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- 2024/03/29 掲載
約17%も該当?これからメガバンクに冷遇される“ある客層”、選別がはじまる理由とは
加谷珪一(かや・けいいち) 経済評論家 1969年宮城県仙台市生まれ。東北大学工学部原子核工学科卒業後、日経BP社に記者として入社。 野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当。独立後は、中央省庁や政府系金融機関など対するコンサルティング業務に従事。現在は、経済、金融、ビジネス、ITなど多方面の分野で執筆活動を行っている。著書に『貧乏国ニッポン』(幻冬舎新書)、『億万長者への道は経済学に書いてある』(クロスメディア・パブリッシング)、『感じる経済学』(SBクリエイティブ)、『ポスト新産業革命』(CCCメディアハウス)、『新富裕層の研究-日本経済を変える新たな仕組み』(祥伝社新書)、『教養として身につけておきたい 戦争と経済の本質』(総合法令出版)などがある。
メガバンクが預金金利引き上げを表明したことの意味
日銀が3月の金融政策決定会合においてマイナス金利解除を決定したことで、金融市場は金利上昇に向けて本格的に動き始めた。日銀としては、マイナス金利の解除に続き、秋にはゼロ金利を解除したい意向だ。教科書的に考えれば、市場金利が動き出すのはゼロ金利解除以降なので、本格的な利上げは来年以降との解釈になるだろう。だが金融市場の最前線における動きはそうではないかもしれない。
今回の日銀の決定を受けて、メガバンク各行は早くも預金金利引き上げを表明している。ゼロ金利解除どころか、マイナス金利を解除しただけの段階で、なぜ銀行の対応はここまで迅速なのだろうか。それは来るべき金利上昇とそれに伴う激しい預金獲得競争を予想しており、いち早く手を打っているからにほかならない。
日銀の政策転換によって短期金利が上昇に転じた場合、銀行の資金調達環境は一気に悪化する。これまではゼロ金利でいくらでも資金を調達することができたので、銀行は預金者に対し、ほぼゼロという半ば冗談のような金利を提示してきた。預金金利がゼロということは、言い換えれば、預金者に対して「お金など預けなくて結構です」と言っているに等しい。
だが、これからの時代は状況が180度変わる。
金利上昇に伴う資金調達環境の悪化によって、(以前と同様)預金は銀行にとってもっとも大事なビジネス基盤となる。銀行という商売において預金を確保しておくことはまさに生命線であり、かつての銀行マンは、預金獲得にノルマが課され、お世辞にも楽しいとは言えない預金獲得の営業に多くの労力と時間を費やしてきた。金利が上がるということは、こうした当たり前の銀行業の世界が戻ってくることを意味している。
各行は今後、他行に預金を奪われないよう、金利を相次いで引き上げることになり、それは大きなコスト負担となって跳ね返ってくるだろう。メガバンクが率先して金利引き上げを宣言した以上、地銀も追随せざるを得なくなるのは確実であり、一気に預金金利が上がる可能性が高まっている。 【次ページ】金利上昇で銀行の経営はどうなる?
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