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  • 2016/10/13 掲載

KADOKAWA、新潮社、スマートニュースが明かす「次世代電子書籍ビジネス」とは何か

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国内における電子出版(電子書籍と電子雑誌)の実績は、2014年に1411億円、2015年に約1826億円となり、29%の伸びを示した。電子雑誌のみでは53%、電子書籍のみでは23%ほど増えている。一方、米国の電子出版市場は、2015年で7000億円ほどだが、2018年の予測値では電子書籍が印刷書籍を抜くという。まだ日本はこういった逆転現象は見られないが、出版業界はこの先どう変わっていくのか。電子出版に注力・注目するKADOKAWA、新潮社、スマートニュース3社の代表者が集まり、「次世代電子書籍ビジネス」を語り合った。
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インプレス、KADOKAWA、新潮社の代表者が集まり、本音の座談会を開催


書籍は「所有」から「利用」へ

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モデレーターを務めた
インプレスホールディングス
取締役
北川雅洋氏
 本座談会のモデレーターでインプレスホールディングス 取締役の北川雅洋氏は、まず、デジタルコンテンツの市場動向を解説した。

 最近では、デジタルコンテンツ市場の新サービスとして定額読み放題サービスが登場し、市場を牽引している。

「特に映像分野の伸びが大きく、NetflixとHuluが人気です。Netflixは2015年には7000億円近い売上がありました」(北川氏)

 音楽分野も定額聞き放題のストリーミングサービスが伸びている。なかでも人気が高いのは、SpotifyとApple Musicだ。

「2011年からサービスを開始したSpotifyの売上が先行していますが、Appleも聞き放題を昨年から開始しました。AppleはiTuneで1曲ごとに販売していましたが、自らビジネスモデルを壊す動きに出ました」(北川氏)

 では、電子書籍はどうだろうか。北川氏は、同社の資料をベースに紹介した。同社の月ごとの単品販売と読み放題サービスの売上の比率をみると、読み放題のサービスの売上比率が多い月では50%近くまでが伸びている。同氏は「読み放題は利益率が低いので、あまり伸びないと予想していたが、かなり伸びている。書籍の世界でも読み放題が一定の割合で受け入れられている。電子書籍は、所有から利用へと流れが変わってきたようだ」と語る。

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電子書籍における月ごとの単品販売と読み放題サービスの売上の比率
(インプレスの資料より)


 さらに同氏は、雑誌についても触れた。2008年から8年間で日米の紙雑誌の販売額がどんどん減っている。「米国では22%、日本では37%も紙雑誌の販売額が減りました。この先どうなるのか、怖くて話ができないぐらいです。雑誌はプラットッフォームなので、なくてはならないものです。何とかしなくてはなりません」と危機感を募らせる。

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日米の紙と電子の雑誌販売額の推移。この8年間で紙雑誌は減退。米国では22%、日本では37%も紙雑誌が減った。

 雑誌の収入源である広告にも影響が出ている。国内では2014年にモバイル広告が雑誌広告を抜いた。日米比較すると圧倒的なスケールの違いがあることが分かる。2015年で米国は1兆数千億円以上の広告があり、日本は数千億程度だ。

「米国も雑誌の広告収入は落ちていますが、まだ十分やっていける状況です。海外の電子雑誌は、広告売上がメインの収入源になっています。しかし日本は構造が異なっているので、広告売上も厳しい状況です」(北川氏)

KADOKAWA、新潮社、スマートニュースの「電子書籍ビジネス」

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ブックウォーカー
代表取締役社長/
KADOKAWA
執行役員
メディアインキュベーション局長
安本洋一氏
 続いて、各パネリストが自社の電子出版事業について解説した。最初に登壇したのは、ブックウォーカー 代表取締役社長、およびKADOKAWA 執行役員 メディアインキュベーション局長の安本洋一氏だ。ブックウォーカーは、直営の電子書籍ストア「BOOK☆WALKER」、KADOKAWAグループのコンテンツを国内電子書籍サービス事業会社へ卸す外販、NTTドコモから受託した定額制電子雑誌サービス「dマガジン」を三本柱の事業としている。

 BOOK☆WALKERは現在、785社、31万5000以上の作品を配信中で、アプリ累計ダウンロード数は155万、月額平均購入額は6,000円前後だ。

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BOOK☆WALKERの売り上げ推移。直近2年で約1.5倍の伸びを示している。特にラノベが強いのが特徴だ。

「電子出版市場の8割以上がコミックですが、我々はライトノベルが強いのが特徴です。英語版と台湾版もスタートしました。直近2年間の売上は約1.5倍の伸びを示しました。一方、読み放題のdマガジンは、会員数が300万人を超え、システム開発から保守・運用、出版取次までを担当しています」(安本氏)

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新潮社 開発部 部長 柴田静也氏
 新潮社 開発部 部長の柴田静也氏は、電子書籍や電子コンテンツの事業を担当し、創刊20周年を迎える女子中学生向けの『nicola』や、小学生向けの『ニコプチ』といったファッション誌のほか、働くアラサー向けアプリ「ROLA」、出張講座を提供する「新潮講座」、有料国際情報・ニュースサイト「Foresight」を提供中だ。

「これらに加えて、定額課金の音声配信サービス『LisBo』(リスボ)を10月からスタートさせます。作家や学者などの貴重な講演会の模様を配信するものです。岩波書店やPHPと共同で、遠藤周作、開高健、井上靖など、錚々たる音声コンテンツを配信する予定です」(柴田氏)

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新潮社が提供する電子コンテンツ群。女子中学生、小学生向け、アラサー向けなどのほか、音声配信サービスも開始する。

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スマートニュース メディア事業開発 漆原正貴氏
 スマートニュースの漆原正貴氏は「スマートニュースの月間アクティブユーザ―が530万人を超えました。一人あたり月間で267分、1日あたり10分ほど利用くださっています」と発言し、いま注力する「マンガ」と「読書」のチャンネルについて紹介した。マンガチャンネルでは毎日更新の漫画や連載漫画を、読書チャンネルでも小説の連載を配信中だ。

「読書チャンネルは、ユニークユーザーが5万ほどですが、購読ユーザーの約15%が毎日アクセスしています。経済や恋愛などの連載小説も考えています。書籍として売れる作品と電子配信の人気作品は、まったく異なるラインキングになっています」(漆原氏)

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ニュースキュレーションアプリのスマートニュースは、ニュースのほかに、「マンガ」(左)と「読書」(右)のチャンネルにも注力。

【次ページ】「電子化」が可能にする「次世代電子出版ビジネス」
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