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鉄道は乗客を安全に運ぶという点で信号や列車の制御システムに非常に高い品質が求められる一方、ダイヤなど旅客情報については大量の情報を処理して乗客に提供しなければならないという複雑なシステムで構築されています。そして現在そのシステムの多くがIT化されています。鉄道の安全性や正確性、そして快適性などをITがいかに支えてきたのか。9月11日に東洋大学で開催された「ソフトウェア品質シンポジウム 2014」では、JR東日本のIT化や品質向上の取り組みについて東日本旅客鉄道株式会社 松本雅行氏のセッション「鉄道信号システムへのアシュアランス技術の適用」が行われました。本記事ではその内容をダイジェストで紹介します。
本記事は前編、中編、後編の3つに分かれています。この記事は中編です。
鉄道システムの革新
信号によって輸送業務を司っていますが、輸送業務には大きく分けて5つに分類できます。
1つは「輸送計画」。どんな列車をどこに走らせるか。言ってみれば列車ダイヤを最初に作る作業です。それを輸送計画業務といいます。それから作ったダイヤに基づいて列車を実際に運転する。それを「輸送管理」と言います。従いまして、列車が何かの故障で乱れたり遅れたり、そうしたときには、なるべく早く復旧、元に戻す、正しいダイヤの運転に戻す、そういうことをするのもこの輸送管理業務のなかに含まれているわけです。
「進路制御」というのは、先ほど転てつ器を制御してと言いましたが、その駅での、どの番線に列車を通すのか、それを司ります。「列車制御」は実際の列車をどのぐらいのスピードで運転するか、これは運転手が昔は自分でコントロールしていたわけですけど、それを信号に従って列車速度を決めて運転する。これを列車制御といいます。
「信号制御」は、信号機とか転てつ器をどう制御するのか。信号機を赤にするのか青にするのか。あるいは転てつ器で左を開通させるのか右側を開通させるのか。それを制御するのが信号制御です。
実はこれらは、最初は全部人手。人間がやってたんですね。昔、信号制御っていうのは、駅に必ずちょっとタワーみたいな高いところに人がいて、信号扱者っていうんですが、そこに大きなレバーがあって、そのレバーを扱って転てつ器だとか信号機を制御してました。そういう時代があったんです。運転も含めて人間がやってた。これを装置あるいはコンピュータで扱うように革新してきたということをこれからお話していきたいと思います。
まず列車ダイヤですが、「輸送総合システム」とわれわれは名前をつけていますが、コンピュータでダイヤを、自動的にとはいいませんが、人間が色んな条件をいれてあげて、計算やなんかは全部コンピュータが行います。
ダイヤを作るというのは意外と大変でして。何が大変かといいますと、鉄道は線路が何々線、何々線といっぱいあるんですね。それが独立してあればそう大したことないんですけど、ある駅で交差する、あるいはそこで終点の駅である、そうしますと、乗り継ぎの待ち時間があるときは30分だったり、あるときは2時間待ったりというようなダイヤでは、お客様が非常に不便なんですね。そうすると、その乗り継ぎのところの接続を、10分だったら10分ぐらいにするという調整をやるのが非常に大変なわけです。
単線も、列車走らせる分には大体もう、距離と停車駅が決まればそれで半分自動的に決まるんですけど、そこの乗り継ぎのところの接続をどうするか、これが大変で。
昔は管理局っていうのがあったんです。各県ほどではないんですけど、何ヶ所かあって。乗り継ぎを調整する会議を毎年というかダイヤ改正の度にやってたんです。ダイヤ改正の2年ほど前にやって。その会議っていうのは、各局のダイヤを作成する担当者が全員集まって、しかも国鉄時代ですから、全国から何百人という人が集まります。
今ですと、コンベンションセンターのような大きな会議施設もありますが、当時はそういうのがないので、だいたい温泉地のでっかい旅館で分宿してやるわけですね。当時は、これを称して温泉会議と呼んで、1ヶ月くらい泊まり込んで調整するわけです。そういう大変な作業だったんですが、この輸送総合システムを使えば、もちろん人間がこっちを優先にしようとか、そういう条件は入れてやらないといけないんですが、あとは自動的にやってくれると。かなり、楽になりました。これを1992年から使い始めたんです。
また、先ほどの輸送管理と進路制御。これはどういうふうにしたかといいますと、これは先ほど言いましたように、転てつ器とかなんかは駅で扱ってたということで、このマルが1つの駅なんです。ちょっと小さいですけど、先ほど言ったレバーが駅にあって、それを使って転てつ器の向きを、各駅で制御する。そうしますと、人がいっぱい必要なわけです。
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