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- 2015/02/02 掲載
マルチファセット・マーケティングとは何か?レッドブルも行うマーケティング新潮流
中央大ビジネススクール 田中洋教授が解説
「ブランド」もかつては流行り言葉だった
しかし、田中教授は流行り言葉であっても重要な意味があると指摘する。たとえば、「クロスメディア」という言葉は2005年ぐらいに言われるようになって、今年でちょうど10年経った。
「10年前の言葉というと非常に古い印象を受けるが、こういう概念は時間が経つと本当に実現することがある。たとえば、妖怪ウォッチを手がけたレベルファイブは、クロスメディアで成功したとコメントしているのを聞いて驚いた」
田中教授は20年来にわたってブランド研究を手がけ、11月には『ブランド戦略全書』を上梓した。すると知り合いから、「ブランドって今さら何かやることがあるのか?」とたずねられたそうだ。しかし、実はこうした疑問は、田中教授がブランドの研究を開始し始めたころから言われてきたことだった。90年代頃は、「今ブランドって流行っていますが、次に流行るのは何ですか?」と聞かれ続けてきたという。
ビッグデータの登場でマーケティングの地位が上がった
「私の見解では、マーケット(=顧客)をベースとして考えるものがマーケティング。これを言うと当たり前と言われるが、実は当たり前ではない。本当にマーケットを決めて出発しているのか? マーケットを定めて出発しているのか?ということ」
コトラーの考えたマーケティングでは、ターゲットを均質化してとらえていた。たとえば、30代の男性という市場もあるし、プロレスの好きな男性という市場もある。ある種の均質な市場がそこにあるという考え方だ。
歴史を振り返ると、1980年代は、マーケットセグメンテーションやポジショニングといった言葉を生み出してきた一方、コロンビア大学のビガダイク教授によれば、マーケティングが経営にあまり貢献できていなかった時代だった。
しかし、マーケティングの重要性が少しずつ認められるようになると風向きは変わる。HPの共同創業者であるデビッド・パッカード氏は、「マーケティングの重要性を考えると、とてもマーケティング担当者に任せておくわけにはいかない」とコメントするまでになった。
さらに時は流れ、IBMの調査によれば、CMO(最高マーケティング責任者)の役割は、コスト管理から戦略的ビジネスアドバイザーに変化し、CEOの63%は、CMOはCFOの次にビジネス全体の戦略形成にかかわるべき立場だと考えていることが明らかになった。従来はCIOが予算を握っていたが、今はCMOが予算を握っているとの考えだ。
このように、90年代~2000年代はマーケティングの役割が低下した一方で、2010年代からはマーケティングがまた改めて見直されることになった。その原動力となったのがITだ。「ビッグデータが登場したおかげで、企業におけるマーケティングのポジションが上がってきた。マーケティングは企業の中でより期待されるようになった」(田中教授)
さらに、従来はマーケティングサイエンティストなどの専門家が必要と思われていたが、ITツールが発達してきたことで、誰でもビッグデータを操ることができるようになってきていることもこうした流れを後押ししている。
この「ビッグデータ」というキーワードの定義もいろいろあるが、田中教授がもっとも大事だと指摘するのは、「構造や発生場所が異なるデータを網羅的に扱う」ことだという。
従来はアンケートやPOSデータなど、1箇所で出てきたデータを扱うに過ぎなかったが、現在は違ったところから出てきたさまざまなデータを集計できるようになった。たとえば、コンビニのチキンの売り上げのデータと、チキンに関するツイートのデータ、これを結びつけると何かできるといった具合だ。
とはいえ、田中教授「ビッグデータはビッグヒットを生み出すものではない」とも注意を促す。あくまでも今のマーケティング活動の改善とか効果アップに役立つものという。
【次ページ】マーケティング・オートメーションとは「アマゾンのように売ること」
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