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- 2017/02/27 掲載
ジャスラック「音楽教室からの著作権料徴収」に正義はあるか
キングコング西野の「お金の奴隷解放宣言」
1月下旬、お笑い芸人で絵本作家のキングコング・西野亮廣氏が、「お金の奴隷解放宣言」として自らの著作物である「えんとつ町のプペル」をネットで無料公開して話題となった。無料公開した理由について、西野氏は「23万部を突破した同作品の値段は2,000円と、子どもには手がでないと子どもたちから指摘されたのがきっかけだった」と語っている。
この施策は賛否両論を呼び、同氏の独特の物言いも相まって、“炎上“状態となった。西野氏への批判の主な内容は、著作物を無料で配布すると、本来クリエイターに入るべき適切な収入が入らなくなってしまうというものである。
西野氏の騒動の最中で勃発したのが、このジャスラック問題だ。楽曲の著作権を管理しているジャスラックが、2017年以降、楽器の演奏を教える全国約9000か所の音楽教室から使用料を徴収する方針を決めたのである。
これを受けて西野氏は「ありがとうJASRAC!」というタイトルのブログを更新し、批判がジャスラックに向かったことを好意的に受け取る旨の発言を行った。
なぜ「ありがとう」なのか。それは批判の矛先がジャスラックに向かったことだけが理由ではない。西野氏によれば、ジャスラックに対する世間の反発は、いわば西野氏が言い放った「お金の奴隷解放宣言」と構造的に同じであるというのだ。
つまり「音楽教室から著作権料を徴収するとは何事だ。無料で公開することは、結果としてコンテンツ業界の収益向上につながるはずである」という論旨でジャスラックを批判した人は、同様の論理でもって西野の絵本無料配布を肯定せよ、というロジックだ。
CDの売上が落ちても安定? ジャスラックの収益
そんなジャスラックだが、実は売上(著作権料徴収額)はバブル期と比べてそれほど落ちていない。1990年代には1,000億円に届かなかったが2000年に1,000億円を突破し、その後は1,100億円程度で推移している。1990年代と比較してみると、むしろ売上は伸びている。とはいっても、音楽業界全体としてはCDの売上が減少しており、ジャスラックもこの影響を受けている。2006年に250億円近かったオーディオディスクからの徴収額はおよそ半分にまで減少。その分の売上をカバーしているのが、「放送」や「演奏」のジャンルからの売上(テレビ、ラジオ、CM放送)だ。
ジャスラックはCDからの収益が落ちたのをカバーすべく、新たな収益源として音楽教室等に課金しようとしているわけだが、このやり方があまりに強引なために音楽教室、さらには世論からの反発を招いている。
筆者にはジャスラック社員の知人がおり、彼らに話を聞くと「(ジャスラックが)あちこちから嫌われていることは自覚している」という。
過去には、名古屋の小さなダンススクールがジャスラックからの著作権料徴収に反発し、最高裁までもつれたことがあった。その際は裁判でジャスラック側が勝訴し、著作権者の演奏権が保護された。だが、音楽教室は教育であってビジネスではないという見方もある。本来は、皆が使いやすいように音楽を使い、正当な著作権料を喜んで支払うのが正しい姿だ。
売上が減っているからといって新たな収益源を探すことは問題ないだろうが、もっと自社の利益だけでなく音楽業界のためになるように動いていれば、また良好な広報活動を行っていれば、このような世論との摩擦は生まれなかったのではないか。
【次ページ】「取れるところから取る」がジャスラックのやり方?
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