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すべてのビジネスがデジタルになる──アクセンチュアが自社の「Technology Vision」でそう唱えたのが2013年。それから毎年発行していた同ビジョンだが、2016年の主テーマは「People First:主役は“ひと”」となった。なぜテクノロジービジョンで主役が「ひと」なのか。アクセンチュア 執行役員 デジタル コンサルティング本部 統括本部長 立花良範氏が語った。
勝者になる企業は“人間に着目する企業”
アクセンチュアは25日、1月に米国で発表した「アクセンチュア テクノロジービジョン2016」に関する記者発表会を開催した。発表会に登壇したアクセンチュア 執行役員 デジタル コンサルティング本部 統括本部長 立花良範氏は、「勝者になる企業は“人間に着目する企業”だ」と指摘。「テクノロジー」ビジョンで、「ひと」をテーマにした理由について、「AIやロボティクスが実行段階に入ってきたのを受けて、逆にそれを活用する“ひと”にフォーカスがあたる」と説明した。
調査では、全世界3100名超のエグゼクティブにヒアリングを実施。デジタルへの影響度については、2020年には世界経済の25%にデジタルが影響するとの結果が出たのに加えて、「あなたのビジネスへのデジタル化の影響は?」との質問に、「想像を超えて増加」が28%、「急速に増加」が58%となり、合わせて86%が急激な変化にさらされていると感じていることがわかった。「急激な変化が常態になりつつある」(立花氏)。
本レポートでは、メインテーマが「主役は人(People First)」だったが、同原則にしたがって次の5つのトレンドを定義した。
- インテリジェント・オートメーション(Intelligent Automation)
- 流体化する労働力(Liquid Workforce)
- プラットフォーム・エコノミー(Platform Economy)
- 破壊を予期する(Predictable Disruption)
- デジタル時代の信頼(Digital Trust)
(1)インテリジェント・オートメーション
AIやロボットの可能性が拡大しており、たとえば85%の企業がビジネスプロセスの改善に「自動化」を採用しているとの結果が出たという。
では、ロボットが人間の仕事を奪うのかというと、「人にとって高負荷の仕事は置き換えられていく。逆に高付加価値の仕事は人間が引き続き担う」と指摘。人間と機械が協働していくこと、シナジーをどう出していくのかが今後の重要なテーマだと説明した。
人工知能は現在、記憶域から運動指示など、より上位の概念を獲得してきており、現状では視覚認識や言語認識などが行えるようになったという。
「現時点ではAIに限界があるのは事実で、できることとできないことを見極める必要がある」
たとえば、インダストリー4.0の中心企業の1社、シーメンスによる「インテリジェント・ファクトリー」では、1150人の従業員のメイン業務はコンピューターによる製造工程のモニタリングになったと説明。
塩野義製薬の臨床試験では、解析設計書の読み書き、プログラミングを機械に任せようとしているという。立花氏は「AIを新たな働き手としてとらえ、日本の強みや強化すべき領域での活用を進めるべきではないか」と提言した。
(2)流体化する労働力
流体化する労働力におけるテーマは大きく4つ。中でも米国では43%が2020年までにフリーランスになることが予想されるという。日本でも2016年時点で非正規雇用にあり、「長期にわたって“変わらない構造”はなくなった。変化を是とすることが必要。企業側も従業員に対して、変わりゆくビジネスにリスキルすること、トレーニングすることが重要になる」(立花氏)。
さらに2025年にはミレニアル世代(デジタルネイティブ)がグローバルで75%を占めるようになり、「彼らの能力を引き出すことが必要になる」(立花氏)と説明。「スタティックな組織ではなく、プロジェクト型の仕事が一般企業にも広がっていくのではないか」とした。
ここで、立花氏が引き合いに出したのが、「ハリウッド型の仕事の進め方」だ。ハリウッドでは400人~500人のクルーが集まって、映画を1本撮影する。これを一般の企業でもこうした仕組みが必要になるだろうと説明した。
【次ページ】今後、500以上の業界プラットフォームが構築される
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