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教育、生活、シニア/介護、語学/グローバル人材教育という4つの事業領域を展開するベネッセコーポレーション。この中の教育分野に含まれるのが、0~6歳児向けの教材や学習コースを提供し、今年25周年を迎えた「こどもちゃれんじ」だ。同社では、こどもちゃれんじへの入会者数を増やすことを目的にO2O(オンライン・ツー・オフライン)の施策を実施。入会率の向上につなげるとともに、提供するコンテンツの満足度96%という非常に高い数字を獲得することができた。Oracle Days Tokyo 2013で登壇したベネッセコーポレーションの香山貴秀氏は「これは実際の教材でもなかなかはじき出せない数字」と取り組みを評価した。
背景にあったのはダイレクトメール開封率の低下
ベネッセではダイレクトメール(DM)を主体としたプロモーション活動を行っている。具体的には産婦人科や動物園などでビラを配布し、インセンティブを提供することで見込み客の住所や名前などの個人情報を収集、セグメント化を図った上で集めた宛先に対してDMを送付するというものだ。
「このモデルには、DMの開封率が低下しているという大きな課題があった。確かに今の人たちはプッシュ型で送られてきた情報は見ないとか、欲しい情報は自分で調べるなど色々な理由は考えられる。しかし、一番の原因として私が認識していたのは、ビラを配布した“場”からDMを送る段階までの間に“一連の文脈”がないということ」
この課題を解決するためにベネッセが採った施策の1つが、生後6か月までの子供を持つ両親に向けた情報提供サイト「
はぴらべ(Happy Life with Baby) 」を絡めたO2Oの施策だ。
「オフライン(=場)とオフライン(=DM)の間を、オンライン(=メールマガジン)で繋ぐという観点で作った施策で、こどもちゃれんじへの入会者数を増やすことを目的とした」という。
実はこの施策、2年前から実施していたが、当初は香山氏のいう“一連の文脈”を作ることができていなかった。
従来は、産科に来ている母親などにビラを配り、アンケートに記入してもらったら、切手もしくは絵本にお子さまの名前を入れてプレゼントする、ということをやっていた。そしてアンケートで集めたリストに対して後日、0~1歳向けコースの“こどもちゃれんじbaby”のブランド名でDMを送っていた。
しかし、産科でのアンケートは、妊娠期にある女性に向けた“たまひよ”というブラント名で取得していた。そのため、DMを受け取った人にしてみれば、あれ、何でこんなところからDMが届くの?という話になっていたという。
「そこでビラを配布した“場”での接点から、DMを開封してもらい、こどもちゃれんじbabyに入会してもらうという我々にとってのクロージングに繋げるまでの一貫した流れを作った。つまり、“ベネッセはこどもちゃれんじbabyという良い教材を作っている”と感じてもらえるような一連の文脈を作り上げたかった」
見込み客が意思決定を行うタイミングから逆算して設計
方針を固めた香山氏が行ったのが、産科で配布するビラの紙面に、生後6か月までの子供を持つ両親向けの情報提供サイト「はぴらべ」の案内を載せること。子供の産後の週数に合わせた子育て情報をサイトから切り出してメールマガジンで毎週配信するというもので、“よろしければケータイやスマートフォン、PCからメールアドレスをご登録ください”という告知を追加した。
「以前のようにプレゼントを差し上げますという話をした後に、いきなりこどもちゃれんじbabyのDMを送るのではなく、その前に、その人に役立つ情報を配信することをメインに考えた」
ここで少し整理しておくと、はぴらべのメールマガジンは生後6か月までの子供を持つ両親に向けた情報提供を目的としたもの、一方、入会者数を増やす目的のこどもちゃれんじは0~6歳児を対象としたもの、そしてプレゼント実施後にDMを送ったこどもちゃれんじbabyは、さらにその中の0~1歳向けたコースだ。
「最初にはぴらべのメルマガが毎週届き、お子さまが6か月を過ぎた頃にはこどもちゃれんじbabyのDMが届くことになる。しかし以前と決定的に異なるのは、メルマガを送る中で、“実はベネッセには生後6か月から始められるこどもちゃれんじbabyというサービスがあるんですよ”という内容を自然な形で盛り込み、郵送で届くDMも違和感なく受け取っていただけるような流れを作った」
まさに産科というオフラインの場での接点と、家でDMを読むというオフライン上の行動を、メールマガジンというオンラインで繋ぐことで一連の文脈を作り、最終的な入会率のアップを狙った施策だといえる。
「逆にいえば、お客さまが意思決定を行うタイミングから逆算してコミュニケーションを始めるという戦略。お客さまに振り向いていただけるように、まずは企業として信頼してもらえるようなコミュニケーションを時間をかけて図り、その上で“今後はこんなサービスもありますが、いかがですか”という話ができる関係性を築いた」
【次ページ】オンラインとオフラインを組み合わせる必然性が求められる
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