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  • 2023/10/03 掲載

北海道では「セイコーマート」が断トツ強い? 王者セブンイレブンですら勝てない理由

【連載】流通戦国時代を読み解く

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ここ数年、店舗数を増やして売上を伸ばすという、コンビニの既存のビジネスモデルが通用しなくなってきている。2010年代ごろから、過剰出店による経営悪化に関する問題が露呈しはじめ、2018年には公正取引委員会による調査を経て、「年中無休」「24時間営業」「ドミナント出店(地域内への過密な出店)」などには課題があるとして、改善要請がなされた。こうした経緯を経て、コンビニの出店拡大スピードが抑制される中、2020年からコロナ禍で大打撃を受け、縮小ムードが高まっている。大手3社は既存のビジネスモデルをどう変えていけば良いのだろうか。そのヒントは北海道の最強コンビニ「セイコーマート」の店舗設計にありそうだ。

執筆:nakaja lab 代表取締役 流通アナリスト/中小企業診断士 中井彰人

執筆:nakaja lab 代表取締役 流通アナリスト/中小企業診断士 中井彰人

みずほ銀行の中小企業融資担当を経て、同行産業調査部にてアナリストとして産業動向分析に長年従事。分野は食品、流通業界。主な著作物に「図解即戦力 小売業界のしくみとビジネスがこれ1冊でしっかりわかる教科書」(技術評論社)、「50年に一度の大転換期を迎えるスーパーマーケット業界」、「業態盛衰の歴史が示唆するこれからの小売の方向性」(中小企業診断士)などがある。

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北海道ではシェア断トツ? セブン・ファミマ・ローソンでも勝てない「セイコーマート」の戦略とは
(写真:西村尚己/アフロ)

効率だけを追求してきた「コンビニ大手3社」の停滞

 図表1は、コンビニ業界の市場規模と店舗数の時系列推移である。2017年ごろまで店舗数を増やすことで市場規模を拡大してきたコンビニ業界だが、店舗数の増加が売上の拡大につながらなくなってきた。これはコンビニ大手の全国展開が進み、コンビニの密度が過密になり始めていること、すなわち、国内市場が飽和段階に達して来たことを示すものである。

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図表1:コンビニエンスストアの売上高と店舗数推移

 そんな国内コンビニ市場が飽和という踊り場を迎え、大手各社は今、市場の細分化による再成長を模索するようになってきている。

 これまでのコンビニは、基本的に単一の店舗フォーマットを全国展開し、可能な限り過密な店舗網を構築することで、全体での売上を拡大するという戦略だった。しかし、そうした出店余地が乏しくなってくれば、これまでの収益構造では採算がとれなかった場所に出していくしかない。従来の想定では売上が十分に確保出来ないという場所でも、これまでには来てもらえなかった顧客に来店してもらうことが出来れば、想定売上を大きくすることが出来るかもしれない。

 または店舗あたりの運営コストを引き下げることが出来れば、採算がとれるようになる。店舗の収益構造を多様化することによって、多様な出店適地が生み出される。出店余地を再び創り出すことが可能になれば、市場飽和は解消するのである。

 コンビニがこれまで単一フォーマットで押し通してきたのは、それが最も効率的だったからにほかならない。全国どこでも同じような売場構成で、同じように年中無休24時間営業、統一された物流運営など、統一された店舗網運営が最も効率的であったため、コンビニ大手3社はシェア拡大最優先でこれまで成功してきた。

 規模の利益を最大限享受することで、効率の劣る競合を打倒し、M&Aによってその縄張りを奪いながら成長したことで、大手3社の寡占化は、ほぼ達成されたのだが、同時に既存のビジネスモデルにおけるフロンティアは消失したのである。

大手3社が勝てない? 北海道最強「セイコーマート」

 既存フォーマットを多様化し、新たなマーケットを作り出した成功事例として、北海道の地域コンビニ「セイコーマート」が挙げられる。

 そもそもコンビニ市場は、大手3社の全国展開が進み、今やほとんどの都道府県において大手3社のシェアが9割を超えており、北海道を除けば、最低でも8割を超える寡占状態となっている。しかし、北海道だけはセイコーマートが店舗数シェア約37%でトップを守っており、大手3社のシェアは6割ちょっとしかないのだ。

 セブンイレブンがセイコーマートに肉薄しつつあるが、札幌、旭川、函館、帯広、釧路の主要5都市が半分以上を占めていて、主要都市以外ではセイコーマートにはまだまだ及ばない(図表2)。

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図表2:北海道のコンビニエンスストアの店舗数ランキング

 なぜ、大手3社が店舗を増やせない北海道の過疎地でも、セイコーマートは十分生きていけるのだろうか。 【次ページ】大手3社と違いだらけ? セイコーマートの独自の店舗設計

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