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現在の企業にとって、IT活用は経営戦略に組み込まれるべき重要な取り組み課題となっている。一方で日本企業の現状を振り返ってみれば、開発や運用もベンダーに丸投げで、主体的なIT活用を行っているところは多くはないようだ。こうしたユーザー企業の実状に危機感を抱き、2011年2月に前身となるシステムイニシアティブ研究会を立ち上げ、2013年5月に設立されたのが、特定非営利活動法人システムイニシアティブ協会(SIA)だ。その立ち上げの経緯と活動内容について、元大成建設の情報企画部長で、同協会 理事長の木内里美氏に話を聞いた。
IT活用におけるユーザー企業の主体性の無さに危機感
──システムイニシアティブ協会設立の経緯について、お聞かせください。
元々私は大成建設の土木事業部門で建設エンジニアとしてプロジェクトマネジメントなどに従事していましたが、その後、IT部門に移り、
情報企画部長として全社の情報システム再構築プロジェクトなどを担当しました。
2008年からの4年間は、道路工事の計画から施工までを行う大成ロテックの常勤監査役を務め、2012年には経営改革/IT企画のコンサルティング会社であるオランという会社を立ち上げました。
こうしたキャリアの過程で、ユーザー企業の現状に危機感を抱き、まず2011年2月に設立したのが任意団体のシステムイニシアティブ研究会です。約1年後には320社の登録会員が集まり、2013年5月に活動を拡大するために現在の特定非営利活動法人システムイニシアティブ協会が発足しました。
──ユーザー企業の現状に対する危機感とは、具体的にどんなものだったのでしょうか。
端的に言うなら、IT活用におけるユーザー企業の主体性の無さです。ITベンダーへの丸投げ体質と言ってもいいでしょう。その根源にあるのは、経営者のIT分野、あるいはIT部門に対するあまりの意識の低さです。中には理解のある経営者もいるのですが、経営層のITに対する意識の平均値は極めて低い。当然、IT部門のステイタスもいまだに低いのです。
私は社内の仕事のやり方やシステム部門のポジショニングなど、色々なものを改革していきましたが、こうした現状は他の日本企業も同じで、これを変えていかなければ、情報サービス産業を含めて日本全体の発展もままならないと思ったのです。
そこで私と同じ問題意識を持たれていた片貝システム研究所代表で、当協会現副理事長の片貝孝夫氏や、ユニバーサル・シェル・プログラミング研究所代表で同理事の當仲寛哲氏の協力も得て、システムイニシアティブ協会を設立するに至りました。
協会の目的として掲げたのは、企業や業種の枠を超えた情報交流を支援すること、IT活用において主体性を発揮できる人材の育成を啓発することと支援することです。これらが達成できれば、企業システムのユーザー自身が、「主体的にITを利活用する態勢(=システムイニシアティブ)」を確立することが可能となります。
──システムイニシアティブ協会の具体的な活動内容としては、どのようなものがあるのでしょうか。
メインとなるのは、定例で開催している研究会です。これは2011年4月から、つまり任意団体の時代から毎月1回のペースで実施しているもので、外部からロールモデルとなる講師を招いてユーザー企業におけるシステムイニシアティブの実践事例を話していただき、参加者同士でディスカッションを行うものです。またシステムイニシアティブに関する特定のテーマについて、深堀りして議論や研究を行う分科会も開いています。
この他、システムイニシアティブやITに関する調査と評価指標の研究、研究会の報告書などの刊行も予定し、人材交流を促進するカンファレンスの開催なども行っています。
ITに限らず「企業内イノベータ」育成の活動も開始
システムイニシアティブ協会の活動とは直接的な関係はありませんが、同じ人材育成を目的として、2014年7月には“
InnovationCafe”という活動も開始しました。これは企業内イノベータを育成するための異業種コミュニティで、7月17日に虎ノ門ヒルズで開催したInnovationCafe vol.0には約150名が集まり、ウイングアーク1stがスポンサーとして付いてくれました。
今後、超高齢化社会を迎え、労働生産人口が激減していけば、日本は確実に社会構造が崩れていきます。その状況を救うためには、今の30~40代の人が各企業の中でイノベーションを起こして世界に向かって活動してもらわなければいけない。
そうしたイノベーションを起こすポテンシャルのある人たち、つまりちょっと尖った人、異能な人、異才な人に頑張ってもらいたい。しかしそういう“異端児”は、同質を尊び、輪を重んじる日本社会や日本企業の中では往々にして重用されなかったり、報われないことも多いのです。そこでそういう人たちのコミュニティを作ろうということで始めた取り組みです。
これからも5か月に1回のペースで大きな交流の場を設け、その間に適宜ミニカフェを挟んでいこうと思っています。たとえば大きな会で業務改革系をテーマにした後は、少人数でワークショップ型のミニカフェを実施し、深堀りしていくといったやり方ですね。ミニカフェは1回だけとは限りません。ちなみにイノベーションを起こす対象として捉えているのは、業務改革、事業開発、製品・技術開発の3つの領域です。
こうした活動を通じて日本のイノベーション力を高め、産業を復興し、国力を増すことに少しでもお役に立てればと考えています。私はこのInnovationCafeにもまた、非常に強い思い入れがあります。
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