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  • 2017/07/13 掲載

博報堂ではなぜ打ち合わせで「無駄口」「悪口」を推奨するのか

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今、多くの企業で会議や打ち合わせの生産性を上げるための取り組みがなされているのではないだろうか。ところが博報堂の打ち合わせは、なんと50%が「雑談」でできているという。もちろん、社員はけっしてさぼっているわけではない。博報堂の打ち合わせ中の会話には、じつは「しくみ」があるのだ。ここではその「門外不出」の打ち合わせ術を紹介する。
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博報堂社員が「雑談」を重視するのには理由がある
(© Monet – Fotolia)

「打ち合わせ」をテーマにした自社広告

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博報堂の仕事の仕方、発想法をテーマにしたシリーズ広告、「明日を拓く 生活者発想」篇のひとつ(2012年10月から2014年3月まで掲載)。「生活者発想」とは、博報堂が掲げるフィロソフィー(企業の哲学)だ
「会議に、無駄口を。打合せに、悪口を。」

 この一文は、2012年10月から2014年3月まで掲載された博報堂の企業広告のコピーです。

 なぜ、私たちが、会議や打ち合わせの場で無駄口や悪口を勧めるような企業広告を打ち出したのか?そもそも、なぜ企業広告に打ち合わせを取り上げたのか?

 その理由は、博報堂がこれまでに歩んできた歴史の中にあります。

 博報堂のはじまりは、1895年、創業者の瀬木博尚によって設立された教育雑誌の広告取次店「博報堂」にさかのぼります。

 当時、新聞や雑誌はニューメディアであり、広告はニュービジネスでした。創業者は、「これからの日本のために、出版を通じて青少年の教育に貢献する」という志を抱き、出版広告を主たる事業として博報堂を成長させました。

 ところが、創業から半世紀、博報堂は岐路に立たされます。1950年代になると、ラジオやテレビの民間放送が始まり、広告業界は激変の時代をむかえます。かつては出版広告の博報堂として覇を唱えていましたが、戦後の民間放送、テレビ放送の台頭期に新しいメディアへの取り組みが遅れていました。

「単に広告スペースを売る業種ではなく、アイデアを売って産業を発展させる業種に生まれ変わる」

 博報堂は、先んじてアメリカからマーケティング・コミュニケーションの理論を積極的に取り入れ、広告業の近代化を推し進めました。

 そして、「メディア」を売るだけの旧来のやり方ではなく、「マーケティング」や「クリエイティブ」をクライアントに提供する会社に生まれ変わることを目指したのです。

 従来の枠組みにとらわれないアイデアやコンテンツを軸にして、生活者の心を動かしていこう。生活者のことをいちばん理解する会社となり、生活者の視点から発想することで新しい価値を創造していこう、という結論にたどり着いたのです。

「打ち合わせ」は会社の命題に答えるための方法

 新しい価値を創造するためには、「固定観念に縛られない、新しい発想」が何よりも重要になります。

 クライアントが思いもしなかったような、想定外のアイデアを提案する。それが、博報堂に課せられている命題です。

 新しい価値を創造するために、社員一人ひとりが考えに考え抜いて、アイデアを出すという努力は必須。その努力なしに、新しい価値を生み出すことなんてできません。

 ただし、ひとりの社員が思いつける発想には限界があるというのも事実です。

 他人任せという態度は絶対にあってはなりませんが、新しい発想を生み出し続けていくという会社の命題に、個人の努力だけで応えるのは困難です。

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博報堂のすごい打ち合わせ (クリックでアマゾンへ飛びます)
 博報堂の社長である水島正幸は、次のように述べています。

「新しいアイデアは、異なった価値観、異質な才能、そして多様な文化のぶつかり合いから生まれます。

 また、博報堂には、良いアイデアは、誰が出そうが良いものは良いと認め合う文化があります。社員一人ひとりの『個』の力に、お互いを高める『チーム力』をかけ合わせることで、高度なクリエイティビティが生まれるのです」

 組織運営の考え方のひとつに、「集合天才」という概念があります。「ひとりの天才に頼るのではなく、チームや組織全体で創造性を発揮する」という考え方です。

 博報堂が重視するチーム力も、この集合天才という概念に通ずるものであるといえます。

 では、個の力を高めるチーム力はどうやってつくればよいのか?その答えが、今、私たちが行っている博報堂式の打ち合わせ術なのです。

【次ページ】雑談には使い方がある
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