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約13人に1人の割合を占めるLGBTは、共働きで子供がいないカップルは可処分所得が多い傾向にあり、その購買力は「ピンクマネー」と呼ばれ、グローバルな消費経済に大きなインパクトを与えている。そのため、日本でもLGBTを対象にした観光施策「LGBTツーリズム」の考えが広がりつつある。初来日したIGLTA(International Gay & Lesbian Travel Association、国際ゲイ&レズビアン旅行協会)の会長であるJohn Tanzella氏と、アウト・ジャパン 取締役 後藤 純一氏、同社 代表取締役 小泉 伸太郎氏、ホテルグランヴィア京都 営業推進室 担当部長 池内 志帆氏、グランデコリゾート 販売促進セクション主任 金光 弦太氏、それぞれの立場から事例を交えてLGBTツーリズムへのアプローチ方法を学ぶ。
高まる「LGBTフレンドリー企業化」への期待
最近よく耳にする「LGBT」とは、L:レズビアン(女性同性愛者)、G:ゲイ(男性同性愛者)、B:バイセクシュアル(両性愛者)、T:トランスジェンダー(性同一障害など)の頭文字をとった略語だ。
アウト・ジャパン 取締役の後藤 純一氏は「実は日本におけるLGBTの人口は約7.6~8%と言われており、比率では左利きやAB型の人々と同じくらいです。性を考える切り口には『生物学的な性』『性的指向』『性自認』『性表現』という4つの要素が多様に組み合わさり、人の数ほど性があります。性はグラデーションであり、人間だけでなく、動物にもあります。自然界ではLGBTはごく普通のことなのです」と説明する。
そのうえで、世界におけるLGBT権利状況をみると、同性婚が認められている国から、罰則や禁固刑が科されたり、死刑になってしまうような国まである。
「アジアについては、日本を含めて特定の法律がないところも多いです。しかし、もうすぐアジア初の同性婚が認められるであろう台湾のような国もあります」(後藤氏)
ビジネスにおいては、世界の大企業を中心にLGBTへの理解が進んでいる。1992年にリーバイスが社員の同性パートナーへの福利厚生を認めたのを皮切りに、2010年頃までにフォーチュン500の企業の約3分の1が同様の制度を導入している。
「アメリカではトヨタやアメリカン航空など、LGBTの理解度が高い多くの企業があります。アップルのCEO、ティム・クックもゲイであることをカミングアウトしました」(後藤氏)
一方、まだ日本では法律の整備が遅れている。性同一性障害特例法で、戸籍上の性別変更は可能だが、「未婚であること」「未成年の子供がいないこと」など、厳しい要件がある。同性婚の法的保障もLGBT差別禁止法もない。
「渋谷区や世田谷区など、地方自治体の一部では同性パートナーシップ証明制度が始まりました。しかし、まだLGBTは社会的に多くの困難に直面しがちです」(後藤氏)
最近では渋谷区の条例を機に、国内でもCSRの一環として、LGBT施策に取り組む企業も現れている。2016年にLGBTフレンドリーな企業を評価する「
PRIDE指標」が策定され、ANA、日本航空、ソフトバンク、ソニーなど、50社以上が最高評価のゴールドに認定された。
「ピンクマネー」はもう無視できない
アウト・ジャパンの小泉 伸太郎氏によると、LGBTをターゲットとする市場規模は非常に大きいという。たとえば、グローバルでみると旅行消費のみでも2020億米ドル、国内だけでも約6兆円の規模だ。これらは「ピンクマネー」と呼ばれており、LGBTの購買力の高さを意味している。
LGBTを8%とすると、旅行者数の概算値はインバウンドで192万人、アウトバウンドで137万人ほどになるが、同氏は「数値的にはもう少し小さいかもしれません。LGBTの旅行者は、その国がLGBTフレンドリーかどうかによって、旅行商材やサービスを決定するからです。LGBTの方々が本当に気持ちよく、安心して旅行できる環境を整えていくことが重要になります」と説明する。
LGBT旅行者の中にも、国内外ともに医師・弁護士・会社経営などの高収入層がおり、LGBTではない旅行者とお金のかけ方も違うという。
「ご自身の好きなことをやりたい『精神的富裕層』も多いと推測されます。SNSへ旅行体験記や写真を頻繁に掲載しますし、LGBTフレンドリーな場所やサービスのリピーターになる可能性も高いです」(小泉氏)
逆に言えば、厳しい目を持つLGBT層が納得するようなサービスを提供できれば、どんな顧客であってもサービスの満足度が高くなるはずだ。
【次ページ】ホテルグランヴィア京都とグランデコスノーリゾートの事例
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