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  • 2016/02/29 掲載

富山県南砺市長とウーバー社長「高齢化、過疎化の世界先進地域でシェアリングを活用」

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富山県南砺市は2月26日、Uber(ウーバー)と協力してボランティア市民ドライバーによるシェアリング交通の実証実験に乗り出すと発表した。従来は住民同士の助け合いで成り立っていた過疎地域における交通を、Uberのシステムを使って効率化し、地域住民の負担を軽減していくことが目的だ。同日、南砺市で開催された記者発表会には南砺市の田中 幹夫市長とUber Japanの高橋 正巳社長が出席し、両者が南砺市の実証実験において協力していく協定を締結した。また、その後、Code for NantoやCode for Japanのメンバーが運営を支え、田中市長、高橋社長らに加えて、たからのやま代表の奥田 浩美氏や利賀民宿組合会長の中西 邦康氏が登壇した「ITを活用した幸せのおすそ分け」のシンポジウムが開催された。現地より、その模様をお届けする。
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シェアリング交通の実証実験に協力していく協定を締結した
南砺市の田中 幹夫市長(左)とUber Japanの高橋 正巳社長

少子高齢化、過疎化が進む地域住民の移動を、シェアリング交通で効率化

 先進国の中でも少子高齢化が進んでいる日本、その中でも富山県の高齢化率は高い。福野町や城端町、利賀村などが合併して2004年に生まれた南砺市はその中でも高齢化率が高く、全国平均より20年、富山県全体と比べても5年早いペースで高齢化が進んでいると言われている。

 広域合併で生まれた他の自治体と同様、8市町村が合併して誕生した南砺市にとって公共施設の重複は現在も残る課題。公共交通機関もそのひとつだ。民営化などで市の資産を半分にすることを目標として取り組んでいるが、前述のように高齢化、過疎化が進む地域を抱えていることからコミュニティバスなどの公共交通機関廃止は難しい。

 この課題を解決するためのキーワードがシェアリング交通、そのパートナーとして南砺市が選んだのがUber社だった。

 Uber社が自治体と協定を締結するのは初めての試み。しかも無償で活動するボランティアドライバーを支える仕組みを提供するため、システム利用料の徴収もない社会貢献活動として取り組むことになる。

少子高齢化、過疎化が進む地域住民の移動を、シェアリング交通で効率化

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南砺市長
田中 幹夫氏
 世界遺産である五箇山の一角、利賀地域は南砺市の中でも過疎化が進んでいる地域だ。コミュニティバスが唯一の公共交通機関であり、地域には民営のタクシー会社もない。高齢者が多く、雪に閉ざされる冬の間はバス停までの移動も大変だ。

「利賀地域の住民にとって唯一の公共交通機関はコミュニティバスだが、効率的に利用されていないというのが現状。ごく少数の客を乗せたバスを運行させ続ける非効率な現状を変えるため、代替交通手段を確保しなければならない」(南砺市長 田中 幹夫氏)

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 この課題を解決するためのキーとして田中市長が挙げたのが、シェアリング交通の活用だ。買い物や病院に行く用事がある人を、手が空いている近隣住民が車で送り迎えする。既に行われていることだが、これをIT化することで頼む側、頼まれる側の負担を軽減できるのではないかと考えた。

 そのパートナーとして白羽の矢が立ったのが、移動したい人とドライバーのマッチングサービスを世界で展開するUber社という訳だ。タクシー会社のない利賀地域ではボランティアドライバーを、それ以外の南砺市内では既存タクシー会社の車輌とをマッチングさせることで、市内全域に移動しやすい環境を整備したい考えだ。

 田中市長とUberとの出会いは、2014年9月に同市で開催された「公共交通ハッカソンin世界遺産五箇山」でのこと。地域課題をITの力で解決するCode for Nantoが主催したもので、Uber Japan 執行役員社長である高橋 正巳氏も参加していた。

 その後、大勢の学生ボランティアが参加する利賀そば祭りで、ボランティアドライバーと学生とのマッチングにUberを実験的に利用、その効果と使いやすさを確認したうえで今回の協定締結へと歩みを進めてきた。

【次ページ】市民によるワークショップを受けてパネルディスカッション
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