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2017年03月13日

村田やアルプス、TDKの優位は「スマホで動画」ブームを考えれば揺るがない

全世界的にITを使った「動画再生」に対するニーズが高まっている。原動力はYouTubeをはじめとするコンテンツの充実はもちろん、動画解析技術の向上やモバイル網の高速化などあるが、スマートフォン(スマホ)をはじめとするモバイル機器の電子部品を手がける村田製作所やアルプス電気、TDKのようなメーカーによる技術革新もそれを支える。現状、スマホ市場そのものは停滞気味だが、求められるスペックは高度化しており、それに対応した先進的な技術を持っている日本の部品メーカーの優位は当分、揺るぎそうもない。

執筆:経済ジャーナリスト 寺尾 淳

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「スマホで動画」が当たり前になるとさらなるニーズが出てくる

(© Glevalex – Fotolia)

「PPAP」の地球的大ヒットは日本の電子部品メーカーがもたらした?

 2016年、全世界的に大ブレイクしたピコ太郎さんの「PPAP」は、スマホの液晶画面でピコ太郎さんの動画を見た人が、「自分もやってみよう」とスマホのカメラで自分オリジナルの「PPAP」を音声付きの動画で「自撮り撮影」し、知り合いにそれを送信して面白がらせたり、「YouTube(ユーチューブ)」のような動画投稿サイトにそれを投稿したことで、爆発的なヒットにつながったといわれている。いわば「スマホを使った参加型パフォーマンス」だった。

 動画をスマホで視聴するスタイルは特に若年層において顕著で、サイバーエージェントによる2015年の調査では15〜19歳の8割は週に1回以上、スマホを通して動画メディアに接触しているといい、スイッチ・メディア・ラボの2016年の調査によれば10代の男女の4割がほぼ毎日スマホで動画を視聴していた。

 PPAPと似たような現象は、韓国のPSY(サイ)の「江南(カンナム)スタイル」(2012年)やアメリカのファレル・ウィリアムスの「Happy」(2013年)でも見られたが、2016年に「PPAP」がこれだけ大ヒットした背景には、その後の技術の進歩がある。

 歌と踊りの動画を細部まで見てまね、「自分でもそれをやって、動画に撮り、人に見せる」には、動画制作用のアプリが必要なだけでなく、十分な大きさがあって解像度も大きい液晶ディスプレイも、動画をスムーズに保存・再生できる大容量メモリーも、動画の連続再生で電池切れを起こさない大容量電池も、解像度が大きくてスマホ動画の弱点「手ぶれ」や「ピンぼけ」を補正してくれるカメラも、動画をすばやく送信できる高速通信機能も搭載していることが求められる。

 そんな高度な機能を持っているスマホの部品で、日本の電子部品メーカーは技術の最先端をいっている。「動画の再生も撮影も送信も、日本の技術が支えている」と言っても、決してオーバーではないのだ。つまり「PPAP」の全地球的大ヒットは、スマホというツールを介して、日本人パフォーマーのピコ太郎さんと、日本企業の村田製作所や日東電工やアルプス電気やTDKやソニーやシャープや東芝などとの「オールジャパン体制」から生まれたものだった。

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動画再生で活躍する日本メーカーの技術(例)


 スマホの世界では、このどの部品でも日本メーカーは世界のトップシェアか、少なくとも3位以内のシェアを占めている。

スマホは上位機種になるほど日本製の部品が多く使われている

 スマホ、タブレットなどモバイル機器のスペックは、最近10年間で長足の進歩を遂げている。

 たとえば日本で最も売れているスマホのブランド、アップルの「iPhone」を例に挙げ、10年前の2007年6月発売の「初代iPhone」と2016年9月発売の最新最上位機種「iPhone 7 Plus」を比べてみると、それがよくわかる。CPUクロック周波数は5.65倍に、メモリー容量は23.4倍に、カメラ解像度(背面)は6倍に、電池容量は2.07倍になっている。

 ディスプレイの大きさは3.5インチから5.5インチになり、その解像度は480×320から1920×1080へ、より高精細になっている。

 初代までさかのぼらず、通信方式が現行のLTEにかわり、メモリー容量がほぼ倍になって当時「世代が変わった」と言われた「iPhone 5」(2012年9月)のスペックと比べても、4年間でCPUクロック周波数は1.79倍、メモリー容量は3倍、カメラ解像度は1.5倍、電池容量は2.01倍になっている。

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スマホのスペック進化(アップル「iPhone」)の例


 アップルの「iPhone」に限らず、サムスンでもファーウェイでもソニーでも、スマホの世界市場のスペック競争で日本の電子部品メーカーは、大きな貢献をみせている。

 アップル以外の、たとえば中国のスマホメーカーなどは、同じブランドでも中位価格帯の普及タイプの機種は他国製を使うが、上位価格帯の最上位機種(フラッグシップ機種)では日本製の部品を使っている例が、結構ある。

 それだけ日本製部品は、スマホメーカーの研究開発部門から技術の先進性と製品の信頼性で一目置かれて厚い信頼を得ており、スマホのスペックが進化しても継続的に使われ続ける。大量には使われなくても、対売上高の利益率が高い、高付加価値の製品である。

 中国メーカーのスマホは現在、世界一の市場規模を持つ中国市場でも売れ行きの中心が中位価格帯から上位価格帯へシフトしつつある。日本の電子部品メーカーにとっては歓迎すべき動きと言えるだろう。

 ソニーが「CMOSイメージセンサー」のおかげで苦境から立ち直ったのも、シャープが「中・小型液晶」が好調で営業黒字化のメドがついたのも、そのシャープの再建スポンサー、鴻海精密工業(ホンハイ)が「NAND型フラッシュメモリー」を生産する東芝の半導体事業をしきりに欲しがっているのも、スマホの主要部品に関わる事業はバランスシートの数字だけでは測れないような「資産」を持っていて、目に見えない潜在力を秘めているからである。

電子部品大手の今期通期見通しは「iPhone」不振と円高で減速だが

 電子部品の大手メーカーとしてまず名前が挙がるのは、永守重信会長兼社長(CEO)率いる日本電産に、村田製作所、TDK、日東電工、アルプス電気というところ。

 その2017年3月期決算の見通しは、日本電産は売上高+1.8%、営業利益+19.0%で4期連続増収・営業増益と元気だが、売上高の伸び率は前期の+14.6%から急減する。

 村田製作所は売上高−7.9%、営業利益−27.4%、日東電工は売上高−4.2%、営業利益−17.0%、アルプス電気は売上高−4.0%、営業利益−19.7%で、いずれも減収・営業減益の見通し。TDKは営業利益こそ+128.0%の3ケタ増益だが、売上高は−0.2%で減収の見込み(注:業績の見通しは今後、修正される可能性がある)。

 日本電産は2016年3月期で「車載及び家電・商業・産業用」のモーター、センサーの売上が全体の47%を占め、パソコン、スマートフォン(スマホ)など電子機器向けの電子部品の売上比率が相対的に小さい。

 それに対して他の4社は電子機器向け、とりわけスマホ向け部品の売上比率が大きい。4社とも2013年3月期〜2016年3月期は2ケタの増収、2ケタの増益が目立っていたが、今期は一転、減収や減益で揃い、明らかに業績が停滞、減速している。

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電子部品大手4社の売上高の推移

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電子部品大手4社の営業利益の推移


 今期の不振の大きな原因は、高性能部品を供給して日本の電子部品メーカーの優秀さを世界に示したアップルの「iPhone」が販売不振に陥り、2015年12月から減産を行ったことによる受注の落ち込みと、為替のドル円レートが前年同期より10円以上も円高に振れて円換算の売上が目減りしたこと。

 2016年9月にアップルのスマホ新機種「iPhone 7」「iPhone 7 Plus」が発売され、11月からは為替レートも円安に反転し受注も回復をみせたが、今のところ失地を挽回しきれていない。

 村田製作所やTDKが中国のスマホメーカーからの受注を増やすなど、各社とも「アップルへの過度の依存」からの脱却を進めてはいるが、今期について言えば「アップルがこけたら、皆こけた」という状況を引きずってしまっている。

 しかし、業績は停滞しても、日本の電子部品メーカーはその技術力や製品の信頼性で依然、世界からリスペクトされる存在であり続けている。とりわけ「動画」にからんだ技術テーマでは日本の存在感は非常に大きい。それは今後の業績立て直しのキーポイントにもなりうるので、各社とも、それを重要な研究開発のテーマに位置づけ、追求している。

【次ページ】電子部品各社の「動画」に関わる技術戦略

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