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- 2016/04/14 掲載
サ高住、「待機老人」50万人で3倍の急成長でも迎える正念場
サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)とは何か
サ高住は、厚生労働省と国土交通省の肝いりで制定された「高齢者住まい法(正式名称:高齢者の居住の安定確保に関する法律)」に基づき、2011年10月に始まった比較的新しい高齢者住宅制度である。
高齢者の夫婦2人世帯、単身世帯を対象とした住まいで、入居資格は原則60歳以上だが、介護保険のサービスを受けていなくても利用できる。デイサービスセンターなど施設内や提携先の医療や介護のサービスが受けられるところが多い。住宅は老人ホームのようにバリアフリー構造だが、老人ホームよりも居住面積が広く住宅設備も充実しており、プライバシーも保たれる。
サ高住の開設、運営は、社会福祉法人や医療法人やNPO法人だけでなく、株式会社など営利法人でもできる。建物を新築したり購入後に改修したりして地方自治体に登録するが、認可制ではない。その条件は、建物は各戸の専用部分の床面積が25平方メートル以上で、台所、水洗便所、収納設備、洗面設備、浴室を備え、バリアフリー構造であること。必要なサービスはケアの専門家による安否確認、生活相談が受けられること。契約はアパートやマンションのような賃貸借と、有料老人ホームのような利用権の二通りがある。
表面的には今後4年で3倍の急成長が見込める市場
高齢者の住まいには、大まかに分けると「特別養護老人ホーム(特養)」「養護老人ホーム」「軽費老人ホーム」「有料老人ホーム」「サ高住」「認知症高齢者グループホーム」の6種類がある。そのうち株式会社など営利法人でも設立できるのは有料老人ホーム、サ高住、認知症高齢者グループホームだが、老人福祉法で細かい規制がかかる他の2種類と違い、サ高住には建設も運営も、高齢者住まい法による規制が比較的少ない。国も絶対数が足りない特養や有料老人ホームに代わる高齢者の住まいとして期待しており、厚生労働省では「2020年までに全国60万戸」という目標を掲げている。
国は「補助金」「優遇税制」「制度融資」という「政策推進三点セット」を駆使し、サ高住の建設を強力にプッシュしている。
補助金は、「スマートウェルネス住宅等推進事業」で2014年度には340億円を予算計上し、事業主体が社会福祉法人でも民間企業でも、新設のサ高住(登録住宅)の新築は建設費の10分の1、既存建物の改修は3分の1を補助する。上限は1戸につき100万円。
優遇税制は、サ高住の事業主体は5年間、その建物の減価償却費の割増償却を受けて法人税や所得税を節税でき、固定資産税も5年間、その3分の2を軽減され、土地・建物の不動産取得税も減税措置を受けられる。
制度融資は住宅金融支援機構(旧・住宅金融公庫)が「サービス付き高齢者向け賃貸住宅融資」制度を設け、サ高住の新築、建物改修、購入のための資金を低利で融資している。
これ以外に地方自治体で独自の建設促進策をとっているところがある。なお、「一億総活躍」「介護離職ゼロ」を目指す安倍内閣は2015年度の補正予算でサービス付き高齢者向け住宅整備事業の拡充を図り、補助金の募集枠が増やされている。
そんな国の政策の後押しもあり、サ高住の施設数、総戸数は、制度が発足した2011年からうなぎのぼり。2016年2月現在で全国で約6000施設、約19万6000戸である。
表面的には、厚生労働省の2020年の目標60万戸まであと41万戸の「成長余地」があり、4年で現状の約3倍になるという前途洋々な「急成長市場」である。その裏付けになる高齢者人口もこれから増え続ける。
厚生労働省の試算では、2015年に1221万世帯だった65歳以上の夫婦のみ世帯、単独世帯の合計は、20年後の2035年には1387万世帯に増え、全世帯に占める割合は23.1%から28.0%にアップする見通し。サ高住の需要基盤はこの先も堅実に伸びていく計算だ。
「サ高住」への参入相次ぐ。電機大手も私鉄も保険会社も
2011年の制度発足当初から、ニチイ学館、メッセージ、セントケアHDなど介護、福祉、医療関連のサービスを手がける企業に交じって、建設・住宅・不動産関連の企業が次々と参入した。その後は金融・保険、電機メーカー、鉄道、外食など、それ以外の業種の参入も増えて、業種は多彩になっている。
2013年7月の「有料老人ホーム・サービス付き高齢者向け住宅に関する実態調査研究」によると、開設主体の49.6%は株式会社、13.1%は有限会社で、営利法人が62.7%を占める。母体法人の業種は介護サービス、医療、社会福祉が73.8%を占めるが、11.9%が不動産・建設で、その他の業種も14.2%。最近の動きを見ると、異業種からの参入の勢いはまったく衰えを見せていない。
サ高住は全国で建設されており、現在のところ登録施設数が最も多いのは大阪府で、北海道がそれに次ぐが、今後、需要の伸びが最も大きいのは首都圏の1都3県だとみられている。パナソニックとパナホームが連携したパナソニックコムハートは関西エリアで13施設を運営しているが、2015年9月、首都圏進出第1号として「エイジフリーハウス川崎登戸」を開設した。
「東急ウェリナ旗の台」を2012年から運営する東京急行電鉄も、サ高住を取り入れたJR横浜線十日市場駅付近の再開発計画の共同事業予定者として、横浜市から選定されている。
警備大手のALSOK(綜合警備保障)も4月5日、サ高住「みんなの家」「ういず」を運営するウイズネット(さいたま市)の買収・子会社化を発表した。
保険大手の東京海上日動(東京海上日動ベターライフサービス)は、大和ハウス工業が建設する「ディーフェスタ溝の口」でサ高住運営に新規参入。外食が母体のワタミの介護も5月に「レヴィータ湘南台」で新規参入した。そのワタミの介護を12月に買収したのが保険業界で東京海上日動のライバル、損保ジャパンで、今年3月には介護大手のメッセージも連結子会社化している。サ高住ではSOMPOケアネクストの「ラヴィーレS」「レヴィータ」に、メッセージ(SOMPOケアメッセージに改称予定)の「Cアミーユ」が加わり、傘下3ブランドの大きな勢力になる。
【次ページ】「待機老人」約50万人は解決できるか
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