• 会員限定
  • 2023/09/26 掲載

なぜオリエンタルランド創業者は東京ディズニーランドを作れた?23年かけた桁違いの奮闘録

連載:企業立志伝

  • icon-mail
  • icon-print
  • icon-hatena
  • icon-line
  • icon-close-snsbtns
記事をお気に入りリストに登録することができます。
1983年4月15日、千葉県浦安市に誕生した東京ディズニーランドは、それまで日本にあった遊園地とは一線を画すテーマパークであり、日本人のレジャーに対する考え方を大きく変えるものでした。開業初年度から1000万人を超えるゲストを迎え、40年経った今も愛される大テーマパークを日本に誕生させ、運営しているのが、1960年に設立されたオリエンタルランドです。たった3人の社員から始まった同社はなぜ、誰も成功を信じなかった事業を実現することができたのでしょうか。東京ディズニーランド誕生までには、四半世紀をかけた創業者たちの熱のこもった闘いがありました。

経済・経営ジャーナリスト 桑原 晃弥

経済・経営ジャーナリスト 桑原 晃弥

1956年広島県生まれ。経済・経営ジャーナリスト。慶應義塾大学卒。業界紙記者を経てフリージャーナリストとして独立。トヨタからアップル、グーグルまで、業界を問わず幅広い取材経験を持ち、企業風土や働き方、人材育成から投資まで、鋭い論旨を展開することで定評がある。主な著書に『世界最高峰CEO 43人の問題解決術』(KADOKAWA)『難局に打ち勝った100人に学ぶ 乗り越えた人の言葉』(KADOKAWA)『ウォーレン・バフェット 巨富を生み出す7つの法則』(朝日新聞出版)『「ものづくりの現場」の名語録』(PHP文庫)『大企業立志伝 トヨタ・キヤノン・日立などの創業者に学べ』(ビジネス+IT BOOKS)などがある。

大企業立志伝 トヨタ・キヤノン・日立などの創業者に学べ (ビジネス+IT BOOKS)
・著者:桑原 晃弥
・定価:800円 (税抜)
・出版社: SBクリエイティブ
・ASIN:B07F62BVH9
・発売日:2018年7月2日

photo
2023年4月、開園から40周年を迎えた東京ディズニーランドは、たった1人の夢から始まった
(Photo/Songsak C/Shutterstock.com)

埋め立て工事のために生まれた「オリエンタルランド」

 東京ディズニーリゾートのある千葉県浦安市は、かつては貝や海苔で知られた漁師町でした。そんな交通の便も悪い漁師町を一変させたのが、浦安海岸を大規模に埋め立てて造成する事業計画です。

 埋め立て地には公害などの関係で工場を誘致することはできず、住宅や遊園地などの施設を建てたいというのが自治体の考えでした。

 そして、埋め立て工事に取り組むために、三井不動産、京成電鉄、朝日土地興行(後に三井不動産が吸収合併)の3社が出資して設立されたのがオリエンタルランドです。

埋め立てにしか興味がない男とディズニーランドに惚れた男

 埋め立て工事のためには地元の漁協や漁民の説得が必要になります。その交渉には酒を飲みながら話を聞き、人としての信頼関係を築くことのできる度胸と行動力のある人物が不可欠です。そのために選ばれたのが、後にオリエンタルランドのトップとして米ディズニーとの交渉をはじめ、東京ディズニーランドの実現に剛腕を振るうことになる高橋政知(まさとも)氏です。

 高橋氏は、当時の三井不動産社長である江戸英雄氏たっての頼みでオリエンタルランドに入社しますが、関心があったのは埋め立ての仕事だけで、当初はディズニーランドには何の関心もありませんでした。

 ディズニーランドに強い関心を持っていたのは、当時京成電鉄の社長を務めていた川崎千春氏です。1958年に仕事で渡米した際に立ち寄ったディズニーランドに魅せられます。

 初めて見たディズニーランドのスケールは圧倒的で、園内にゴミ1つない、「本当にお客に気持ちよく楽しんでもらおうとするサービス精神」(『夢の王国の光と影』p36)の徹底ぶりに感激し、川崎氏は「こんな世界を日本の子どもたちにも見せてやりたい」と思うようになります。

 1955年、カリフォルニア州に初めてのディズニーランドがオープンした日、ウォルト・ディズニー氏がスタッフに話しかけた「ちょっと見てごらんよ。こんなにたくさんのうれしそうな顔を今まで見たことがあるかい?こんな大勢の人間が楽しんでるところをさ」(『ウォルト・ディズニー』p287)という言葉が残っていますが、川崎氏もそれを日本で実現したいと考えたのです。

世界で最初のディズニーランドが開業した当時の映像


 1961年、川崎氏は米国のディズニー本社を訪問。ディズニーランドの日本への誘致を願い出ようとしますが、ディズニー本社が関心を示すことなく、幹部の1人と会えただけで何の進展もありませんでした。

 理由の1つは「日本人なんか信用できない」(『夢の王国の光と影』p36)というものでした。実はその少し前、ある日本企業がディズニーランドとよく似た施設を勝手に建設する出来事があり、著作権への理解も敬意もない日本人への強い不信感があったのです。

 それでも川崎氏の夢は消えることはなく、オリエンタルランドで埋め立て交渉を進める高橋氏にディズニーランドのスライドを見せながら次のように語っていました。

「おれは将来これをやりたいのだ。そのために埋め立てをするんだ」(『夢の王国の光と影』p33)
【次ページ】本来なら数年がかり…たった10カ月でまとめた高橋流の交渉術

関連タグ

関連コンテンツ

あなたの投稿

    PR

    PR

    PR

処理に失敗しました

人気のタグ

投稿したコメントを
削除しますか?

あなたの投稿コメント編集

機能制限のお知らせ

現在、コメントの違反報告があったため一部機能が利用できなくなっています。

そのため、この機能はご利用いただけません。
詳しくはこちらにお問い合わせください。

通報

このコメントについて、
問題の詳細をお知らせください。

ビジネス+ITルール違反についてはこちらをご覧ください。

通報

報告が完了しました

コメントを投稿することにより自身の基本情報
本メディアサイトに公開されます

必要な会員情報が不足しています。

必要な会員情報をすべてご登録いただくまでは、以下のサービスがご利用いただけません。

  • 記事閲覧数の制限なし

  • [お気に入り]ボタンでの記事取り置き

  • タグフォロー

  • おすすめコンテンツの表示

詳細情報を入力して
会員限定機能を使いこなしましょう!

詳細はこちら 詳細情報の入力へ進む
報告が完了しました

」さんのブロックを解除しますか?

ブロックを解除するとお互いにフォローすることができるようになります。

ブロック

さんはあなたをフォローしたりあなたのコメントにいいねできなくなります。また、さんからの通知は表示されなくなります。

さんをブロックしますか?

ブロック

ブロックが完了しました

ブロック解除

ブロック解除が完了しました

機能制限のお知らせ

現在、コメントの違反報告があったため一部機能が利用できなくなっています。

そのため、この機能はご利用いただけません。
詳しくはこちらにお問い合わせください。

ユーザーをフォローすることにより自身の基本情報
お相手に公開されます