は「安く見積もって5万ドル(約500万円)」になる、という。
一方で、米の家庭内の修理、機器設営などにかかる費用を調査するホームアドバイザー社によると、「すでにスマートホーム機器を持っている」と答えた人にかけた費用を聞いたところ、その中央値は1268ドル(約14.5万円)、ほとんどのホームオーナーは564~2260ドル(約6.4~25.8万円)の出費だった、という。
5万ドルという数字とは大きな差があるが、その理由は実際にスマートホーム機器を導入している人の多くが「スマートガレージドア」「スマート玄関ロック」「スマート照明」など、部分的なもののみを購入しているためだ。
多くがスマホアプリを使い、単独でガレージドア、玄関ロック、照明などに対応している。これらを連動させる方法がないわけではないが、ほとんどの人は各個別アプリによって対応している、という。
IoT製品に寄せられる「真逆の」懸念
また実際にどのような機器の知名度が高いかの調査を行ったガットチェック社によると、アマゾンエコー、グーグルネストを挙げた人が多かったものの、クイックセットのスマートコード(自動施錠ができる玄関ドアロック)、チャンバーレインガレージドア(遠隔操作可能なガレージドア)、フィリップ・ヒュー(スマート電球)などがかなりの数に上り、サムスンのスマート冷蔵庫を上回っていた。
同調査ではガットチェック社ではIoT導入の決め手となるのは何か、という質問も行ったが、その結果「セントラル・コントロールとリモートアクセスによる便利さ」を挙げた人が多かったが、逆に障害となるものとして「コスト、セキュリティ」が挙げられた。
やはり「異なる家電メーカーの製品を一本化してコントロールできるのか、本当に使い勝手の良いものなのか」という点と、逆にすべての家庭内データが一本化されることで「ハッキングされた場合、すべての家庭内の機能が停止してしまうのでは」という真逆の懸念も表明された。
特に車と家電との連携については「車から家電をコントロールできるのは便利かもしれないが、そのために車載型のシステムを買う必要があるならば、スマホで対応できるものはスマホを使う」と答えた人が多かったという。
【次ページ】大手家電、自動車メーカーのIoTは8割が失敗に終わる
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