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- 2015/06/08 掲載
富山市長 森雅志氏が解説、なぜ路面電車の整備で市民の寿命が伸びるのか
地方都市や町村部で深刻な行政コストの増大
中でも心配なのが高齢者の医療費や介護、福祉費用の増加だ。
社会の高齢化とともに平均寿命も延びているが、介護を必要としない「健康寿命」が同じように延びているわけではない。亡くなるまで寝たきりにならずに働いてくれる高齢者が増えれば、40歳以上の市民が払う介護保険料の上昇や市の高齢者対策予算の増加を抑えられる。
だが、富山県の持ち家率は全国1位で、1世帯当たりの自動車保有台数も全国2位。郊外に住んでどこへ行くにも車を使う県民の暮らしぶりが現れている。つまりそれほど歩かず、運動不足が心配な県民性なのだ。森市長は「あまり外へ出ず、引きこもりがちになって体を壊す高齢者が多い。もっとお出かけして歩いてくれたら、長く健康を維持できるのではないか」と考えた。
この10年で市民の平均体重は増えたが、エネルギー摂取量は変わらない。運動量や歩行数が減って体重が増加したわけだ。スポーツジムで1年間運動を続けられる人は全体の2割しかいないが、街をもっと歩けば運動量をカバーできる。「今までは歩きたくても歩ける街ではなかった。楽しくて気がついたら歩いている街にしたい」。これが森市長のたどり着いた結論だった。
なぜコンパクトシティ構想に至ったのか
そこで富山市は、高齢者が気軽に出かけられるよう中心市街地の魅力アップに取り組む。そのために目をつけたアイデアが「コンパクトシティ」だ。これは都市の郊外への拡大を抑えて中心部にさまざまな施設を集中させることで、市街地のスケールを小さく保ったまま暮らしやすくしようというもの。その一環として市は中心市街地の再開発で建設された複合商業施設に隣接して全天候型の野外広場・グランドプラザを設けた。さらに市民の移動手段としてJR西日本から富山港線を引き継ぎ、路面電車の富山ライトレール(LRT)として運行を始める。「多少強引でも、公共投資で中心部に足を運びやすくしたかった」と森市長は語る。
もちろん高齢者対策だけではない。中心部ににぎわいを取り戻し、市の活性化を図る狙いも込められている。富山市は郊外への人口流出が目立ち、県庁所在地としては人口密度が全国最低。これ以上分散が進めば、中心部の地価が低迷し、投資を呼び込めなくなると心配されていたからだ。買い物客の多くが隣県の金沢市に流れていることも、森市長の頭にあった。
【次ページ】増え続ける高齢者の外出で医療費の削減を
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