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  • 2016/02/26 掲載

有能なプロマネは握るべきこと・握るべき相手・それをいかにして握るかを知っている

事例に学ぶプロジェクト立ち上げ7つの勘所(第6回)

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プロジェクトでは、挑戦的な業務改革を一部の関係者が抵抗してなし崩し的に骨抜きにしてしまうことや、採用した先進的ITが思うように使えないなど、様々な問題が発生し得る。これらの問題の中には、プロジェクト開始前に、関係者としっかり握るべきことを明らかにし、それを握っておくことで回避できるものがいくつもある。これを産業用機械メーカーのPMの実践事例と併せて解説する。さらにこの勘所の実行に必要なスキル・知識として、作り上げる情報システムの姿明確化のスキル、本質的役割に関する知識、説得の設計のスキルが必要であることを解説する。
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今回の勘所 握るべきを握る

「互いの関心事を理解しろ」と言った有能PM

 業務改革を行うプロジェクトのメンバー構成は、ビジネス部門とシステム部門からの混成となることが多い。このようなプロジェクトで、キックオフ時点では、ともに同じ目的を目指すことを確認し、一致団結して活動を開始したはずなのに、プロジェクトが進むにつれて、ビジネス部門メンバーとシステム部門メンバーがなぜか反目し合う状況に陥ることがある。反目まではいかなくても、一方の力が強く、他方が不満を抱えた関係になることは多い。

 このような状況になるのは、実はそれぞれの関心事がすれ違っているからなのだが、本人たちにはその認識はなく、相手に対する理解がないので理由を認識することなくすれ違いが続くのだ。

 その関心事のすれ違いとは次のものである。感覚的には、“いつもの業務”と“例外やたまにやる業務”は、頻度では9:1に、ケース数では逆の1:9になる。

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図1■9:1 vs. 1:9の法則

 ビジネス部門メンバーの関心事は“いつもの業務”に、システム部門メンバーの関心事は“例外やたまにやる業務”に自然となってしまう。ビジネス部門メンバーにすれば、プロジェクトで成果を上げるためには、一番おいしい業務改革の対象の“いつもの業務”が関心の対象だ。

 例えば在庫を30%削減する目標の場合、“たまにやる業務”を放置して増える在庫があったとしても意に介さない。「どうにでもなるよ」、「起きてから考えればいいじゃないか」というのが本音なのだ。それより、いかに“いつもの業務”の管理レベルを上げてうまく在庫をコントロールできるようにするかが重要だ。本音を言えばシステム化を待たずに改善実行したいくらいのものだ。

 一方、システム部門メンバーにすれば、業務がシステムに乗らなければそもそもプロジェクトは失敗になる。ビジネス部門メンバーがケース数で9割もある業務を決めずに、一部の業務だけを深掘りして熱中しているのは理解できない。

 業務改革も成功させなければならないが、システム設計のための例外業務の検討も重要である。ビジネス部門メンバーにはシステム設計のための検討にも努力することを納得させ、システム部門メンバーには業務改革の支援にも努力することを納得させなければならない。これはPMとして全メンバーと握るべきことである。

 前回の勘所の4でも紹介した産業用機械メーカーのPMは、プロジェクト立上げにおいて、全メンバーに「起きがちな反目として『9:1 vs. 1:9の法則』がある」と言って聞かせ、さらにプロジェクトルームの壁にも「9:1 vs. 1:9の法則」を大書して貼り出し、二言目には壁を指さしながら相互協力を促した。この握りによってこのプロジェクトでは、相互理解を維持して推進することができたのだ。

【次ページ】 勘所の解説:握るべきを握る
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