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- 2016/04/22 掲載
人口5万人の富山県氷見市が、世界的なイベントTEDxの開催に成功したワケ
運命に導かれて、TEDxHimiが開催
そもそもTEDとは、Technology、Entertainment、Designの頭文字を取ったもので、これらの分野で有用なアイデアを世界に広めようと始まったイベントだ。TEDは「Ideas worth spreading(広める価値のあるアイデア)」を精神とし、TEDの活動の中心的イベントであるTED Conferenceは毎年、カナダのバンクーバーで開催される。TEDの精神を受け継ぎ、ライセンス供与を受けて世界各地で開催されるのが、TEDxだ。
TEDxHimiが開催された1月24日、富山県は40年に1度とも言われる寒波に見舞われた。積雪に慣れているはずの氷見周辺でも交通網が乱れるほどの悪天候となったが、それとは対照的に会場内は熱気に包まれていた。オープニングを飾ったのは、氷見市の上田(うわだ)獅子舞保存会による獅子舞演舞。氷見市では地区ごとに獅子舞が伝えられ、それぞれの特色が守り継がれている。
その後会場では、お昼の休憩を挟んで12人のスピーカーがそれぞれのアイデアを語った。各スピーカーの専門分野は多岐にわたり、国内だけではなく海外からも多くのスピーカーが招かれていた。
田中 栄一氏(教え方研究家)
小澤 いぶき氏(児童精神科医)
緑川 賢司氏(全日本製造業コマ大戦協会 会長)
アラン・ウエスト氏(日本画家・屏風絵師)
ザック・エブラヒム氏(平和活動家)
土御門 乾越氏(古神道宗家)
小原 好喬氏(城端蒔絵 塗師屋治五右衛門 16代目)
ミケレ・シモナート氏(起業家・エンジェル投資家)
土岐山 協子氏(愛情料理研究家)
中沢 実氏(金沢工業大学教授)
サイモン・ワーン氏(和歌山大学観光学部特任教授 映像ジャーナリスト)
田口 一成氏(社会起業家)
集まったスピーカーの中でも注目を浴びたのが、ザック・エブラヒム氏だ。実の父親がテロリストという環境で育ったが、テロという主張方法に疑問を抱き、平和活動に傾倒した。「テロリストの息子」という著書も出版している。エブラヒム氏はTEDxHimiの後も日本国内を巡り、学校で平和の尊さについて語ったり多くのメディアのインタビューに応えたりするなど、来日のきっかけを最大限に活かして活動した。
「エブラヒム氏の今回の来日には運命的なものを感じます。実は2014年にバンクーバー国際空港のカフェで偶然隣に座っていたのがエブラヒム氏だったんです。そこで仲良くなって、『もし僕がTEDxをやったら来てくれる?』って聞いたら『もちろん!』と。それがようやく実現したんです。しかもその直前にエブラヒム氏の著作の日本語版が出版されるなんて、仕組まれたようなタイミングだと思いました」(TEDxHimiファウンダー川向氏)
TEDxのプラットフォームに地方色をどう取り入れていくか
「各地のTEDxをサポートしてきたことで、TEDの精神は理解しているつもりだったのですが、本場のTEDはやはり全然違いましたね。各地のTEDxは、みんなこれを目指してがんばっているのだということも実感できました。じゃあ、僕がやるならどこでどんな風にやればいいのだろうって考え始めたのです」(川向氏)
「TEDxとは何かがわかって手伝いに来てくれた人は2割くらいじゃないでしょうか。多くの人は、何かわからないけど川向がイベントをやるというから手伝ってやろうと。でも、わかりやすい説明をして理解を求めることは、あえて避けました。ハードルを下げず、わかる人だけがついてきてくれた方がいいものができると思ったからです」(川向氏)
他のTEDx同様、本場カナダのTEDの精神を引き継ぎつつ、ご当地のエッセンスを取り入れていくというスタンスは変わらない。どこまで氷見の“色”を入れることができるか、そのバランスは難しいかと思いきや、意外と楽観的だったようだ。TEDというプラットフォーム自体がグローバルでの標準になっている。そこにできる限り氷見の“色”を入れていったという。
「まずオープニングの獅子舞から、氷見らしさが出ています。どぶろく特区であることを活かして、自分たちで作った米で、来場者にふるまうどぶろくも作りました。地元の宮大工さんがTEDxHimiのロゴパネルを作ってくれたり、漆職人がそのパネルを塗ってくれたりして、十分に氷見の“色”が出せたと思います」(川向氏)
テーマにも氷見ならではの要素を取り入れ、「Passively Active」とした。受け身でありながら活動的であるという一見反するような単語を合わせたテーマは、寒ブリで有名な氷見の伝統漁法にも通じる考え方だ。氷見では定置網漁法で漁を行っているが、この漁法は一度網に入った魚の約8割が逃げてしまう漁法なのだ。
「定置網は水産資源を大切にしながら必要な分だけを獲る、自然と共生可能な漁法です。網を設置しておいて入ってきた魚だけを獲るという、受け身でありながら自然の恵みをいただく姿勢を著したかったんです」(川向氏)
【次ページ】グローバルのイベントから生まれるローカルなつながり
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